第37話



「彩……」


「な、何よ」


「それはセクシー過ぎませんか?」


「う、うるさいわね!!」


「スケスケですね……何の為に買ったんですか?」


 私が下着を選び始めてすぐに、部屋にアーネがやってきた。

 私の洋服選びを興味津々な様子で見ていたのだが、今は下着選びに参加している。


「彩……貴方って結構……攻めた下着を持ってるのね……」


「ほっといてよ!!」


「赤は派手ではありませんか?」


「ほっといてって!!」


 別に私がどんな下着を持っていようと誰にも迷惑を掛けてないんだから、良いじゃ無い!


「まぁ、私としては貴方と悠人君の関係が進んでくれるのは嬉しいですけど」


「それならあんまり口出さないでよ……」


「でも、あまり派手だと引かれますよ?」


「え? そうなの……」


 私はそっと黒の下着をクローゼットの引き出しに戻す。

 

「あら、そろそろ帰らないと行けない時間ね……」


「そう、私も今日は早く寝ようかしら……」


「それが良いわ、夜更かしはお肌の大敵よ」


「それもそうね」


 私がそう言うと、アーネの足下に魔方陣が浮かび上がってくる。

 

「それじゃあ、明日は頑張ってね」


「そうするわ、ありがと」


 私はアーネに手を振り、アーネが帰るのを待つ。

 そんな時だった、私はアーネの足下にクローゼットから転がってしまったのであろう、私の下着を発見する。


「あ、これも……」


「え、彩?」


「え……」


 私はアーネ足下にあった下着を取ろうと、魔方陣の中に入った。

 その瞬間、魔方陣が強い光を放ち始めた。

 私は思わず目を閉じ、目を腕で隠す。

 

「もう、急になに……よ?」


 光が治まり私は徐々に目を開けられるようになり、少しづつ目を開ける。

 そして、完全に目を開けた私はその光景に驚いた。


「何よ……ここ……」


 目の前には大きな泉があった。

 後ろには森が広がっており、少し離れたところには大きなお城が見えた。

 先ほどまで居たはずの私の部屋の面影はどこにも無く、それどころか私が知っている世界とも違う。


「あらぁ……付いて来ちゃったの……」


「アーネ! こ、ここって……もしかして……」


「えぇ……ここは私とユートの世界よ……」


「嘘……でしょ……」


 私は驚きのあまり、その場に膝をついてしまった。

 明日は折角のデートだと言うのに、まさかこんなことになるなんて……。

 

「なんとか帰れないの!?」


「今すぐは無理よ、世界を渡るにはそれなりの魔力を使わなきゃ行けないし……」


「じゃあ、いつ帰れるのよ!」


「うーん……明日の夕方かしら? 私の魔力が溜まればの話しだけど……」


「明日の……夕方? そんな……」


 折角の休み、しかも悠人とデートだと言うのに……。 最悪……私は幸せから絶望に突き落とされたような気分で、その場に座り込む。


「うーん……私もなんとかしてあげたいけど……」


「仕方ないわよ……私の不注意だし……」


 折角ユート一緒に買い物に行けると思ったのに……。 べ、別に……またいつでも行けるし……そんなに悲しくないし……悲しく……ないし……。


「あ、彩!? な、泣いてるの?」


「グスッ……泣いて無いわよ!」


「貴方……悠人君がよっぽど好きなのね……」


「違う!」


 私はそう言って顔を隠す。

 まるで子供みたいだ。

 私は自分で自分の事をそう思いながら、涙を拭いて立ち上がる。


「あぁ!! もう仕方ない! とりあえず、今は元の世界に帰る事を考えないと!」


「急に元気になったわね……」


「いつまでもウジウジしてられないわよ」


「まぁ、私もいつまでも凹まれてても困るけど……そろそろ日も暮れるし、私の家に行きましょうか」


「アーネの家? それってもしかして……」


「そうよ! 私とユートの愛の巣よ!」


「……あっそ」


 自分の顔でそんな歯の浮くような台詞を言われると、こっちまで恥ずかしくなって来るわね……。

 私はアーネの後ろに付いてアーネとユートの家に向かう。

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