2話〜黒き覇王の波乱の旅立ち

 私は目覚めた。そこは薄暗い洞窟のような場所だった。


 そして、クロノアは眠い目を擦りながら、辺りを見渡してみた。そこには、ゲームやアニメなどに登場するような、いかにも見た目が悪役そうな雰囲気のダークエルフの男性とデューマンの女性がそこにいて何かを話し揉めているようだった。


(ここは一体?)


 するとクロノアが目覚めた事に気づき、ダークエルフの男性が近づいて来た。


「目覚めたみたいだな。ん〜、でもな?ディアナ、本当にこいつが救世主なのか?」


 どうやらデューマンの女性はディアナと言うらしい。


「ハウベルト。そのはずだが?あたしにも分からん。何で女なんだ?」


 ディアナもクロノアに近づいて来た。


「えっと……すみませんが、状況が見えないんですけど???」


「ああ、すまない。召喚しておいて、放ったらかしにしてしまったようね。あたしは召喚魔導師のディアナ。そして、こいつは魔法騎士のハウベルト。」


「ダークエルフのイケメン魔法騎士ハウベルトとは俺の事だ!」


 ハウベルトがそう言った瞬間、後ろからディアナのドロップキックが後頭部を直撃した。そして、ハウベルトは失神した。


「はあ。何言ってるんだか。あっ、すまんな、こいつはどうも美的センスがずれてて、自分がイケてると勘違いしている。ああ、話がずれてしまったな、すまない。お前はあたしが召喚した。」


「えっと、何の為にですか?」


「何の為に……そうだな。お前にあたし達の国を救ってほしいから。ん〜、やっぱりどう見ても女なんだよなぁ〜。召喚魔法は間違ってはいない筈なんだけど?」


 クロノアを覗き込んだ。


「国を救うって……私がですか?」


「やっぱり、どう考えてもこいつに国を救う力があるか疑問だ!」


「えっと、私もそう思うんですが。」


 クロノアはふとある事に気づいた。


(あれ?私の身体ってゲームの姿で召喚されてる。周りには何故かコマンドとステータス画面的なものが?これって、あのゲームのままのレベルとステータスそのままだし、名前もクロノア・マリース・ノギアになってるし。ここが異世界なのは間違いないんだろうけど、救世主ってどういう事?)


 クロノアは不思議そうに考えているとディアナが困った顔をしていた。


「ん〜、長には救世主を召喚して連れて来るように言われているんだけど。」


 ディアナが考え悩んでいると、ハウベルトがドロップキックの失神から回復して目が覚め、ある提案をして来た。


「ディアナは間違いなく、この国では優れた召喚魔導師なはずだ。召喚魔法を失敗するとも思えない。それならこう言うのはどうだろう。この俺と勝負して勝てるようなら認める。そうでなければ、そうだな〜、ひんむくか?それとも殺すか?奴隷にするか?」


「えぇーーーーー!!!」


 クロノアは絶叫した。


「いい加減にしないか!お前が言うと、冗談も冗談にきこえんのだーーーー!!!!!」


 その瞬間ディアナの膝蹴りがハウベルトの鳩尾に入った。


 すると、ハウベルトは地べたにうずくまった。


「あはは……いっそお前が救世主になった方がいいのではないのか?」


 ディアナはハウベルトの顔を見て溜息をついた。


「はぁ〜、こいつは悪い奴ではないのだけどね。」


 ディアナはそう言いながらクロノアの方を向いた。


「でもそうだな。ハウベルトが言うように、実力をみるのも手かもしれない。確かに、勝負するのは、あたしよりもハウベルトのが戦闘には向いてる。」


(何んで、こんな話になってしまったのだろう?)


「んー、俺でもいいが、手加減できないが、大丈夫なのか?」


 そう言いながら頭を2、3回かいた。


「本当に救世主ならば、お前でも敵わないはず。」


 クロノアは、ほとんど話に入れず、流れで何故か勝負する事になってしまった。


「あの〜、本当に戦うんですか?」


「ええ、その方が、本当に強いかどうかを早く見極められる。」


 ハウベルトは辺りを見渡しながら、


「ん〜、ディアナ。ここでは、少し狭いのではないのか?」


(えっと、どうしよう〜。確かに、私はゲームの中ならほとんど負け知らずだったけど。大丈夫なのかな?ん〜、ゲーム感覚で、出来るのであれば多分大丈夫だとは思うけど。その前に、この対決って意味があるのかな〜。)


 クロノアが思い考えているとディアナが聞いてきた。


「そう言えば、お前の名前聞いてなかったね。」


(えっ〜今更ですか……。)


 クロノアは呆た顔になりながら答えた。


「えっと、今更なのですが。私は、クロノア・マリース・ノギアと言います。」


 そう自己紹介すると、2人は何故か目を丸くし驚いていた。


「あ、えっと……あまりにも長い名前で呼ぶのに困るのだけど。何と呼べばいいのかな?」


 ハウベルトは汗をたらしながら困ったように言った。


「あっ、名前なら何と呼んでくれても構わないんだけど。」


「そもそも、この世界にそこまで長い名前の奴がいなかったからなぁ。そうね〜、クロノアでいいか。その方が呼びやすそうだし!」


 ハウベルトは思い出したように、


「あっ、いい加減早く判断しなければ、こいつの次を召喚するにしても遅くなってしまう。」


 ハウベルトはクロノアに、こっちだと言うような仕草で指示を出した。


 そして洞窟の外に私達は出た。外は本当に異世界なんだなぁと思うほどに草原が広がっていた。


「さて、ここなら勝負するのにちょうどいいかな。」


「ふふふ、クロノア。とりあえず、お前の腕前を披露してもらおうか!覚悟はいいか?」


 ハウベルトは剣を構えた。


「えっと……本当に戦うんですか?何度も言うようですけど、あまり無意味な戦いは私避けたいのですが?」


「問答無用だー!!!」


 ハウベルトは魔法剣で攻撃を仕掛け、クロノア目掛け剣を一閃した。


 それをクロノアは軽々と避け、仕方なくクロノアは攻撃体制に入った。


 元々無意味な事は嫌いだけど、無意味に攻撃仕掛けて来られると、その性格のせいでゲーム内でも大人げなく本気になってしまう。


「あ〜あ。仕方ないか〜。売られた喧嘩は買わないと失礼だしね!」


 すると、クロノアの雰囲気と周辺の空気が一変した。


「そんなに戦いたいのなら、やってやろうじゃないの〜!!!」


 ディアナは、雰囲気が変わったクロノアをみて何かを悟った。そして慌てて叫んだ。


「ハウベルト!!!!!クロノアの様子が変だ気をつけろ〜!!」


 しかしハウベルトは、ディアナの意図がわからず、そのまま魔法攻撃を更に仕掛けていった。


「えっと、私はね。凄く負けず嫌いで面倒な事は元々嫌い。人付き合いもあまり好きじゃない。そして理にかなってない事も私嫌いなんだよね〜。それでさぁ。私はこんな事やめようって言ったよね?でさぁ。面倒だからこれ以上言わないけど。この魔法が効かなければ私の負けだけど。もし効けば一撃で終わらせる!」


 クロノアは呪文を唱えた。それもゲーム内での最大級の呪文を。


 《極大魔法 ファイヤーワークスーーーー!!》


 その瞬間、辺りいっぺんが炎の海とかした。


 それを見たハウベルトは驚き、逃げるのは無理ならばと思い、すかさず剣に魔力を注いだ。すると、水が刃の周りに螺旋のように覆い、


 《ウォータートルネード!!》


 剣を突き出し水の渦を放った。一瞬炎をかき消したかに見えた。が……しかし、炎の威力がありすぎて防ぎきれず、両肩に火傷を負い髪が少し焦げた。


「マジか……こんな魔法が存在するなんて……。」


「これが、この力が救世主の証。」


 2人は我に返りクロノアに近づいて来た。


 ハウベルトは嬉しそうに話しかけて来た。


「やはり、お前は我らの救世主。そして、黒き覇王なのだな。」


「黒き覇王って?えっと、私は女なんですけどーーー!!」


 クロノアはつい叫んでしまった。


 そして、何事もなかったようにディアナとハウベルトはクロノアに謝罪をした。


「本当に申し訳ない事を、我らが救世主黒き覇王。何なりと罰を……。」


「それならば、俺も貴女様に酷い事を、何で償えばよろしいだろうか?」


 それを見てクロノアは、ついギルマスの時を思い出し、


「そうだな〜、今私はすごく不愉快だしぃ、面倒だから……それなら、これからは私の言う事を何でも聞く事で。それで、いいかな?。」


 すると2人は顔を見合わせて驚き。


「あの〜、そんな罰でいいのですか?」


「それでいいのであれば、喜んでその罰一生受けます!」


 そして、この場は何とか切り抜けた。


(何故か成り行きで引き受けちゃったけど。これからどうなるんだろう〜。)


 そう考えていると。


「そろそろ、長の所に向かわなければなりませんね。」


「そうだな。そろそろ行かなければ。クロノア様これから我が国へと参ります。道中我々が非力ながら護衛をさせて頂きたいと思います。」


「はぁ、どうしても行かないといけないのね〜。」


「はい、クロノア様には、これから長に会い話を聞き国を救うと言う使命があるのですから。ここでくすぶってる暇などありません!!!」


 クロノアはこんな所でくすぶる訳がないだろうとツッコミたかったが疲れそうだったのでやめた。


「了解!しょうがないか〜。なるようにしかならないしね。」


 クロノアは渋々とディアナとハウベルトと共に、洞窟の祭壇から旅立った。


 そして、クロノアの新たな人生、苦難はここから始まったのだった…。

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