79.出撃!


 部隊の概要を整理すると


 1.混成戦車連隊が先行し敵情を偵察

 2.リメアが幽閉されている小屋を“メランオピス”隊が捜索&強襲

 3.小屋の強襲の開始前に陽動として戦車隊が攻撃開始

 4.リメアと王女を回収したのち帰投

 5.戦車連隊の撃ち漏らしを残っていた“メランオピス”隊で殲滅


 この順で進めていく、そして“メランオピス”隊の中に急造した今作戦の要(かなめ)、ヘリボーン部隊“アエトス”(鷲の意)の陣容は以下の通り

 指揮官 レナ大尉 搭乗機コールサイン“SS(ダブルシエラ)”(UH-60)


 コールサイン“S(シエラ)” UH-60隊 S1~S10 地上戦闘員 110名

 コールサイン“C(チャーリー)”CH-47隊 C1~C10 地上戦闘員 550名

 地上戦闘員総勢 660名


 残りの部隊は、戦車連隊とともに随伴兵として3の作戦に従事することになっている。

 さらに後方待機部隊として近衛師団が参加する。師団内では仲間から離反者が出たことに抑えようのない怒りで埋め尽くされており、今は師団全体が殺気立っている。

 そしてもちろん俺も、現場指揮官として“メランオピス”隊とともに行動するのだが、ここで俺は(本来すべきではないと思うが)試験運用と実用試験もかねて、WaltherP99とHK416Cを使うことにする。


 HK416Cはエレザやミレイユが愛用しているHK416のサブコンパクトタイプで、ストックを伸ばしても約690㎜(通常(14.5in)タイプは伸長時890㎜)と短く本作戦に向いている。


 WaltherP99はP38で有名なドイツのCarl(カール) Walther(ヴァルター(ワルサー))社で開発されたもので、今の銃業界で多く利用されているポリマーフレームを採用し、作動機構をストライカー方式と呼ばれる銃後端のハンマー(撃鉄)を持たず、代わりにファイアリングピン(撃針と言って薬莢の発火させる部分(雷管)をたたく部品)で直接弾薬を撃発させるものになっている。


 この銃の特徴として、ハンマーがある銃などはハンマーの状況を見れば撃発可能かがすぐわかるが、P99には弾薬が薬室内に入っていることが分かるように備えられたローディングインジケーターと、銃後部に目視や指で分かるようにコッキングインジケーターと呼ばれるものが備えられ、スライド後端からピンが飛び出してくる、そしてほかのストライカー方式にはないデコキックングラッチがあり、安全に銃内部にあるファイアリングピンを安全な位置に戻すことができる。そしてP99はバリエーションによって異なるトリガー(引き金)の動きがあり、主にAS(アンチストレス)とQA(クイックアクション)、DAO(ダブルアクションオンリー)に分けられる。


 今回使用するのはASタイプで、初弾発射時はシングル/ダブルアクションで動作し、初弾装填時には引金の動く幅がダブルアクション状態で、作動はシングルアクション状態になる、この状態のことを“ロングストロークシングルアクション”と呼ぶ、この引き金の引く幅が大きくなることによって不意の物音や、極度の緊張状態のときに指が思わず動き、暴発させるのを防ぐ効果がある。


 何故この期に及んで新しいものを出してきたかと言われれば、今後この国の軍隊や法執行機関などにおいて使用する銃器を今のうちに選定しておきたいのも理由の一つだ、もう一つあるのかと聞かれれば、そのことに対しては「男のロマン」とでもいうかもしれない(だってそうでしょう?)。


 俺は召喚が終わりひと段落した後、P99とHK416Cを地下のシューティングレンジに持っていき、他の隊員と交じってゼロイン(ゼロ点規正とも言い、狙った位置に着弾するように照準器を調節すること)をしながら訓練に励んでいた。

 訓練分の弾が尽き、出立の用意も終わり、セーフティゾーンで翼を授けてくれる飲み物を飲みながら休んでいると、レナが真剣な目をしながらやってきた。


「ご報告申し上げます。先ほど先行していた戦車連隊より通信があり、敵の位置を完全に把握できたのこと、現在わが方の部隊は敵部隊付近で待機中」


 固定無線機や携帯無線機などの通信機器も“メランオピス”隊に配備しており、隊内の後方支援隊と戦車連隊との通信に役立っている。


「ご苦労、いよいよだな、すぐに出撃!」

「了解!」


 “アエトス”に対して出撃命令が発令され、俺がレナと一緒に地上に出るころには既に日も落ち、あたり一面真っ暗であったが、ヘリが衝突防止用のライトやヘッドライトをつけていたのでそこだけ明るかった、そして全機に兵員が乗り込み俺らが乗ればいつでも飛べる状態になっていた。


 その中の指揮官搭乗機として用意した(他のとあまり変わらないが)UH-60にレナとともに乗り込む、乗り込んだことを確認した後一斉にヘリは上空へと飛び立っていった――




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