76話〜真相は迷宮の中に
アリスティアはディアナを抱きかかえながら、バックの中から布を取り出し丸め枕がわりにして、そっと寝かせ、服を一枚脱ぎディアナに掛けた。
(……これは、いったいディアナの身に何が起きたというんだ。それに、この空気の異質さは尋常ではない。確かディアナは召喚魔導師。それと関係があるというのか?そうだとすれば、シャナは大丈夫なのか。)
アリスティアが考えていると背後で誰かの気配を感じ慌てて振り向き身構えた。
そこにはシャナとユリナがいた。
「アリスティア。これはいったい何が起きたというの?何故ディアナが……これは寝ているだけですよね?」
そう言うとシャナは心配そうにディアナを見ていた。
「シャナは大丈夫だったようだな。でも何故ディアナだけが?」
「ディアナ、大丈夫なのかな?やな予感しかしないんだけど。何も起きないよね?」
そう言うとユリナはディアナを見た後、何故か胸騒ぎがして不安になった。
「そういえばユリナ様は、もう身体の方は大丈夫なのか?」
「うん、私はシャナに回復してもらったから大丈夫だよ。」
「それならば良かった。それにしても、どうにかならないのか、この尋常ではない空気は……。」
「本当ですね。この感じは何かが出て来そうで嫌です。」
シャナがそう言うと、クロノアとイワノフが後ろの方で話をしているアリスティア達に気が付いた。
「ん?後ろに誰かいるみたいだな。」
イワノフはそう言いながら後ろをみた。そして、クロノアも気になり後ろをみた。
(……あれって、ユリナ達みたいだけど。1ヶ所に集まって、何かあったのかな?気になるけど、いつ儀式が始まるか分からない状況だし。ん〜でも、やっぱり何かあったんだよね。じゃ無ければここまで来てると思うし。でなければ何処かに隠れていると思うしね。それに、もしもの時はハクリュウがいるし儀式の方は何とかなるでしょ。)
クロノアはそう思いながら、何か起きたのかと気になりユリナ達の方に向かった。
そしてクロノアは、ディアナが床で眠っている事に気付き、
「ちょ、ちょっと!?ディアナはどうしちゃったわけ?何で寝てるの。」
「クロノア様、何故ここに?待機していたのでは無いのですか?」
「シャナ、そうなんだけど。何があったのか気になっちゃってね。」
そう言うと、アリスティア達は、はぁと溜息をついた。
イワノフもユリナ達が何をしているのか気になりクロノアを追いディアナの前まできた。そして、しゃがみ込み何が起きたのか調べながら、
「これは……何が起こった?この女は眠っているようだが。」
アリスティアはイワノフの不可解な行動が気になったが、何か知っているかもしれないと思い警戒しつつもう少し様子を見る事にした。
「ディアナが何故こうなったのか、お前も分からないようだな。」
「ああ。俺が聞いていた話とは違ったのでな。ん〜、何かいやな予感がするが。その前にこのデューマンの女は何者だ?」
「イワノフ。その人はディアナと言い、私と同じ召喚魔導師です。」
「デューマンか。見た感じだとブラックレギオンの召喚魔導師ってところか。」
「ディアナの身に何があったって言うの?」
クロノアはディアナを見つめながら泣きそうな顔になっていた。
「イワノフ。先程黒龍の悪魔について話していたみたいだが。これは考えたくは無いが、ディアナが眠ってしまった事とさっきの話とは関係があるのか?」
「さぁ。関係があるか無いかは俺には分からん。本に書いてあった事も何処まで本当なのかもな。だが、実在した話らしい。」
「それは、どういう事なの?もし関係があるとしたら、私はその悪魔って事になっちゃうじゃない。ははは……言われるのは慣れてるけど。流石にそれは無いよね……。」
イワノフは考え何かを思い出した様に話し出した。
「そういえば、その後その黒龍の悪魔がどうなったかという事は伝えられていない。他の言い伝えも同じだ。召喚された者がどうなったかは記載されていないし、何も伝えられてはいないのだ。」
イワノフにそう言われ、アリスティア達はディアナを心配そうに見ていた。
そして辺りは、狂気に満ちた空気が徐々に邪悪さを漂わせ始めていた。
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