4.ローズナイツ


 残念そうにエレザがそう言うと、今まで沈黙していた妹のミレイユがかばうように話し出す。


「あれは姉様の失態ではなく偽情報をよこしたゲオルグのせいです、きっと奴は裏で……」

「ミレイユ、その話はもういい。それより、ワタといったな?良ければ町まで送ってやろうか」

「駄目です姉様、信用にならない者を連れていくのは……」

「良いだろ、危機を救ってくれた恩人でもあるんだぞ?救ってもらった奴をそもそも何故そこまで恐れる?」

「それだから姉様は……わかりました、姉様がそこまで言うなら」


 何故か話が勝手に進んでいるような気がするが、町に連れて行ってくれるようなので好都合だ、LiSMで調べてみるとこの近くには王都アルダートがあるようだ。


「それでいて、どうする?ついてくるか?」

「ああ、お言葉に甘えさせてもらおう」


 何か目的があるわけでは無いのでついて行くことにした。


 馬車まで一緒に歩いて行くと、その周りでは怪我していた護衛たちが包帯を巻かれ休んでいた。

 幸いなことに死者はなく負傷者だけのようだった。


 ただ、ここにいる護衛隊は全員が女性で構成されていて、このことをエレザに聞くと、この“ローズナイツ”は女性限定で結成されたクランで、冒険者ギルド内最強で勢力も最大規模であるらしい。


 また、クランは複数のグループによって構成されているようで、そのグループも各パーティーで別れていて、各グループ・パーティーで依頼を受けるようだ。

 ただし、基本的な行動は母体となっているクランの方針に従い、さらに大規模な討伐や戦闘、依頼があったときは全グループを招集し一つの集団(クラン)として行動する時もあるようだ。


 この“ローズナイツ”は構成員の中には戦闘要員だけでなく政治家や研究員などの非戦闘員も含まれている、そのため冒険者ギルドというより女性の支援団体のような性格もある、しかし現状は討伐や護衛で稼ぐことが多いので、そうした戦闘行為以外の行為では目立ったことはしていないようである。

 また有事の際は軍隊やその土地の領主とともに戦うこともあるようだ。


「それで、エレザ……さん?この後何処へ向かうつもりなんだ?」


「堅苦しい言い方はよせ、エレザで良い、この後はセレデアへ向かうつもりだが?」


「その町は大きいのか?」


「そうだな、ここら辺の物がそこに集まってくるからある程度の大きさはある、いろんなものがそろう市場や商店なんかがあるぞ、そうだ、いい機会だからそこでその変な身なりも変えた方がいいぞ、そのままだと完全に浮いてしまうからな。ちょうどいいからセレデアのギルド集会所で登録も済ませておけ、そのままだと危険も伴うからな、あと……」


「どうしたんですか姉様?いつもはそんなにしゃべらないのに……ま・さ・か?」


 いつもは、こんなに言葉を発さないのか、ミレイユは不思議そうな顔つきで姉を窺っている。


「な、なにをい、言っているそんなことなど、ない!そんなことよりすぐに行くぞ!」


 エレザは何故か顔を薄く朱色に変え、慌てたように命令を出す。


(なんだか、よくしゃべる人だなぁ……ただ、さっきのうろたえかたは一体?)


 本来であれば馬車にのせてもらい同行する予定であったが負傷者を優先的に乗せた為、仕方がなく俺は馬車の後ろから歩いてついて行くことにした。


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