信頼

 自分は基本的に世の中を信用していないのだと思う。だからこそ、人だって信じ難い生物としか見れないのだろう。


 コタツにミカンは定番中のド定番だ。これを独り占めする至福もまた良い。享受する他ない。

 外はあいにくの悪天候。生ぬるくなってしまったミカンを皮を剥くわけでもなく、ただ天板と手のひらを使って転がす。ぶちぶちとミカンの中で筋が切れた。


 暖気が充満した部屋で緩やかに過ごす。これで良い、と自分に言い聞かせながら、数日前に来た連絡とそれに対する返信を思い返していた。

 本当は、今日は、外出する予定だった。けれど、断ってしまった。

 彼らは良い人だ。いくつも親切にしてもらった記憶がある。悪い所は思いつく限り少ないはずだが、どうも信じ難いと感じてしまう。彼ら彼女たちといるのは楽しいが、不安が常に付き纏う。ならばいっそ断ってみたのが数日前の話である。


 自分のせいが大半だけど、わざとでは無いとわかっているけど、思い出される悪気ない言動や押し付けられたような善意が自分に愛想笑いをさせる。それが自分を不安にさせるのだ。


 自分は基本的に世の中を信用していないのだと思う。だからこそ、人だって信じ難い生物としか見れないのだろう。


 こうして、1人過ごす間にも彼ら彼女らは何を話しているのだろうか。今日を断った自分が話題に上がるとは思えないけど、もし、万が一、


 そこで低く柔らかく裂ける音がした。


 それは、切れる筋もなくなったミカンから発せられたものであった。どうやら転がし過ぎて皮が破れてしまったようだ。食べるつもりはなかったが、仕方ないので身を取り出して口に運ぶ。


 ぬるくて、水っぽくて、少し酸っぱかった。


■■■■■

【】さんは日付の変わる頃、みかんののったコタツがある部屋で疑わしいことばかりだった話をしてください。

#さみしいなにかをかく

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