第58話 周りの目が怖いです

 今日は、土曜で学校は休日だ。

 俺は、約束通り麗華と優奈を誘ってちょっと都会の方に出て遊ぶことにした。



「こうやって3人で遊ぶのって久しぶりだな。」

「確かにね〜。まぁ、実際はお兄ちゃんのせいなんだけどね。」

「え!?俺の!?………あ、そっか。入院とか色々としてるからか……」

「…………ねぇ、優奈さん。」

「ふふっ、そうだね。」

「な、なんだよ、二人とも。そのまだ分かってないな、こいつって言う目は!」

「そんな目、してないよね〜?」

「うん、してないよ〜。」



 2人は、顔を見合わせながら「ね〜」と言っている。

 この2人は、本当に同年代のように仲良しなのだ。なんの遠慮もしてないようなそんな気がする。



「それよりもお兄ちゃん、どこに行くの?」

「ん?別に目的地を決めたわけじゃないよ。2人が行きたい場所があるならそこに行こうと思ってたけど。」

「…………お兄ちゃん、普通ここは男の人がエスコートするものじゃないの?ね、優奈さん?」

「え?あ、いや……よ、陽一君にエスコートされるとなるとそれはそれでなにか恥ずかしいような……」

「でも、嬉しいでしょ?」

「………うん……」

「ほら〜。ってことで今回は仕方ないとして次からはちゃんと行く場所とか考えてエスコートしてね?」

「はいはい、分かったよ。」



 エスコートとか言われても俺、あんまりこういうとこ来たことないからよく分からないんだよな。ってかまず、女子とも優奈か麻美くらいとしか遊ばないから絶対に行く場所が偏ると思うし。

 そもそも俺にそんな相手が………居たわ。でも、静香って絶対俺と遊びなんか行かないだろうし。



「………ちゃん………お兄ちゃん!」

「っ!な、なんだ!?」

「なんだ、じゃないよ。今さっきから呼んでるのにずっとボッーとしちゃってどうしたの?」

「いや、ちょっと考え事をな。それでなんだ?」

「とりあえずショッピングモールに行こうってことになったよ。」

「ああ、あそこか。分かった、なら行こうか。」



 俺たちは、そのショッピングモールに向けて歩き始めたのだが2人とも俺を真ん中にして両端にいるからすごい周りから見られる。それに優奈も麗華も可愛いからそんな2人を両手に花状態にしてるから周りの男からの嫉妬の目がすごい。



「なぁ、なんで2人とも、俺を真ん中にしてるんだ?別に2人とも仲がいいんだから俺が真ん中じゃなくてもいいだろ?」

「いいの、お兄ちゃんは気にしなくて。」

「そうだよ、陽一君。気にしちゃダメだよ。」

「いや、気にするよ?周りからの目とかすごいし。」

「むっ、お兄ちゃん!今は、私たちと遊んでるんだから周りのことはいいでしょ?」

「い、いや、でも、めちゃくちゃ見られてるんだぞ?」

「いいんだよ、陽一君。私たち、気にしないから。」

「いや、だから俺が気になるんだって!」



 俺がそう言っても2人は、断固としてその位置を崩そうとはしなかった。ショッピングモールに着く時には俺ももう気にしないことにした。



「久しぶりに来たな、ショッピングモール。」

「私もこのごろ来てなかったから久しぶり〜。」

「私は、陽一君がまだ病院で眠っていた時にお見舞いを買いに麻美ちゃんと来たよ。」

「あ、優奈、お見舞いに来てくれたんだ。ありがとな。」

「う、ううん、気にしないで。」

「いや、さすがに気にするなって言われても無理だよ。本当にありがとう。」

「………う、うん……ど、どういたしまして……」



 優奈は、照れ臭そうに頬を染めて俺のお礼の言葉を受け取った。



「今度、麻美にもお礼を言っとかなきゃな。」

「う、うん、そしてあげて。………それよりも一番お礼を言わなきゃいけないのは麗華ちゃんの方だよ?毎日毎日、学校が終わったら家にも帰らずに病院に行ってたんだから。ちゃんとお礼言った?」

「そ、そうなのか、麗華?」

「も、もう、優奈さん、なんで言っちゃうんですか!こういうのはあまり言わない方がいいのに……」

「麗華、悪いな。今までずっとお礼を言わないで……」

「う、ううん、別にいいよ。それにずっと言ってもらってたから。」

「でも、そのお礼ってその日その日のお礼だろ?わざわざ毎日お見舞いに来てもらってたのに何も言わないなんて嫌だから………麗華、本当にありがとう。」

「………う、うん………」



 麗華は、嬉しさ半分恥ずかしさ半分と言った表情をしている。

 これで毎日来てくれた麗華にお礼ができた………って待てよ?



「なぁ、優奈。麗華が毎日来てたって知ってるってことは優奈も毎日来てくれたんじゃないのか?」

「……………」

「そういえばそうだよ!優奈さんも毎日お見舞いに来てくれてたよ!」

「れ、麗華ちゃん!………も、もう……」

「………これはあれだな。2人にお礼として何か買ってあげないとな……」

「え!?い、いいよ、陽一君!」

「う、うん、さすがにそこまでされたら悪いよ!」

「いいや、絶対にする!さぁ、早く行こう!2人とも何が欲しい?やっぱり服とか?」



 俺は、何を買ってあげるか考えながらショッピングモールの中へ入っていった。

 そして、後ろでは……



「全くもうお兄ちゃんったら………ふふっ、でも、やっぱりあれがお兄ちゃんだね!」

「うん、そうだね。麗華ちゃん、私たちも行こ。陽一君が呼んでるよ。」

「うんっ!そうだね。」

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