5.駆込
その1
都市|織内(おるない)からの脱出から一夜明けた。夜半に本降りになっていた雪はすぐに止んでいたので、朝日が登る頃には雪はすっかりと溶けてなくなっていた。
いつもより遅い起床だったが、睡眠時間が短かったために四人は一様に寝不足だった。
四人はいつものように作業区画でちゃぶ台を囲んで朝食を摂っていた。作業区画と言われているが、四人が車内で生活し始めてここで何らかの作業をした実績はなく、主に食事と一時的な休憩に使われていた。
「さて、昨日は酷い目にあったのじゃが、ルコの機転で何とかなったのじゃ。これからどうするのじゃ?」
遙華は睡眠不足でちょっとだるそうだった。
「機転って……ただの偶然なんだけど……」
ルコは困ったような顔をしてそう言った。ルコ自身は深い考えを持ってやった事ではないので、それを評価されても困惑する他なかった。逆に、自分の思慮の浅さを痛感する分、いたたまれない気持ちになった。
「偶然にしては出来すぎよね。こうして無事でいられるのも不思議な感じがするものね」
恵那もルコの行動に対しての評価は高いようだ。
「単に運が良かっただけよ」
ルコは益々いたたまれなくなってきた。
「運はやはり重要ですわ。特に戦いにおいては」
瑠璃はニッコリしながらいつものおっとりした口調でそう言った。
「そうじゃな。運ってやつはとても重要なのじゃ。特に成功には必ず運というものが必要になるのじゃ」
遙華はしみじみと語るように言った。
確かに成功者が語る言葉には必ずと言っていいほど、こうなっていなければ成功はなかったという下りが多い。そうは言ってもルコは楽観的にそう考える事はできなかった。
「あたしもそう思うわ!」
恵那は瑠璃と遙華の言葉に賛同した。
「済んだ事はもういいでしょ。それより今後の方針が大事だわ」
ルコはこれ以上耐えられなくなったので、話題を変えるようにそう言った。
「まあ、そうですわね。でも、今は食事に集中すると致しましょう」
瑠璃はまたニッコリしながらそう言った。
しかし、瑠璃の言った事とは裏腹に食事中はやはり昨日の2回の戦闘の話で盛り上がり、ルコは益々小さくなっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます