54話 ダンジョン

 俺たちは準備を済ませて遺跡の前へとやってきていた、周辺の魔物はレベル5や6と非常に低いもので確かにこれであればDランクの依頼として出されても不思議では無さそうだ。

 遺跡とは言ってもトーチカのようなものであり、中を覗いてみると下へと続く階段があるのが確認できた。

 階段の下は暗く、目を凝らしてもその先がどうなっているかを視認する事は出来ないようだ、ソナーを試しに使用してみたものの下からの反応は何もなかった。


「階段の下、どうなってんのか見えねえなあ……」


「その為にこれを持ってきたんだろ? よっと」


 サラが松明に火をつけて階段の下へと投擲する、すると松明の灯りは階段を少し進んだ辺りでフッと消滅してしまった、どうやら完全に異空間となっていると見て良さそうだ。


「これは怖いですね、階段から様子を見るという事も難しそうですし」


「ま、とりあえずは進んでみるしかないだろうな、俺が先頭を行くよ」


「殿は私が行こうか?」


「ではエリスさん、私、サラさんの順番ですね」


「あぁ、行くぞ」


 俺は意を決して階段を降りる、階段をその途中で俺の意識が不意に途切れる。

 気が付いた時には周囲が石造りの壁で構成されている空間だ、あまり広い空間ではなく四方向に通路が伸びている。


「ミネルヴァだけ……か」


「2人とははぐれちゃったみたい、どうにか合流したいところだね!」


 雑用魔法からマップ表示を選択する、これによって歩いた場所を自動的にマッピングしてくれるという便利な魔法だ。

 そしてこれは嬉しい誤算なのだがマップの位置から自分の位置を大体推察できるようで、自分のいる区域はマップの中央よりやや左に位置している。

 これによって恐らくこの階層の全体図をこのマップは示しているという事が推察できる、味方の位置までは表示されていないようだがここで待っていれば合流は可能だろう。


「探しに行かないの?」


「まあな、こういう時にみんな動いちまうと合流にかなり時間がかかってしまうだろ? だからじっと待っていた方が早いんだ」


 俺は壁にもたれかかりつつレーヴァテインをバスターソードへと変化させる、武器のチョイスは完全に俺の気分次第といったところだ。

 普通のRPGのようにターン制というわけではないようで普通に魔物は徘徊しているらしい、この階層の魔物はまだ外の魔物と同じようなもので軽く剣を振ってやるだけで当たる上に倒すことが出来る。


「エリスさん、ここに居ましたか」


「あぁ、サラは一緒じゃないのか?」


「まだ合流していませんね、ここからは一緒に行動しましょう」


 しばらく待っているとカオリと合流することが出来た、カオリと合流したおかげか彼女が歩いてマッピングされた場所が自分のマップへと反映された。

 彼女はとりあえず外周を這うように歩いてきたようでマップはほぼすべて埋まっていた、登り階段と降り階段の位置も把握しているようで次の階層へ進むにはサラの合流を待つのみとなった。


「それでは探しに行きましょう」


「いや、それだけ歩いて見つからなかったって事はサラも移動してるんじゃないか? どうせなら降り階段の場所で待つっていうのはどうだ?」


「そうですね、ではそうしましょう」


 サラがもしも近くにいれば銃声がするだろう、消音化の魔法を使われていたら銃声は頼りにはならないが、それでもいずれは合流できるはずだ。

 何かしらのボタンを押しっぱなしにしてビューンと移動出来れば楽なのだが流石にそういうものはない、魔導ボードの使用という手が頭の中を過ったが魔物やサラと衝突したらボードが壊れる可能性も否定しきれない。


 俺たちは通路を進みつつ階段のある部屋へと向かう、その途中に開け放たれた宝箱を発見する。


「あれ、宝箱なんてあるんだな」


「私が見た時は閉まっていたのですが……」


「サラか? すれ違っちまったかな」


「とりあえず進みましょう、サラさんも降り階段で待っているかもしれませんし」


 特に罠は無く無事に階段があるという部屋に辿り着く事が出来た。

 そこには金属鎧に銃を持った少女が壁にもたれかかりながら座り込んでいた。


「やっと合流か、待ちくたびれたぜ」


「悪いな、遭難したらじっとしてろって習ったもんでな」


「それで大人しく待ってたのか? いい子ちゃんだなエリスは」


「まあまあ、合流できたんですしいいでしょう」


「2人共宝箱は見たか?」


「あぁ、開けてったのはお前だろ?」


「おう、んで手に入れたのはコレだ」


 渡されたアイテムは【絆の腕章】というアクセサリだ、どうやらこれを装備していれば階層移動時に仲間と同じ場所からスタートできるという代物のようだ。

 装備してみるとマップ上に味方の位置が表示された、ダンジョン攻略ではかなり助かるアイテムであるというのは確実だ。


「いいアイテムだな、次にはぐれてもこれで合流できそうだな」


「あぁ、しっかし壁に攻撃しまくってみたがやっぱり傷ひとつつかねえな……いや、つくんだがすぐに直るってのが正しいか」


「力業で進むのは難しいだろうな、ま、もしかしたら壊れる隠し壁とかあるかもしれないけどな」


「そいつはロマンがあるな!」


「ロマンよりも今は依頼達成が大事ですよサラさん、余裕があったらそういうものも探してみるのがいいのではないでしょうか?」


「そうだな、とりあえず先に進もうぜ!」


 俺たちは次の階層へと下りる事にした。

 再び一瞬意識が途切れ、気が付いた時には2階層目へと俺たちは立っていた。

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