第108話 そろそろ疲労も溜まってきました

 1つ目の催し、ボール当てを1発でクリアした俺たちは、矢印の示す方向に向かって走っていく。

 走るといっても美優に合わせているので俺はだいぶ歩幅を縮めて走っている。

 なんか普通に走るよりもこっちの方が歩数が多いからかキツい。



「美優、疲れてないか?」

「大丈夫です。これでも私、一応運動は出来る方なのでまだまだ動けます。」

「ははっ、それは頼りがいがあるな。」

「お兄ちゃんの方こそ大丈夫ですか?」

「現役男子高校生を舐めるな。これくらい余裕だ。」

「ふふっ、さすがお兄ちゃんです。」



 俺たちは、お互いまだまだ余裕だと分かったのか少しペースを上げた。

 そして、走ること10分弱。

 次の催しものが見えてきた。



「次の催しだ。あそこに2人居るってことは1人は、もう既にクリアしたってことか。」

「次もすぐにクリアして1位の人に追いつきましょう!」



 俺たちは、そう言って意気込みその催しの説明をしてくれる先生の元へと向かった。



「今回の催しは、このボールをあのネットに入れてもらいます。ボールは、全部で10個あります。それを全て入れたらクリアです。ですが、1つ目の催しみたいに保護者が生徒を肩車をしてボールを入れるのは禁止です。」



 ネットというのはよく運動会である玉入れのネットだ。久しぶりに見たけど結構な高さがある。



「準備はよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です。」

「終わったら私の元へ来てください。このスタンプを押します。」

「はい、分かりました。」

「それでは頑張ってください。」



 先生は、そう言って俺たちに10個のボールが入ったカゴを渡してくれて送り出してくれた。

 俺たちは、すぐにネットの近くへ行き、ボールを持った。



「よし、それじゃ、やるか!」

「はいっ!」



 そう言って俺たちは、ネットに向かってボールを投げる。

 すると俺の投げたボールはネットを通り越してしまい、美優の投げたボールは、ネットの縁に当たって入らなかった。



「うわっ、これ、結構難しいな。」

「ですね。とにかく何回も投げて力加減を把握しましょう。」

「ああ、そうだな。」



 俺たちは、そう言って何回もボールを投げた。まぐれで何回か入ることはあったがそれでも2、3個だ。



「仕方ない。ここはもう力技だ。何回も投げていれば必ず入る。」

「確かにそうですね。それじゃ、さっそく……ふっ!」



 俺と美優は、両手にボールを持って投げる。入らなくてもどんどん投げ続ける。

 すると作戦通り、たくさん投げていると何回かはネットに入っている。

 そして、5分ほど投げ続けてようやく最後の1個になった。



「よしっ、これで最後だっ!」



 俺が投げるともし、それが入らなかった時のために美優と俺はすぐに拾えるように構える。

 だが、その必要はなかった。

 俺の投げたボールは、綺麗にスポッとネットの中に入っていった。



「よ、よしっ!入った!」

「さすがです!」

「それじゃ、早いとこ、スタンプを押してもらおう。」



 ここでだいぶ時間ロスをしてしまった。

 俺たちは、急ぎめに先生の元へと向かった。



「はい、合格です。」



 先生は、そう言うと俺の渡した紙にスタンプを押してくれた。



「それでは次も頑張ってください。」



 俺と美優は、先生のその言葉にはい、と返事をしてから出発したのだった。



「お兄ちゃん、私は大丈夫ですからもう少しスピードを上げましょう。」



 出発してから数分後のことだった。美優からそんな提案をされたのは。



「大丈夫か?」

「はい、せっかくお兄ちゃんと一緒に出ている競技なんですから1位を取りたいです。」

「そっか。なら、ちょっとスピードを上げるか。」

「はいっ!」



 美優は、徐々にスピードを上げ始める。

 俺もそれに合わせて上げていく。

 今さっきよりもだいぶ早くなったからか、3つ目の催しがもう見えてきた。



「はぁはぁ………み、見えてきましたね。」

「美優、本当に大丈夫か?」



 美優は、既に肩で息をするほど疲労していた。



「は、はい。大丈夫です。それよりも早く行きましょう。」



 美優は、自分が疲労していることを誤魔化すようにそんなことを言って先へと進んでいった。

 俺は、少し不安を抱きながら3つ目の催しの説明をしている先生の元へと向かった。

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