44話 やりたい物と向いている物
「サラ、人に教えるってどうすりゃいいんだ?」
「いきなりだな、そうだな……自分が最初に分からなかった事を教えればいいんじゃないか?」
「んー……」
「それにある程度はベラから説明もされているだろう、俺もお前の説明で色々と教えてもらった身だからな!」
自室で何となくサラに相談してみた、正直なところ俺は大雑把に教えて後はフィーリングで、というような教え方くらいしかしていないのだが。
そこで理解してくれるのであればいいのだが、それが出来ないタイプの人にその感覚を伝えるというのはどうにも難しいのだ。
「ま、色々と教えるだけ教えて……って感じだな」
「深く考える必要はないさ、気楽に行け気楽に」
「ありがとな、サラ」
「おうよ」
そして翌日、今日は午後から依頼を受ける一連の流れを行った、獲物は毎度おなじみのゴブリンロードだ。
とは言っても自由にやらせた結果、開幕でケイトがアイスブラストをぶっ放し、その後軽く魔法を放つだけで終わるというあっけないものとなった。
「やっぱ火力オバケだな……」
「レベルアップしました!」
「お、おめでとう!」
「良い戦い方だっと思うよ! 同じくらいの強さの相手なら大きな魔法をぶつけて後は初級魔法でも良さそうだね!」
短期決戦型の理想形とも言える戦い方だ、彼女も中々センスがあるように思える。
「さ、今日はこれから武器を買いに行くぞ!」
「はい!」
ケイトの能力値ならば銃がオススメだろう、精神力が反映される銃であれば普通に射撃するだけでもかなりの打点を叩き出せるはずだ。
「何がいいんだ?」
「そうですね……私個人としては弓が気になります!」
弓は技量と筋力が反映される武器で、ファイアアロー等の弓技もそれをもとに攻撃力が算出されるようで彼女に合っているかと言われると答えは否だ。
しかしここで否定するというのはゲームであれば俺はしないようにしている、だがこれは現実、命に関わる事でもある為に迷ってしまう。
「弓かぁ」
「ケイトのステータスだったら銃がいいかもね、でもケイトが好きなように選ぶのが一番かな!」
「じゃあ後で銃も買ってみますね!」
すんなり言って大丈夫なようだ、それ以前に少し考えればわかるがそれ以外に言う事も無いだろう、妙なところでコミュ障を発動するのだけはやはり困ったものだ。
「サラさん達のようなバランスのいいステータスに憧れます!」
「案外どうにかなると思うぞ? 俺とか初期のステータス振りは知力に振ってたんだけどな、今ではすっかり筋力とかそっちの方が伸びちゃってるしな」
「ふむふむ……ではそういう面を伸ばす為にも弓を使ってみるのもよさそうですね!」
「なるほど、その手があったか」
「良い所に気が付いたね! 流石ケイト!」
「えへへ、ありがとうございます」
主人公適正もある事だ、方向性を変えても一定のラインまではメリメリ育つと見てもいいだろう、好きにやらせるのというのがやはり一番のようだ。
ケイトはシンプルなリカーブボウを購入した、矢は矢筒に10本ほど入っているように見えるがどうやらこれは飾りのようなもので不思議と湧いて出てくるようだ。
「そういえば弓術とかの技ってたまに魔法と同じものがあるよね、ファイアアローとか」
「あぁ、でも効果だとか威力は結構違うみたいだぞ? あくまで名前が一緒ってだけで完全に別物って思った方がいいと思う」
「まずは弓術を覚えないとですね!」
「あぁ、まだ晩飯まで時間があるし練習するか?」
ゴブリンロード討伐が想定以上に早く終わってしまったために時間が余っている、自由時間という形にしようかとも思ったが、もしも彼女が練習を希望するなら付き合おう。
ケイトは鼻をフンフンと鳴らしつつ目を輝かせて肯定の返事をした、子供はあまり得意ではないのだがこうして見ていると考えが変わりそうだ。
「では早速いきましょう!」
ケイトが弓を背中に背負って再び街の外へと歩いていく、俺とサラもそれに続いて外へと出る。
的になるのは魔法の時にも使ったラウンドシールドだ、折角の機会なので俺たちもレーヴァテインを弓へと変化させて少し練習してみる事にした。
「触った事無いけど案外いけそうな気がするな」
「ステータス補正とかもあるだろうしね、魔法に比べたら結構楽なんじゃないかな?」
「早速狙ってみますね!」
ケイトが矢を放つと綺麗にラウンドシールドの真ん中へと矢が突き刺さった、矢はすぐに消滅しラウンドシールドの耐久値はきちんと削れているようだった。
「上手いな!」
「すごいね! いきなり真ん中なんて!」
「ありがとうございます! いっぱい練習して弓使いを目指しますよ!」
俺たちも弓を構えてみて分かったのだが、意外と狙うのは簡単だ、割と適当に狙ってもどこに命中するのか何となくわかるのだ。
矢を放ってみると実際にその位置へと綺麗に命中する、遠距離武器って結構強いんじゃないかこの世界。
とは思ったものの欠点もいくつか見つかった、まず単純に与えるダメージが近接武器よりもやはり少ないのだ、弱点を狙撃できれば張り合える所までは行くがそれでも純粋に叩き続けるのであれば近接武器に軍配が上がるだろう。
初級弓術は矢を少し放っているとすぐに全員覚醒し、簡単な弓術を試しに使いつつ練習は進んだ。
「楽しいですね!」
「あぁ、何だか新鮮な気分だ」
「明日は弓だけで何か依頼をしてみるのもいいかもね! 守りの勉強もしないとだし!」
「明日もよろしくお願いします!」
攻撃に関してはもう問題ないだろう、後は守りだ、今後プレイヤーとの戦闘も考慮すると攻撃ばかりしていては彼女はいつか負けてしまうだろう、それを防ぐためにも守りについてというのは特に念入りに教えなければいけない。
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