73.議題2
警備の甘さと内通者が出たということに怒りを覚えながら、俺のすぐ後ろで沈黙を保っているリレイに問いかける。
その言葉と同時に皆の顔が一斉にリレイたちの方向に向く、一瞬ひるんだようだが思い切って話し始めた。
「実はこの大攻勢が一部失敗したときに発動する極秘作戦がありました。その作戦というのが今回の女王陛下拉致作戦です」
その言葉に皆が固まってしまうが、リレイはそのまま続ける。
「この作戦は他の戦線で王国軍が気を取られている間に、王都にいる内通者と共謀し特務部隊を秘密裏に潜入させ、内部の人間を傷つけず無力化し、それらから奪ったもので変装し女王陛下やあわよくば王女殿下を拉致するものです。目的としては女王陛下らを人質に取り、各戦線の王国側の将兵を黙らせ帝国軍本隊をスムーズに王都へと侵攻させようというものです。この作戦が忠実に行われているのであれば王都から北東にあるエルシダート城付近の山のふもとの小屋に潜伏しているはずです」
「なぜ言わなかった?」
「本来であれば負けも想定していたハミルトン方面で残存兵力によっての遅滞戦闘を行うつもりでしたので、ここまで早く実行されるものだとは思いませんでした。さらに言うとその残存兵力すら今回の戦車戦において文字通り“全滅”してしまったので、それが行う余力もなく、強硬策として発動させた可能性があります。しかし、もう少し早めに伝えていればこんなことにはならなかったでしょう、なんとお詫びしたらいいかもわかりません……」
「その内通者は誰だかわかっているか?」
「残念ながら、あまりこの作戦には携わっていなかったので詳しくはわかりません。ただ、聞いた話によるとやはり軍内部の人間かと」
「や、やはり近衛師団の中に内通者がいるというのか!?おのれ!見つけ次第この手で処断してくれる!お先に失礼させていただく」
セレナは自身の部隊から内通者が出てしまったかもしれないという不安と怒りで我慢できなくなったのか、飛び出すように会議室から出て行ってしまった。
「すみません、もっと早く申し上げていれば……」
「わかった、もういい、よく言った」
そう言って、震えるリレイを抱きしめてやった、すると感極まったのかそのまま泣き崩れてしまった。
――チャキッ、カシャン
嫌な音が後ろからしたので俺はリレイを胸に抱きながら、ロボットのようにゆっくりと後ろを振り向くと、ベルが黒い瘴気のようなものを放ちながらSIG716をこちらに向けていた。
「ワ~タ~さ~ま~?ナニをシているんデスカ?フフフフ……コロス!」
「あーら、そこのあなた、私の考えと一緒のようね?国王陛下……その女をこちらによこしていただけるかしら?今すぐ滅して差し上げますわ」
ローザは先ほどのように剣を抜き放ち、黒に近い紫色の何かをまとっている
「ちょ、ふ、二人とも、お、落ち着こうか、な?リレイ、悪いけど離すよ?」
「ふぇ?」
とりあえず近くにあった椅子にリレイを座らせる、すると瞬時に殺気も消え、二人は何事もなかったように武器を収めた
(何この二人、やばくない?殺気が半端ないんですけど?ローザなんてものすごく恐ろしいことをしようとしてたよね?ベルに至っては俺ごと撃ち抜こうとしてませんでした?あ~怖い怖い)
「と、とりあえず場所もある程度分かったようなので、細かい話は後程、それではエンペリア王国女王陛下並びに王女殿下、戦火の中わざわざこのようなところまでご足労頂き、感謝いたします。今後もご協力お願いします」
先ほどの二人の殺気にやられたのか、エレザは脅えながらこの場を何とか収めようとする
「そんなことないわ、“国王陛下”にも会えたし、妹にも会えたことだし、何より娘の“相手”も見つかったみたいだから満足だわ」
イリスは意味ありげな言葉とともにこの部屋を去っていった
「また、会いましょうね(旦・那・様)」
(また、最後になんか言っていったが、口の動きしかわからない)
後ろで、また何やら不穏な気配を感じるが気にしないでおこう、うん。
そのままイリスは何かを言い残して、護衛に付き添われ帰って行った、そして見送った俺は結局あの二人が何を思ってあの行動に出たかわからないまま、そのまま会議室から出ていくことになった。
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