189章

げから復活ふっかつしたクロエは、アンの喉元のどもとつかむと興味深きょうみぶかそうにその肥大化ひだいかした黒腕こくわんを見つめる。


「それにしてもマシーナリーウイルスって、人体じんたいにどういう影響えいきょうあたえているのかしら?」


「さあ、シープ·グレイあいつに訊けばわかるんじゃない?」


アンを持ち上げて小首こくびかしげているクロエに、グラビティシャド―がどうでもよさそうに言った。


片手でちゅうへとかかげられたアンは、その喉元を掴んだ手を振りほどこうとふたた電撃でんげきはなとうとしたが、クロエが彼女に向かってテレパシーよる精神攻撃せいしんこうげき仕掛しかける。


「ぐッ!? ぐわぁぁぁッ!!!」


アンの脳内のうない激痛げきつうが走る。


喉がり切れてしまうかと思うほどの絶叫ぜっきょう


そのさけび声と共に、アンの肥大化した黒腕は、次第しだいに元の白い機械の腕へともどっていってしまった。


ニコは気をうしっているロミーをいて、泣きながらその場でふるえていた。


マナ、キャス、シックスの3人も、アンが見せた黒腕の力を持ってしても、クロエにはつうじなかったことに絶望ぜつぼうを感じ、その場で立ちくしてしまっていた。


だが、そんな中――。


ルドベキアはアンを助けようとクロエに斬りかかっていった。


しかし、ルドベキアの斧槍ふそうハルバードは、地面からあらわれた土とかべによってさえぎられてしまう。


それでもルドベキアは、あきらめずにクロエへと向かって行く。


幾度いくどとなく道をふさいでくる土の壁を破壊はかいし、ついにクロエに一太刀ひとたちびせた。


だが、すぐに傷口きずぐち泡立あわだち始め、即座そくざ再生さいせいしてしまう。


「おい、てめえらもボサっとしてねえで手伝てつだいやがれ!!!」


ルドベキアの怒鳴どなりり声を聞いたマナ、キャス、シックスの3人は、われに返り、それぞれの力――自然しぜんあやつ能力のうりょくはなつ。


火、水、風がすさまじいいきおいでクロエへと向かって行き、アンの喉元を掴んでいた手がついにはなれた。


ルドベキアはそののがさずに、アンを抱きかかえて、突然ロミーとニコがいる方向ほうこうへと走り出す。


「おい、てめえら聞けッ!!! この場から一旦いったん退くぞ!!! クロエあいつと戦おうなんて思うんじゃねえ!!! 全員げることだけ考えろッ!!!」


そして、アンをかたかついだまま、ロミーとニコをひろって、大広間おおひろまから出て行った。


ルドベキアの号令ごうれいともに、マナ、キャス、シックス3人も、彼らに続いて大広間を出ていく。


その様子ようすを、グラビティシャド―は表情ひょうじょうくもらせて見ていた。


「あの男……ただの人間のくせにどうしてあんなに力強ちからづよいいんだろう?」


「それはね。彼があいするもののために動いているからよ」


クロエは、そんなグラビティシャド―とは対照的たいしょうてきうれしそうに身をじらせていた。


「う~ん、でもただの人間あいつとこっちじゃ、つき豆電球まめでんきゅうくらいのがあるんだよ。そんなちっぽけな存在そんざいなのに、まったこわがっていないなんて……。ママがあれだけの力の差を見せたっていうのにさ。ホントどうしてだが、理解りかいできない」


不愉快ふゆかいそうなグラビティシャド―のことを、クロエは赤子あかごをあやすように声をかけた。


今のグラビティシャド―ではわからないかもしれないが、そういうタイプの人間もいるのだと。


「そう考えてみると、ルドベキアあの男が一番厄介やっかいかもしれないわね」


クロエはそうつぶやくとコツンと床を踏んだ。


すると、れる地面じめんから土の土台どだいあらわれ、グラビティシャド―と共にその上へとる。


「じゃあ、追いかけっこを始めましょうか」

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