駄女神がいる日常~就職浪人してたが死んだら駄女神の旦那にされました。え、俺同意していないんだけど~
日向 葵
第一話~死んだら定職に就きました~
目を覚ますと、そこは知らない場所だった。真っ白な空間が神聖さを感じさせる。
目の前に、綺麗な少女がいた。透き通ったような銀髪に揺れるツインテールが愛らしい、胸が不自然にでかい少女は、真っすぐ俺を見つめた。
「
「……そうだけど、ここはいったい?」
「ここはいわゆる死後の世界。あなたは、死んだのです」
その言葉ですべてを悟った。静かに目を閉じて、最後の光景を思い出す。
俺の名前は佐々木 啓太。就職浪人の23歳。
あの日もお断りの通知を受けて、肩を落としながら帰路を歩いていた。
また履歴書を書かないと。
就職先が決まらないことに不安を感じていた。少し情緒不安定だったかもしれない。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん、誰か助けてぇぇぇぇ」
ふらふらと歩いていると、突如声が聞こえて来た。
就職が出来ないことに絶望を感じているが、人の心までは失っていない。俺は急いで声が聞こえてくるほうに走り出した。
そして俺は見つけてしまった。熊さんパンツをっ! じゃなくて、熊さんパンツをはいた小さな女の子が高い木の上の方でぶら下がっており、今にも落ちそうになっているところを。
少女がぶら下がっている木の枝の近くには、一匹の猫がいた。少女は高いところに乗って降りれなくなった猫を助けようと木に登り、体制を崩してああなってしまったのだろう。
木の上にいた猫と目が合った。猫は俺の顔にビクついて、ぶら下がっている少女に向かって飛び降りた。
「ぐぇ」
そのまま顔を蹴飛ばして飛び降りて、綺麗に地面に着地する。そしてもう一度俺の顔を見て、猫はダッシュで逃げ出した。
木の上でぶら下がって今にも落ちそうな少女からは、かすかに泣く声が聞こえてくる。
なんと哀れな。あの少女に比べたら、俺なんてまだ幸せな方かもしれない。そんな風にさえ思えた。
「そこの君、助けに来たぞ」
「ひゃわわわわ、だだだ、誰? 助けてくれるの」
「ああ、俺が絶対に受け止めてやる、だからそこから飛び降りるんだ」
「むむむ、無理、絶対に無理っ」
首をイヤイヤと振りながら泣く少女。だけどこのまま放っては置けない。だから、俺は声をかけ続ける。
「大丈夫だ、絶対に俺が受け止めるから。勇気を出せ」
「絶対? 本当に?」
「ああ、絶対に、本当に、だ!」
「わ、わかった、飛び降りるから。絶対に受け止めて」
少女はぎゅっと目をつぶり、手を離した。そのタイミングで強い風が吹き、少女の体勢が崩れた。お尻が一番下になるように落ちていき、このまま落ちれば、勢いで頭まで地面に打ちつける可能性がある。
俺は絶対に受け止めようと身構えた。
そして、少女のくまさんパンツが俺の顔面にあたり、俺はそのまま後ろに倒れてしまう。
少女の尻につぶされて、俺は地面に頭を打ちつけて意識を失った。
そして気が付いたら、ここにいた。
多分、俺の死因は……少女の尻攻撃による頭部の打撃っ!
あら恥ずかしい。
「……認めたくないけど、分かったよ。俺は、死んだんだね」
「理解が早くて助かります。それで、この後のことなんですけど……」
「なんとなく、わかってるよ」
「そ、そうですか………………ふひ」
こういうのはお約束の展開ってやつだよな。このまま異世界に転生させられて、小説の主人公のような壮絶な人生を歩むんだ。今度こそ、定職についてやる。
「じゃあ私と結婚してここに永住してくれるんですねっ! 実は私、ここからあなたのことをずっと見ていたんです。好きで好きでたまらなくて、転生したいなんて言われたらどうしようって……。
あ、自己紹介まだでしたね。私はサクレ。ここで転生神なんてやってます。気軽にハニーって呼んでね。きゃ、恥ずかしい」
「え、ちょま、ええぇぇぇぇぇぇぇっぇぇ」
なんか思っていた展開と違うんですけどっ!
「ちょ、ま、どういうこと」
「え、わかってるんじゃ」
「転生的な展開だと思ったんだよっ」
「え、でも、あなたのことを私の旦那として転生神の補佐役に任命してしまったので、もう転生できませんよ。やったね、安心安全のホワイト企業に就職ですよっ!」
「ちっくしょおおおおおおおおおおお」
気が付くと、俺はサクレという神様の旦那兼転生神の補佐役に任命されてしまった。
俺は死んでから定職に付けたようだ。
なんか納得いかねぇっ!
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