279.越之国へ

 

 俺がエレオノーラを連れて帰った日の朝。


 メリアは珍しく俺に対してご立腹のご様子で、その顔は般若のお面のようだ。


 メリアが怒るのは至極当然のことで、これまで寝起きしていた部屋はメリアと俺しかいなかったのに、今やメリアの隣で俺に抱きつくようにエレオノーラが寝ていたのだから、そうなるのはわかりきっていたことだ。


 そんなメリアに俺は、これまでの経緯を誤解がないように丁寧に説明したが、それでもメリアの怒りは収まらない。

 こんな状況にも関わらずエレオノーラはワタの腕から離れなかった。


 過去エレザと戦い引き分けになっていた。

 その腕を買って俺の傍付としていてくれるように頼む


 怒りが収まらないのは、メリアの怒りの原因は他にあるからのようだ。


「そんなことはどうでもいいの、ワタが新しい女を連れてこようが遊郭に行って遊んでこようがそんなの良いの、そんなことごときで私の正妻の座は揺らがないんだから、私はこのことを私に黙って一人で勝手にいったことに腹を立ててるのよッ!」


「ご、ごめん」


「しかも、護衛であるはずのレナも連れてかなかったんでしょう?こんな異国の地でいくら銃を持ってたとしても大人数に取り囲まれて成す術もなく連れ去られてもしたらどうするのよ!もう少し自分の立場を考えてッ!あなたを慕う子たちを悲しませたいの?王国の民をまた絶望の底に突き落とすつもりなの?」


 メリアの言っていることは当然のことで、ワタがいなくなれば兵の士気どころか王国民の士気を大きく下げてしまう。

 さらに、それを好機と見た帝国がなだれ込んでくるのは必須だろう。


「はい、すみません」


「ふぅ、もういいわ、今はこうやって目の前にワタがいるんだから。何をしたって基本私はワタに口を出さない、でも一つだけ、お願い、死なないで……、私の傍から離れないで」


「ごめん、もうこれっきりにするよ、今度からメリアを連れて行くよ、必ず」


「うん、絶対ついていく、死ぬその時まで一緒よ」


 エレオノーラは自分が邪魔ものだと判断し、そっと身を離し部屋の隅に移動した。

 その後、二人は抱き合い、そのまま布団へとその身を投げた。



 次の日


 俺達は遠城帝と老中たちとの話し合いの折り合いがつかず暇を持て余していた。

 そんな俺達を見かねて、遠城帝は「せっかく異国の地に来たのだから観光ついでに息抜きしてくるといい」といって越之国へと温泉旅行を勧められていた。


 越之国は大和から北西の位置にあり、広い越之平野には多くの水田地帯が広がっており、そこでとれる米の生産量は国内一、海にも面する為海産物もとれるとても豊かな場所だ。

 そしてこの越之国は遠城帝の弟である越之城範頼が守護している。



 ワタ一行はひたすら大和から北西の方角にある越之国へと向かっていた。

 こちら側の車列は、護衛と道案内の為にということで出雲側から騎馬を100騎出してくれていて、彼らは前後に50騎ずつ別れて警護してくれていた。


 一方俺とメリアには護衛隊として、レナ率いるメランオピス隊一個小隊(50名)とミセア大佐率いるミスティア隊一個小隊(50名)を伴っている。

 車両はM2A3(IFV)ブラッドレイ4両とAAV7が4両、ハンヴィー4両(車載機銃にM240EかM2を搭載)を使う。


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