第10話

式薫を殺した犯人の可能性として、赤嶺アカネ、青山ルビーが浮かび上がる。


ロウは署に連絡を入れ、それぞれの自宅の捜索願を取るよう、指示を出した。




「念の為、矢部メガネの家の捜索も頼む」




「了解」




 エドが手配を進め、ロウは3人の手荷物の中味を改めた。




「ほんっと、サイテーなんだけど」




 赤嶺アカネが、腕を組みながら毒づく。


他の2人の荷物も調べたが、火のカードは見つからなかった。




(動機の線で怪しいのはこいつらだ。 絶対、見つかるハズだ)




 早急に手配が進み、翌日には家宅捜索が行われることとなったが、予想外のことが起きる。


夜中、自宅で眠っていると、携帯が鳴った。


















「あんだよ、っせーな……」




 暗闇の中、スマホを探してコールに出ると、夜勤当番のアイリーンが通話に出る。




「寝てる場合じゃないわよ、矢部メガネが焼死体で見つかったって!」




「……はあっ!?」




 ガバ、と布団から飛び起きる。


心臓の鼓動が止まらぬまま、ロウは着替えを済ませ、矢部メガネの自宅へと急いだ。




















「……クソ」




 自宅にて、矢部メガネは無残な姿で発見された。


式薫と同じく、自室で焼死体が見つかった。


夜中、娘の叫び声を聞いた家族が駆けつけた時には、手遅れだったらしい。


ロウは、先に現場に来ていたアイリーンに質問した。




「青山ルビーと、赤嶺アカネは?」




「もう身柄は押さえてるわ。 でも、2人とも火のカードは持っていないみたい」




「どっちかが犯人じゃねーのか!?」




「落ち着いて…… 第三者の可能性もあるわ」




 別な第三者が犯人だとすると、口封じではなく、紫式部メンバーに対する復讐が目的かも知れない。




(くっそ…… 訳分かんねー)




 ロウは、携帯を取り出し、ムロに連絡を入れた。




「……今何時だと思ってんだ」




 あからさまに不機嫌なムロ。


虫の居所の悪いロウは、ドスの効いた声で、黙って出てこい、と言った。




「……こわっ」
















 夜中、署の前でムロと合流。




「一体全体、どうしたのよ~。 こんな時間にさぁ」




「これ以上、死人を増やす訳にはいかねー。 俺とお前で2人の護衛をする。 もしどっちかが犯人だったとしても、つきっきりなら犯行はできねーだろ」




「ちょ、護衛って、どうやって守ればいいのよ!?」




「お前魔法使いだろ。 何とかしろ」




 嫌がるムロを無理やり車に乗せ、赤嶺アカネの家へと送る。


ロウは、青山ルビーの元へと急いだ。


 赤嶺アカネの家から、さほど遠くない青山ルビーの自宅には、既に数人の警察官が待機していた。




「ご苦労っす」




 自宅に入り、部屋へと上がると、一人の警察官と青山ルビー。


その顔は、青ざめている。




「話は聞いたな?」




「……私、殺されるんですか?」




 手は小刻みに震え、とても演技とは思えない。


もし青山ルビーが犯人なら、中々の役者と言えよう。


スマホでムロに連絡を取る。




「そっちは?」




「……流石に大人しいわ。 昼間とは別人だね」




(やっぱ、ビビってんのか…… つーことは、第三者が犯人?)




 その時だった。


外から銃声が響いた。






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