3話〜黒き覇王の波乱の旅立ち《後編》

 ここは洞窟の外の入り口付近。


 洞窟の外に出ると、クロノアは景色を眺めた。


 すると異世界なんだなぁと思うほどに、草原が広がっている。


「さて、ここなら勝負するのに丁度いいかな」


「フッ、クロノア。お前の腕前を披露してもらおう! 覚悟はいいか?」


 ハウベルトは剣を構えた。


「えっと……。本当に戦うんですか? 何度も言うようですけど、余り無意味な戦いは避けたいのよね」


「問答無用だー!!」


 ハウベルトは魔法剣で攻撃を仕掛け、クロノア目掛け剣を一閃する。


 それをクロノアは軽々と避け、仕方なくクロノアは攻撃体勢に入った。


 元々クロノアは無意味なことが嫌いだ。だけど攻撃を仕掛けてこられると、性格のせいでゲームでも大人げなく本気になってしまう。


「あーあ……仕方ないかぁ。売られた喧嘩は、買わないと失礼だしね!」


 すると、クロノアの雰囲気と周辺の空気が一瞬で変わる。


「そんなに戦いたいなら、やってやろうじゃないのっ!」


 ディアナは雰囲気が変わったクロノアをみて何かを悟った。


「ハウベルトォォオオオ!! 様子が変だ気をつけろっ!」


 しかしハウベルトは、ディアナの意図がわからない。そのため、更に魔法攻撃を仕掛けてしまう。


「えっと、私はね。凄く負けず嫌いで、面倒なことが嫌い。人付き合いも、余り好きじゃない。そして理にかなってないことも、嫌いなんだよねぇ」


 そう言うとクロノアは、下を向き不敵な笑みを浮かべる。すると、杖を前上に翳した。


「それでさぁ……私はこんなこと、やめようって言ったよね? ……面倒だから、これ以上言わない。この魔法が効けば、一撃で終わらせる!」


 そう言い、クロノアは呪文を唱える。それもゲーム内で、最も強力な呪文を唱えた。


 《極大魔法 ファイヤーワークスっ!!》


 すると辺りが、一瞬で炎の海とかする。


 それをみたハウベルトは驚き、今の体勢じゃ無理だ逃げられないと思った。それなら攻撃で防ぐしかないと思い、剣に魔力を注いだ。


 すると螺旋を描きながら、刃の周囲を水が覆い。


 《ウォータートルネード!!》


 そう叫び剣を突き出し、水の渦を放った。一瞬、炎をかき消したかにみえたが……しかし炎の威力は予想よりも上回っている。そのため防ぎきれず、両肩に火傷を負い髪が少し焦げた。


「マジか……こんな魔法が存在するなんて」


「これが、この力が救世主の証」


 二人はクロノアに近づくと、ハウベルトが嬉しそうに話しかける。


「やはり、お前は我らの救世主。そして、黒き覇王なのだな」


「黒き覇王って? えっと、私は女なんですけどっ!!」


 クロノアは、つい叫んでしまった。


 そしてディアナとハウベルトは、何事もなかったように、クロノアに謝罪する。


「本当に申し訳ない……我らが救世主、黒き覇王。なんなりと罰を……」


「それならば、俺も酷い事を……何で償えばよろしいだろうか?」


 そう言われクロノアは、ついギルマスの時の調子で……。


「そうだなぁ……今私は、凄く不愉快だしぃ。面倒だから……それなら、なんでも聞くってことで……どう?」


 すると二人は、驚き顔を見合わせる。


「そんな罰で、いいのですか?」


「それでいいのであれば喜んで、その罰を一生受けます!」


 そしてこの場は、なんとか切り抜けた。


(成り行きで引き受けちゃったけど。これから、どうなるんだろう?)


 そうクロノアは考える。


「そろそろ、長の所に向かわなければなりませんね」


「そうだな。そろそろ行かなければ……。クロノア様、これから我が国へと参る。道中、非力ながら護衛をさせて頂きたいと思います」


「どうしても、行かないといけないのね」


「はい! クロノア様には、これから長に会い話を聞き国を救うと言う使命があるのですから。ここで、くすぶっている暇などありません!!」


 クロノアはこんな所でくすぶる訳がないだろうと、ツッコミたかった。だが、疲れそうだったのでやめる。


「了解! しょうがない。なるようにしか、ならないしね」


 そう言うとクロノアは、渋々とディアナとハウベルトと共に洞窟の祭壇から旅立った。


 そしてクロノアの新たな人生、苦難はここから始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る