第12話

亀が水を吐き出すと、狐が嫌がり、その場から逃げる。




「キュンキュンキューン」




 鳴き声を上げて、道路へと飛び出す。




「助かっ、たわ……」




 青山ルビーの式神が間に合ったらしい。


青山ルビーは、その場にへたり込んで、呟いた。




「う、そ……」




 ロウが口にした、黒闇キョウコの名前。


もし、黒闇キョウコが生きているとしたら……


ロウは急いで階段を駆け下り、狐を追いかけた。


地面には炎が道しるべの如く、残っている。




「こっちか!」




 車に乗り込み、その後をつけると、とある総合病院へと辿り着いた。


















「……」




 武器は無い。


もし、もう一度犯人が狐を呼び出したら、勝ち目は無い。


しかし、犯人を見つけるには今が千載一遇の好機であり、ロウは暗闇に包まれた病院へと足を踏み入れた。


念の為、ムロに連絡を取る。




「今、総合病院にいる。 出来るだけ早く応援を頼む」




「なっ、ちょ……」




 通話を切ると、階段を見やる。




(……上か)




 どんどん階段を上がり、4階へとやって来る。




(ここか)




 辺りを警戒しつつ、火の道しるべの続く病室へと足を踏み入れた。


ベッドが並ぶ病室。


そこに、何者かが一人、横たわっていた。


顔はよく見えないが、微動だにせず、こちらを見ている。


点滴を腕に付けて、包帯を全身に巻いているようだ。




「お前が、黒闇キョウコか?」




「……あなたが邪魔をしたのね」




 女性の声。




「お前は、全身に大火傷を負ったが、死んでなかった。 この病院で、ずっと治療を受けていたのか」




「……あーあ、つまんないの」




 やはり、ベッドに横たわっていたのは、黒闇キョウコだった。


黒闇キョウコが横たわるベッドの窓際には、月明かりで照らされた、クシャクシャの火の文字のカードが置かれていた。




「やっと指が動かせるようになって、このカードが使えるようになったのに」




「……ずっと、それを持ってたのかよ」




 炎で焼かれたあの日から、このカードを手の中に握っていたに違いない。


すると、黒闇キョウコは震える手で、傍らの10玉を掴むと、火のカードの上に五芒星を書き出した。




「やめろっ」




 しかし、何も起こらない。




「……MP切れ」




 式神を呼び出すことは出来なかった。


黒闇キョウコの復讐は、幕を閉じた。


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