20200112〜

心が死んでしまうので 昇華しないと駄目なので 『木の葉舞う』

心が死んでしまうので

歌わなければ駄目なので

ぼくは歌いにいくのです


雨のない森は育たない

木のない山の土は崩れ

抱えきれない水は溢れる


ぼくという木が一本きりで

静かに朽ちていこうとするのを

誰も知らない

きっと知らない


木々のなかに埋もれながら

孤立をし続けるつらさを

知らないきみではないだろう


かなしみは

哀れみと愛おしみの側面を持つ


自己愛なのかなんなのか

愛ならどうしてこんなに苦しい

どうして己すら癒せないのだろう


心が死んでしまうので

昇華しないと駄目なので

ぼくは歌いにいくのです


声は空気と混ざり合い

はるか彼方にとけていく

ミクロのぼくが旅に出ていく


きみがぼくを知らなくていい

押しつけたいわけでもない

ただ漠然とでも感じてほしい


ぼくという木があるということ

この世のどこかに生きていること

声をあげ続けているということ


苦しみは

まるで気紛れな天気のようだ


逃れられないものだけど

気の持ちようで調が変わる

ひとり溺れるだけではいけない


これから先をどう生きる

心を殺してしまわぬように

ぼくは歌い続けていく


木の葉舞う

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