第20話 お泊まり一

 日曜日、まもる玲香れいかが泊まりに来る当日。やはり二人はやって来た。

 今現在、俺、守、玲香、雨音あまねの四人はリビングでくつろいでいる。

 それはまるで家族四人の日常にも見えるだろう。

 俺と守は静かにラノベを読んでいて、玲香と雨音は何やら楽しげに話している。

 何でいつも雨音は俺に冷たいくせに玲香と楽しそうに喋ってんだよ。そんなに玲香と喋るのは楽しいんですか、そうですか。

 俺が嫉妬心を玲香に対して燃やしているとそれに勘づいた雨音が口を開いた。


「こっちチラチラ見ないで。キモい」


 そして侮蔑の視線を俺に向けてきた。

 仕方ないので、俺は雨音の方を見るのをやめる。しかし、罵倒も含まれていたが、雨音は俺に喋りかけてきた。なら、そこから話を発展させよう。俺は話題を考える。そして、話題は見つかった。


「そういえば雨音、なんで友達にデマを流してんだよ。俺の印象が悪くなるじゃねえか」


 だが、見つかった話題はこれ。

 つい先日知った事実。雨音が友達に俺のことを超変態と言っている事実。

 だが、それに対して雨音からの反省の色はうかがえない。

 まじで酷いぞ。雨音の授業参観行けねえじゃねえか。まあ、元々行く気ないけど。


「デマ? 事実じゃん。晴斗はるとは超変態でストーカーと疑われるほどシスコン」

「いや、でも明らかに雪華は俺のことを性犯罪者扱いしていなかったか!?」

「そんなの知らないし。雪華が話を誇張させたんじゃないの」


 冷然とした態度から嘘ではないだろう。

 なら、ただの雪華の独断と偏見。にしても酷すぎだろ。妹をエサにする兄なんてヤバい性癖の奴以外ありえねえよ。


「まあ、だけど犯罪者扱いされてもおかしくないと思うけどね」


 しかし、雨音は雪華の独断と偏見に納得していた。

 結局、二人はあの後無事仲直り出来たらしい。だが、俺に対しての雪華の偏見は正されていないらしかった。

 本当に何で俺がこうやって痛い目に遭ってんだよ。意味不明だわ。

 俺の任務は雨音のせいで一つ増えてしまった。


「じゃあ雪華の考えを正さないとな」


 ついでに超絶美少女なので会話もしよう。そして親しい中になって談笑し合える仲になろう。そうして雪華からの好感度が上がれば、自然と雪華は俺の長所について雨音に話すことになる。それで雨音も俺のことを見直してくれて······


「その変態オーラを醸している晴斗の顔からして正す必要はないでしょ」


 まあ、この様子からして俺のことを雨音が見直す日は結構先のようだ。

 にしてもなんだよ。変態オーラって。俺、そんなオーラ出てないぞ。


「うんうん。本当に晴斗は変態」


 そこでいらない口を挟んできたのは玲香だ。

 変態ということは認めてもいい。というか男子高校生はみんな変態だろ。そこでラノベを読んでいる守も普段あまり気持ち悪い様子を表に出していないが、裏では何をやっているのか分からないんだぞ。


「私、晴斗と一緒に暮らしているから身の危険を感じてきたかも······」

「何でシスコンの俺が妹を危険に落とそうとするんだよ!? それにそんなに警戒心剥き出しにしないで!?」


 俺のことを睨み距離を少し置いた雨音。本当に俺のことをどんな変態だと思っているんだよ。何回も思っているけど妹をエサにする兄なんていねえよ。


「私も今日お泊まりだから······晴斗何にもしないでね!?」

「言われなくても何もしねえよ!」


 雨音みたいに警戒心を剥き出しにしてくる玲香に対して力強く返答した。


「なあ、守。お前も同じ男として何か言ってやれよ」


 と、ここで俺は同性という味方を利用することにした。

 だが、


「おう。本当に男はみんな変態だよな。だけど晴斗はその中でも群を抜いて変態だ」


 ごめん。勘違いしてた。守は味方ではなく、敵だった。何で、こんなのに助け舟を借りたのかと、今更ながら思った。


「守に言われたくないな。お前どうせ夜な夜な変なことを······」


 俺が嫌らしくそう言うと守はラノベから顔を上げて、


「な、な、な、なんの事だ」


 と、焦りながら言った。

 これは図星だな。まあ、仕方がない。思春期真っ最中の男子高校生なのだ。逆にそうゆうことをしていない方がおかしいのだろう。


「守まじか······」

「守さん······」


 しかし、女子一同はそれが分かっていないようで、引いている。

 仕方ないんだよ。思春期っていうのはロマンティックだけど恐ろしいものなんだよ。


「いや、俺そんなこと興味ないし! そ、そ、そんなこと言ってる晴斗がそうゆうことしてるんだろ」


 声を震わせ、焦りながらも守は俺に言ってきた。

 そして、上げていた顔を再びラノベに戻し、読み続ける。

 このまま顔を上げていると表情からして嘘を見抜かれるからその対策だろう。

 だが、守。もう嘘は見抜かれているぞ。

 そんな時、雨音が守の話を信じたのか少し俺に向けてくる顔が怖くなっている。


「うわ。晴斗は百パーセントそうゆうことしてるよね。······まじでキモいよね」


 ······何を根拠にそんなことを言っているのかが、俺には分からない。というか、勝手に決めつけんな。俺はそんなことしたことがな······いと言えば嘘になるが今はしていない。

 だから雨音の百パーセントを賭けた推測は誤解だったのだ。

 もっと百パーセントという数字に重みを感じて欲しい。

 こんな話をするのもなんなので俺はふと脳裏に浮かんだ疑問を守と玲香にぶつける。


「もうその話はいいだろ。ところで守と玲香、明日学校あるんだけど一回家に帰って学校に行くのか?」


 そしたら、その疑問に対して二人は首を傾げた。何、俺そんな変な質問したのか。


「私たちもう家から学校の用意持って来てるよ? だから明日の朝は一緒に登校だね」

「おう。俺も制服と教科書、重かったけど持ってきたぜ」


 どうやら用意周到らしい。道理で二人、修学旅行用のバックを持ってきているのか。なるほどなるほど。


「んじゃあ心配ないな」


 俺の疑問が一つ晴れたところで雑談タイム再スタート。

 この空間はすぐに賑やかになった。

 こんなのが夜まで続くのは久しぶりだな、俺はその空間に対して妙な懐かしさを抱いていた。

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