35 喋る動物と昔話2
木や植物がワサワサとたくさん生えていて、ジメジメ蒸し暑いジャングル。
川を流れる水の音や、いろんな生き物の鳴き声が聞こえる、とっても自然ゆたかな場所。
あんまり道という道はなかったから、わたしたちはただがむしゃらに前に進んだ。
木の間をスリの抜けて、草をかき分けて。そうやって、ちょっとしたサバイバル気分でジャングルの中をズンズン進みました。
ちょっぴり薄暗いジャングルの中は、わたしとアリアにとっては少しこわい場所だった。
だってどんよりしてて『ぶきみ』だし、常にガサガサ音が聞こえてくるから、何かが飛び出してきそうだし。
でもわたしたちの前をレオが先に歩いてくれてたら、なんとかそれについて行って進むことができた。
そんな感じでおっかなびっくり行った先、ジャングルの奥に、町のような場所がありました。
「わぁ……! なぁに? すごーい!」
ずっと薄暗くてこわかった気持ちはすぐにどっかにいっちゃって、わたしは町の不思議な光景にすっかり夢中になった。
この国に来てこうして旅を始めて、色々な町に寄ってきた。
どこもわたしの世界の街とは違って、変なところや不思議なところもあったけれど。
でも、このジャングルの中にある町がダントツで一番不思議でヘンテコだった。
何がって、一番気になったのは、町の中に動物さんたちしかいないこと。
それも普通の動物さんじゃない。人間みたいに二本足で立っていて、しかも服を着てる。
色んな種類の動物さんたちが町の中を当たり前のように歩いてて、人間みたいに生活をしてた。
「おぉ。ここは『どうぶつの国』からの移民の里か。こんなところにあったんだな」
「『どうぶつの国』?」
隣で声をあげたレオにオウム返しで聞く。
この世界の常識を知らないわたしにすっかりなれたレオは、うなずいてから普通に教えてくれた。
「『まほうつかいの国』の隣国の一つだ。ヒトの言葉を話せる動物たちが住んでる国さ。ここはきっと、そこから移り住んできたやつらの住処なんだろうな」
「へぇー! 『まほうつかいの国』の他にも国があるんだね!」
「そりゃもちろんあるさ。それぞれ独自の文化、法則で成り立ってる。その中でもこの国が一番デカいんだけどな」
わたしがわくわくしながら言うと、レオはちょっぴり得意げに胸を張って答えた。
やっぱり魔法使いってことに『ほこり』があるのかな。
魔法使いの人は、自分たちが魔法を使えることをとっても『すうこう』なことだと思ってるって、前に聞いたし。
「『まほうつかいの国』はね、いろんな国のヒトが魔法を勉強しにくるんだよ。だから移民が多いの。でもわたしも、『どうぶつの国』のヒトを見るのは初めてなんだけどね」
「オレらの街には移民はいなかったからなー」
後ろからわたしにどさっともたれかかってきたアリアが、目をキラキラさせながら言った。
なんだかとってもウキウキした感じで、町の様子、動物さんたちをながめてる。
「わたし、動物大好きなんだぁー! ずっと犬を飼いたかったんだけど、お父さんが許してくれなくて……」
「おじさん、よりによって犬嫌いだったもんなぁ」
「そうなんだよ! 犬は吠えてうるさい、とか言ってさ。ちゃんとしつければ大丈夫なのに。犬は頭いいんだから」
ぷくっとほっぺをふくらませるアリア。
前の気持ちを思い出したのか、すこしぷりぷりしてる。
でもすぐに普通に戻って、わたしに目を向けてきた。
「アリスは動物好き? おうちで何か飼ってた?」
「わたしも好きだよ。ペットは何も飼ってなかったけどね。でも、動物さんたちとおしゃべりできたら楽しそうだなぁって思ってたから、わくわくしちゃう」
「だよね! 『どうぶつの国』のヒトたちって、どんな感じなんだろう。楽しみ!」
「お前らはしゃぎすぎんなよー」
『魔女の森』にいた時は、森の動物さんたちとたくさんお友達になって、みんなで遊んだ。
けどあそこの動物さんたちは、変わった子もいたけどでも普通の動物で、おしゃべりはできなかった。
だから『どうぶつの国』のヒトたちは、動物さんとおしゃべりしてみたかったわたしにとっては夢みたいなヒトたちだった。
そんなふうに盛り上がるわたしとアリアに、レオはすこし投げやりに言う。
こういう時、レオはちょっぴり冷めてるんだ。
まぁ、女の子同士のノリについていけないのしょーがないのかな。
そういえば創も、わたしと晴香が二人で盛り上がってる時似たような感じだったかもしれない。
男の子って、そんな感じなのかな。
「とにかく街に入ってみようぜ。できればジャングルで野宿はしたくねぇし、どこか寝泊まりできるところをさがさねぇと」
そう言って先に歩き出したレオに、わたしとアリアはあわててついていく。
一歩町に入ってみると、にぎやかな声とキラキラした明るい明かりにぶわっと包まれた。
ジャングルの木々の中に作られた、自然になじんだ造りの街並み。
レオとアリアの町も森に馴染んだ感じの緑あふれるところだったけど、ここは完全のジャングルに混じった町だった。
大きな木の上に建物があったり、木を掘って作った洞穴みたいな家だったり、枝から小屋みたいのがぶら下がっていたり。
石を重ねて作ったものや、土を固めて作ったもの、いろんな種類形の建物が、まるでジャングルの一部みたいに作られてて、でも一つの町としてまとまっていた。
そして薄暗いジャングルの奥地の中だからか、色んなところにカラフルなちょうちんみたいな明かりがぶら下がっている。
これがとにかくキレイで、なんというかとっても『げんそうてき』。なんだかお祭りみたい。
あったかい色の明かりは、なんだかぽわーんとふわふわした気持ちにさせてきて、夢の中に迷い込んだみたいだった。
「おや! おやおや! 人間のお客さんとはこりゃめずらしい!」
そんなまわりの不思議で面白いものをキョロキョロみんなで見回していると、急に大きな声が聞こえた。
わたしたちが思わずビクッとしていると、一匹の犬がひょこひょことこっちめがけて
「いやーいらっしゃい! よくもまぁこんなのところまで。旅のお人ですかな?」
わたしたちの目の前にぴょんと飛び込んできたのは、コーギーみたいな犬だった。
短い足でキリッと背筋良く立ち上がって、舌をぺろっとだしながら、クリンとした目でうれしそうに見てくる。
パッと見は普通のかわいいワンちゃんだけど、その犬はピチッとしたシャツにネクタイを締めていた。
わかってたことであるけれど、いざ目の前にやってきてしゃべられると、びっくりしちゃって声がでなかった。
そんなわたしたちに、コーギーさんはとってもにこやかな笑顔を向けてきた。
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