86話〜破紅龍(ハクリュウ)

 ここは城の中庭の儀式場。クロノアはローレンスを何者かの攻撃から助けた後、ユリナがノエルの前でミリアになった事で、何が起きたのか分からずに困惑していた。


 そして、ローレンスも自分が何者かに攻撃を受けた事で困惑していた。


 すると、そこにレオンが近寄ってきて、クロノアとローレンスは我に返り、


「ローレンス、とうとう奴らが動いた。だが、どうする?このままでは奴らの思うツボだが。」


「レオン様。確かに、このままでは召喚された異世界の者達が揃ってしまいます。何とか阻止しなければなりません。ですが、どうしたら。せっかくレオン様があの城の者達を欺く為、名前まで変え潜入したと言うのに、申し訳ありません。我々は事を起こす事さえ何も出来ず。レオン様の今までの苦労が意味をなさなくなってしまった。それに、ラシェル様が異世界の者を召喚されてしまわれ、それとまだ確証はありませんが。ブラックの召喚魔導師は、第2のクロノア・ノギアを召喚したかもしれません。」


「クロノア・ノギア!?まさか……ローレンス!伝説の悪魔女と言われ恐れられた。あの、黒龍の悪魔クロノアの事か?」


 レオンがそう言うとローレンスは頷きクロノアを見た。


「あのね。私は確かに、クロノア・マリース・ノギアだけど。それに、私の知ってる人で合ってればだけど。そのクロノア・ノギアの事も知ってる。でも、何故そこまで黒龍の悪魔を危険視するのかが理解出来ないんだけど?。」


「ローレンス。そうかこの女性がクロノアか。なるほど、黒龍の悪魔の事と過去に何があったのか、その口ぶりでは知っているようだが。ただお前は、その事についてどこまで知っているのだ?」


「確かに、あの話が間違いなく、この世界の事での出来事ならば、この世界で黒龍の悪魔と呼ばれていたクロノアに何が起こったのかは知っている。けどね、それと同じ事が、私にも起こるとは思えない。」


「クロノア。さっき、お前は言ったな。そのクロノア・ノギアという名前は、そのクロノアから譲り受けたと。」


「ローレンス、確かにそうだけど。だからって……でも、一つだけ言わせてもらいたい事があるんだけど。何故あの時、この世界の人達は、クロノアにあんな酷い事を……それに、あの事だってね。あの子は悪くなかった筈なのに。」


 クロノアは友人の事を思い出し泣き崩れた。


「それは、どういう事なんだ?黒龍の悪魔の身にいったい何が起きたって言うんだ?」


 ローレンスがそう言うと、ハクリュウがその光景を少し遠くの方で見ていたが、何があったのかと心配になり駆けつけていて、その話の一部を聞いていた。


「おい!今、黒龍の悪魔って言ったよな?」


「ヒクッ。ハ、ハクリュウ。ヒクッ。あのねそれは……。」


「お前が、ラシェル様が異世界から召喚したというハクリュウか。その口ぶりでは、お前も何か、その事で知ってるようだな。」


「ああ。その黒龍の悪魔の話は、あの人から聞いて知っている。黒龍の悪魔……本人にはあった事はないけどな。それに、まさかあの人が召喚された世界がここだったとはな!?」


 そう言うとハクリュウはレオンとローレンスを睨み付けた。


「……聞きたいのだが。お前がいうあの人とは、もしやリュウキという名前ではないか?」


 レオンがそう聞くと、


「ああ。だったらどうする?さっきの話を聞く限りだと、リュウキさんの名前が出てこなかったのが理解出来ない。それに、お前は何故リュウキさんの名前を知っているんだ?」


 ハクリュウは何故リュウキの事を知っているのか疑問に思い聞くと、レオンは少し考えてから、


「リュウキ……いや、破紅龍のリュウキ。その名はホワイトの者だけに代々語り継がれてきた。何故か分からないのだが、その破紅龍のリュウキに関しては、誰も話したがらなかったらしい。」


「そうだろうな。俺は、その話はリュウキさんに聞いて知っている。そして何故そんなとんでもない異名を付けられたのかもな。リュウキさんはこの世界で起きた事を思い出すから、この異名の事を嫌っていた。そのリュウキさんのその痛みを分けてもらいたくて、ハクリュウと言う俺の名前は、そのリュウキさんから貰ったんだ!」


 そう言うとクロノアとレオンとローレンスと後ろから追いかけてきたマキシムは驚いていた。


 そして、その事についてハクリュウは話し出した。

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