第7話 クリスマス
僕の心とは対照的に空は晴れ渡り、世間では気持ちのいい朝だった。昨夜はぐっすり眠ることができた。一応初めてのデートなので緊張するかと思ったがそうでもなくぐっすり眠れた。
これも心から愛していたり好きではないからなのだろう……
僕は朝食を摂りつつテレビを見ていた。
まなみとの待ち合わせは14時だ。僕達は14時に駅で待ち合わせをし、電車で水族館に行くことになっていた。朝食を食べた後は宿題やゲームして時間を潰したが心はどこか別の場所にあるようだった。
昼ごはんを軽く食べて駅へ向かった。駅には10分前に着いたが既にまなみは待っていた。まなみを見つけた僕は駆け足で近づいた。
「ごめん、待った?」
寒いのに胸元が空いている
「全然全然。私が早く来すぎちゃっただけだよ!楽しみにしてたから早く着いたのかもね」
まなみは笑顔で答えた。僕は一目見てまなみが化粧をしているのに気がついた。すっぴんのまなみしか見たことがなかった僕は化粧映えする顔に少しであるが胸の高まりを感じた。
僕達は古い券売機で切符を買い寒いホームで少し待ってから電車に乗り込んだ。水族館までは30分程だ。何気ない話をしてるとすぐに着いた。駅のホームはたくさんの人でごった返しており、そのほとんどがカップルで水族館に行くのは誰の目にも明らかだった。
周りから見れば僕達もカップルに見えているのだろうか?
僕と同じ様に『それ』のために付き合っている男は何人いるのだろうか?
お互いに心から愛し合っているカップルは何組いるのだろうか?
もし『それ』というのがなかったのなら何人この場から消えるのだろうか?
僕はまなみと話しながら考えていた。
駅から水族館までは歩かなければならず、水族館帰りのカップルや仕事中のサラリーマンなどと狭い歩道をすれ違いながら歩いた。
この時ふと僕は、普段感じることのない視線を今日は感じていることに気がついた。それというのは男女問わずチラチラ見てくるということだ。
考えてみると切符を買う時、ホームで待ってる時、電車に乗ってる時、すれ違う時、なぜだか僕とまなみ両方をチラ見している人が多かった。なんとなくだが容姿の査定をされている感覚に近いと感じた。
そういえば僕も普段見知らぬカップルを見ると顔やスタイルを何気なく見ては、お似合いだとか羨ましいとか、なぜこんなブサ男にこんな可愛い女なのだろうなどと無意識の内に査定していた。査定される側になって感じたことは少し優越感を覚えたことである。まなみの顔はタイプではないが世間的に見れば十分可愛い方であり、今日は化粧をしているせいか色気も増していた。すれ違うカップルが僕達よりも容姿が劣っていたら優越感を覚え、優っていたらその男に負けた気がしていた。
まなみを横に連れて歩くことで優越感を感じることができた。これがもし絶世の美女が隣にいるとしたら、少しどころか天まで届きそうな優越感を覚えるのだろうか……
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