遅刻の連絡
私が経験した”業務以外で”もっとも楽しかった人たちとの現場の話しです。
この現場では、朝の9:00出社が義務付けられていました。
フレックスタイムは存在していましたが、事前申請が必要で1週間以上前に理由と出社予定時間を書いた物を、課長と部長に許可を貰って、業務が遅れていない事を証明した上で、フレックスタイムを使った時間を補填する残業予定を書かなければならなかったのです。
今考えると十分ブラックな状態だったと思いますが、このときには現場で事情が違うので、そういう物だと受け入れていました。
特に朝の連絡は大変だったのです。
前の日が徹夜だろうと、8:50までに会社に連絡を入れて、連絡ボードに遅刻理由と出社予定を会社にいる社員に書いて貰わないと、遅刻の連絡をした事にならないのです。IT関連企業に勤めた事がある人なら解ると思いますが、部署やチームで特色が出てきます。
8:50というのは9:00に業務を開始する場合に、社員が会社に到着し始める時間なのです。
簡単にいうと、8:45くらいから8:50までしか”遅刻”の申請ができないのです。
最悪なのは、ここで申請をしておかないと9:01に会社に出社できたとしても、午前中は半休扱いになり、有給休暇が減らされます。振替休日が残っている場合には、振替休日が一日分減らされる事になるのです。
連絡も、会社に電話を入れて、一言”体調不良で遅れます”で終わりなのです。
遅刻理由が重要ではなく、遅刻の理由を連絡してきたという事が重要になってしまっているのです。
わかりますか?
熱が出て頭が痛くてフラフラした状態での”体調不良”と、前日遊びに行って寝不足での”体調不良”が同じ”体調不良”なのです。
それだけではありません。電車の遅延も遅延証明を持っていってもダメなのです。遅刻の理由を、電話で連絡して来ないとどの様な理由が有っても認められないのです。
さて、会社側のことばかりを行ってきましたが、私が居た部署・・・チームは、少し・・・。いやかなり変わった人たちで構成されていました。人数は、10名ほどです。
業務内容はどこにでもある、社内の何でも屋です。特別な事をしているわけではありません。
特別なのは、仕事終わりにあります。
ともかく、いろんな部署やチームや関連会社から客まで、それこそ関わった人たちからのお誘いがすごいのです。
金曜日の夜は毎週のように違う場所での飲み会に誘われます。
週末以外にも、ボーリングに誘われたり、やカラオケに誘われたり、関係がなかった業務の打ち上げに誘われる事もありました。違う会社の飲み会をはしごした事も多々あります。
麻雀大会に呼ばれた事もあります。
そのために、チームの全員が一通りの遊びができるようになっていきます。なぜ誘われるのかは、業務にも関係していたのですが、顔つなぎ役になっている為に麻雀大会もチームの10名と複数の会社から参加者が来ます。
そうやって客同士やチーム同士をつなげていたのです。
そんなチームなので、誘われなくても夕方に時間があれば飲みに行ったり遊びに行ったりします。
基本的に全員参加ですが強要された事はありません。チームリーダーが強要するのが”大嫌い”だったのです。
チームリーダーの家で麻雀をしながら飲むことも多くなります。いま思えば安い給料で働かされていました。
飲み歩くのもいいのですが、お金が続かなくなれば、宅飲みに切り替わります。
終電を逃して、リーダーの家に泊まる事もあります。
朝起きて、会社に連絡を入れます。遅刻の連絡です。
”体調不良で遅れます”この連絡を入れるだけなのです。
ただ、約10人が連続でかけます。出社予定もだいたい似通っています。
電話を受ける方もわかってきます。最初の1人を受けた時点で、チーム全員だろうと予測できます。
会社のルールとしては、8:50までに電話で”遅刻の理由”を伝えることなのです。最終的に、電話を一度つなげたら、その場にいるチームメンバーが電話口に出て、”体調不良で遅れます。9:30出社予定”と告げます。
最初の頃は、1人1人電話を切っていたのですが、面倒になり切らないようになってしまったのです。
最後には、最初に電話した人がその場にいるメンバーの名前を読み上げて”体調不良で遅れます。9:30出社予定”と告げるようなっていきます。意味が無いことがわかっていますが、意味が無いことを強要している会社側の問題でもあるのです。
暫くそんな日々が続いていました。
社員を規則という名前の命令で縛って居た人たちは一握りです。その人達が、私たちのチームを呼び出します。
規則違反だと言い始めたのです。
私たちは、規則違反をしていません。規則に則って対応しています。
私たちのチームの解体まで言い出しましたが、チームリーダーは”どうぞ”の一言で終わらせます。
業務実績が飛び抜けていいのです。業務実績が良ければ何をやってもいいのかと、上役たちは言いますが、そうではないのです。守るに値しない規則ばかりを増やして、会社を規則だらけにして、社員が自分たちの言う通りに動けば実績が上がると思っている人たちに対する嫌味なのに気が付かないようなのです。
社長まで話が行きます。
社長は懐の狭い人だったようです。上役の意見を通してしまったのです。
チームは解散を命じられます。
リーダーは、10名を集めて経緯を説明してくれます。そして、いろんな会社からの引き抜きが来ているけどどうする?とチームメンバーに告げます。10名とこのチームと連携していたチームの数名が、会社に辞表を提出しました。
チームが抜けた後で、規則はより厳しくなったようです。
そして、私たちが他の会社でのびのびと業績を上げているときに、その会社は徐々に生産性が落ちて、新しい発想が生まれなくなって、社長と上役はかなりの額の負債を抱えて飛んだと風のうわさで聞きました。
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