146話〜エルフの青年〜研究者〜

 名もなき城での緊迫した雰囲気の中__




 __ここシェルズ城に隣接する塔の五階の部屋では、眼鏡をかけたエルフの青年が立ったままの姿勢でニヤニヤしながら本を読んでいる。


 辺りには、実験や研究などに使われるフラスコやビーカーのようなものが置かれていた。


 勿論、実験などに使われるあらゆる物も至る所に置かれている。


 床には色々な本が無造作に置かれていた。本棚はある。だが、数えるほどしか本がない。



 そのエルフの青年は本を閉じると、エメラルドグリーンの長い髪を後ろに掻き上げ、東側の窓へと歩きだす。


「さて、あの能力を使うとどうなるのか」


 窓際までくると名もなき城があるであろう方をみる。


 外はまだ暗く、月明かりが辺りを照らしている程度だ。


「あの能力は、まだ未完成。ですが、どんなものなのかが知りたい。そのためには、犠牲者が出たとしても仕方ないこと」


 フゥ〜っと息を吐いたあとまた口を開いた。


「まぁそれに、ガインの代わりなら、また探せばいいことですしねぇ」


 そう言いながら窓際の壁に寄りかかる。


「それに……ガインには、データを取るために持たせた、記録ができる魔石水晶の入った袋を持たせてありますし」


 窓際の壁から離れると、台の上にオレンジ色の魔石が飾られている中くらいの水晶が置かれている方へと歩き出した。


「回収も、わざわざしなくても……。この魔石水晶さえあれば、ガインに持たせた水晶からデータが流れてくる」


 魔石水晶の側までくると手に取り眺める。


「これは本当に便利ですねぇ。この魔石水晶のことについて書かれた文献が、この地下の隠し部屋から出て来た時は流石に驚きました」


 その時のことを思い出しながら魔石水晶を台座に戻した。


「その書物のおかげで貴重なデータが取れます」


 嬉しさのあまりニコリと笑みを浮かべる。


 そうこうしていると扉を叩き開け部屋の中にこの城の兵士が入ってきた。そして、側までくるとその青年に一礼をする。


「--様。ニック様が至急、国王様の書斎にくるようにとのことです」


「儀式が中断したことは聞いていましたが。そのことと何か関係が……」


 そう考えたあと兵士に「分かった」と告げた。すると兵士は一礼をし部屋を出て持ち場に戻る。


「いったい私に用とは、何事なのでしょう。まぁ魔石水晶をみていなくても大丈夫だとは思います。心配ですが、ニック様には逆らえません。仕方ない行きますか」


 そう思い後ろ髪をひかれながらも部屋を出ると、この国の王アルフレッドの書斎へと向かう。




 そして__その後その青年は王の書斎に着くと、アルフレッドとリリアスとニックと共に今起きていることと、これからどうするのかを話し合ったのだった。

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