第26話 約束
とある病院の一室に一人のベテランプロ野球選手が訪れた。
「えっ? 澤井選手?」
「ああ、そうだ」
「どうして、ここに?」
「君に会いに来たんだよ」
「えっ?」
「どうして、手術をしないんだい?」
「怖いんだ……失敗するかもって……」
「なるほどね……今年50歳になる俺だって、打席に立つ度、膝が震える程怖いもんさ。三振するんじゃないかってね……それでも、期待してくれている人達の為に俺はいつでも打席に立つ」
「無理だ。僕には無理だ」
「んー、そうだ。それなら明日の試合で俺がホームランを打ったら手術をするってのはどうだい?」
「えっ? 澤井選手がホームラン?」
「そうだ。約束できるかい?」
「うん……わかった……約束……するよ」
次の日ーー
テレビ画面からプロ野球実況の音声が流れる。
『打ったー! 代打ベテラン澤井、値千金の逆転サヨナラホームラーン』
「澤井選手……よし、今度は僕の番だ。約束は守るよ」
若手の医師はそう呟くと、水色の手術着に身を包み、看護婦を呼びつけた。
「おい! 手術をするぞ!」
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