異世界に転生後、主人公がモテるというジンクスをマジで信じたんだが
あわせっけん
1,現実世界そんな甘くないよね
「転生したい。異世界に」
俺は
俺も馬鹿ではない、理由もなく今の人生を投げ捨てようなどとは思っていない。
理由はちゃんとある……。
ガタン!
「おっと、すまん。ぶつかった」
その音と声で我に返った。
机に伏せていた重い頭をゆっくりと上げ、声の主を見上げた。
「なんだ、春道か」
「おう」
こいつは
こいつの憎むべき点は、モテることだ。
「すまん!拓人!お前を借りる!」
「は?意味がわからん!」
思いっきり手を引かれ、春道の前に立たされると……。
「うわ!キモヲタじゃん。まじかー」
「ないわー。帰ろ」
人のことを散々ディスった後、帰って行くギャルのを眺め、ふと湧き上がった感情を放たずにはいられなかった。
「今の日本経済はヲタクによって回ってるんだぞ!」
「あっそ、だからなんなの」
「よって我々はヲタクによって、生きているも同然なんだよ!」
「だからなんなの。きっも、冷めたわー。帰ろ」
全く聞く耳を持っていない。
まあ、結果は見えていたことだ。
「流石に落ち込むなぁ」
「はぁ、助かったよ。拓人」
「春道、俺は大いに傷ついたぞ」
「悪かったって、帰りファミレスで奢るから勘弁」
特に怒っていたわけではないので春道をすんなりと許すことにした。
「それにしてもひどい奴らだ。ヲタクに偏見を持ち過ぎだ」
「お前らだって、友達ヲタクだろうに、浅く広くをモットーに友達を作るのだろう。でもまあ、それも偏見か」
ぶつくさとギャルへの不満と独り言を垂れていると
「たーくーと!」
背後から俺を呼ぶのはきっと……
「おはよ!何ぶつくさ言ってたの?」
「出たな化け物め!」
「化け物とは誰のことだい?」
「貴様のことだ!
「だってさ、あずささん」
「お前だ!お・ま・え!」
「あ、私?」
「今この場で話しているのは俺とお前だけだ!」
そう、こいつは小鳥遊あずさだ。
そして、こいつも憎きギャルの仲間だが、こいつに罪はないのでこいつは不問にしている。
「あ、私これから用事あるんだった!」
「は?おい、ちょ、待てって」
「なにさ!まだなんかあるのー?」
「購買頼む」
「あー、わかったわかった。いつものでいい?とりあえず腕離してくんない?みんな見てるからさ」
慌てて引き止めたために腕を掴んだがそのままであった。
「お、おう。すまん。いつもので構わん」
「おっけーじゃあね」
俺はいつも昼飯を彼女に頼んでいる。
買うものはもちろんクリームパンだ。
一番安い上にクリーム多めと来たもんだ、これは買うしかないだろう。
次は現代文だっけ、やだな。
そして俺は遂に……。
遂に使ってしまった切り札の保健室を。
具合悪そうな顔をして保健室に行くと
「拓人じゃん。どしたの?」
「げっ、あずさだ」
「あずさですが何か?文句あるなら現代文真面目に受けてくれば?」
「俺は具合が悪いんだ」
「あらそう、じゃあ早く寝なよ」
「ああ、言われなくともそうする」
舌を出しながらこちらに顔を向けている。可愛くないやつだ。
前置きが長かった。
転生したい理由だったかそれはもちろんモテるからだ。
それだけで充分であろう。
「「異世界に転生した主人公はモテる!」」
こんなジンクスを細々と信じ続けている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます