217.兵器供与


 お菓子を食べ終えたころ、俺はおもむろに口を開いた。


「イリスさん、これからエンペリア王国に対してのこれまでの返礼として、陸海空すべての兵器を無償軍事援助という形で贈らせてもらうことしたいんですが……」

「あら、うふふ、私が前に行ってた愛称覚えてくれていたのね!それについてだけど、さっきメリアちゃんから聞いたわよ……、さっきLiSMで各種兵器を見せてもらった時、もうすでに召喚してほしいものをリストアップしてあるから、あとはこれをワタくんに確認してもらうだけよ!」


 どうやら、すでにメリアがLiSMを見せていて、その時に第二次世界大戦時の兵器がお気に召したようで、手渡されたメモには兵器が列挙されていた。

 兵器といい列車といい、イリアは古いものがお好きなようだ。

 後で考えが変わるのかもしれないが。


 陸軍

 Kar98(狙撃手用(7.62×51mmNATO弾仕様))

 MG3

 M1A1(トンプソン)

 M1911A1

 M1ガーランド(7.62×51mmNATO弾仕様)

 M2カービン(7.62×51mmNATO弾仕様)

 Ⅲ号戦車(M、N型)

 ティーガーⅠ(エンジン・足回り改良版)

 Flak88(対空、対地)

 そのほか輸送用トラック、医療品、装具等


 海軍

 ボルモチア級重巡洋艦16隻

 クリーブランド級軽巡洋艦27隻

 グリーブス級駆逐艦66隻

 F4Uコルセア

 ヨークタウン級3隻

 その他潜水艦、輸送船、補給艦、揚陸艦、病院船等多数


 空軍

 P-51ムスタング

 B-17

 B-29


 この兵器群を後で召喚し配備させることにした。

 この時俺は現代兵器はいらないのか?とイリアに聞いたところ、別に嫌いじゃないけどというあいまいな答えが返って来た。


 そのあと俺はものすごく真剣そうな顔をして、俺と差しで話そうということになった。


「あら、二人きりでお話って、大胆ねぇ」

「いや、結構真面目なんだけど……」


 イリアはそんな風に俺をからかっているが、表情は違っていた。


 二人で話すことに対して、特定の人物から反対にあったが、俺はそこで冷たくこう言い放った。


「少しは静かにできないの?今日はまじめな話をするためにここに来たんだよね?旅行じゃないんだよね?そこんとこわかってる?わかってるよね?てかわかって?」


「「「「はい、ごめんなさい」」」」


 俺の怒り半分呆れ半分の言葉を聞き、彼女たちは一瞬にして静かになった。



 別室に通された俺はイリアにとあることを告げられた。


「早速だけれど、この国に私を気に入らないと思っている集団がいるらしいの、聞いたところによるとクーデターがすでに計画されているみたいで、恐らく首謀者はゲオルグってやつに違いないって聞いたわ」

「ゲオルグって確か、俺たちの国の冒険者ギルドにいるやつだったような?」


「そうなの、でさらにそいつは、コンダート王国内でも自分たちのシンパを集めて同じようにクーデターを起こそうとしているみたいだわ」

「で、その裏には帝国がいると?」

「流石は、私の息子ね!」

「いや、いや、待って、なんか違うよね?」

「まぁ、いいじゃない……、ということもあって、さっきのあいまいな言い方につながる訳なの」


「つまり、ここで現代兵器をこちらに譲ってもらっても、もしかしたら兵器を盗まれる可能性があるということを言いたいんですね?」

「そうなの、もしそうなったとしたら、いいかたは悪いけど現代兵器より少し遅れている兵器の方が、もし敵(ゲオルグ)にわたってしまったとしても、コンダート王国側としては対処がしやすいだろうし、あちらに現代兵器を持たせてしまったら、帝国とつながっている彼は恐らくそれごと帝国に渡すだろうしね」


「そうしたら兵器供与を見送って、こちらが派兵という形をとる案もあるけど?」

「いやそうしたら、そっちの兵が薄くなるわよ?また帝国の侵攻を許してしまうわ、それに援軍を出しているって言ってもこっちだってまだ帝国から侵攻を受けている最中だからね」

「ちなみに今、エンペリア王国側の戦況はどうなってますか?」


「そうね……リア!そこにいるんでしょ?」

「はッ、ここに」


 呼ばれた軍務大臣のウルス・リアは扉のすぐ向こう側に控えていていたようで、すぐに部屋に入って来た。

 俺にはわからなかったが、イリアは最初から隠れていたはずの彼女の気配が分かっていたようだ。


 リアは部屋に入ると、あらかじめ用意していたのか手には束になった資料を持っていた。


「リア、ありがと、ちょうどいいからあなたもここに座りなさい、それと資料をワタくんに渡してあげて」

「御意」


 そして渡された資料にはびっしりと戦況報告が書いてあった。





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