234章

玉座ぎょくざかべりかかりながらノピアは、ラスグリーンの最後さいごの言葉を思い出していた。


「俺がクロエを内部ないぶから破壊はかいする。あとはまかせたよ、みんな」


その声はノピアだけではなく、ロミーや小雪リトル·スノー小鉄リトル·スティールリトルたちをとおしてクリアにもつたわっていた。


Personal link(パーソナルリンク)――通称つうしょうP-LINKによって、ラスグリーンのその思いは、仲間たちへととどけられていたのだ。


クロエを内部から破壊したらお前はどうなる?


ノピアはこころの中でラスグリーンへそうたずねた。


だが、彼はいつものように笑うだけでその質問しつもんにはこたえることはなかった。


ノピア、ロミー、クリアの3人はラスグリーンの覚悟かくごさっし、彼に言う通りに攻撃こうげきへとうつったのだった。


そして、3人は満身創痍まんしんそういながらも、ついにクロエをめた。


だが、クロエは――。


「“私たちの勝ち”ですって? 全員そんなボロボロの状態じょうたいで、この後にどうやって私をたおすというの?」


はならし、あきれるというよりは相手を見下みくだすように言うクロエ。


たしかに、今のクロエはノピアたちの怒涛どとうの攻撃によって追い詰められていたが――。


クリアは両目りょうめつぶされ、その目からひかりうしない。


ロミーも彼女ほどではないにしても、ダメージを受けすぎている。


そして、ラスグリーンは死亡しぼう


ノピアも機械化きかいかした体にひびを入れられ、もはや立つことすらもままらない。


動かない左腕ひだりうでさすりながらクロエはたからかに笑う。


「もう戦える人間なんていないじゃない? もう一度言うわ。それでどうやって私を倒すのよッ!?」


しずまり返った玉座の間に、クロエの声がひびわたった。


彼女の言うことはもっともだ。


もうノピア、ロミー、クリアの3人は戦えそうにない。


「お前のそのきずはラスグリーン·ダルオレンジ……やつ手柄てがらだ」


クロエの質問を無視むしして、ノピアがつぶやくように話しを始める。


「奴のいのちけた行動がこの状況じょうきょうを作った……だから、“私たちの勝ち”なんだよ」


ノピアの言葉を聞いたクロエは、眉間みけんしわせ、彼をにらみつける。


それでもノピアはしゃべり続けた。


ラスグリーンの話では、今のクロエの身体からだ――。


クロム·グラッドスト―ンの身体はもう限界げんかいが来ている。


クロエの持つ複雑ふくざつ精神意識せいしんいしき――つまりデータは、合成種キメラであるクロムの身体や普通ふつうに人間では、けしてえられるものではない。


そして、元々もともと長くはたなかった身体が、今の攻撃によってさらに寿命じゅみょうちぢめた。


だから、こちらの勝ちなのだと――ノピアはそう言った。


それを聞いたクロエは――。


「あら? 気づいていたの? 機械だよりのさるのくせに大したものね。めてあげるわ」


「それはラスグリーンの手柄だと言っただろう。あと、この場にいるの者たちが死力しりょくくしたからだ」


クロエを睨み返すノピア。


だが、クロエはクククとかたらしてあきれた顔を見せる。


「だからさぁ。それがどうしたっていうのよ。わかっていないようだから何度でも言ってあげる。それで、どうやって私を倒すのよッ!!!」


「戦える奴ならまだいるさ……」


ノピアは笑みを見せ、いきを大きくんでき出した。


そして、ゆっくりと答える。


「アン·テネシーグレッチが……まだいる……」


そう言ったノピアは、ズレっぱなしだったスカーフの位置いちなおそうとしたが、そのまま意識を失った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る