まさか …


【 3回裏 】 



「ストライクツー !」


北見はケースケに対しても簡単に追い込んだ。

153キロのカットボール2連続。


そう言えば大沢の時に内角高めギリギリに外れるカットボールを投げたが、それ以外は全てストライク。

6つの内、大沢以外の5つが三球三振。


ボール球を混じえず三振を取る。

しろくま打線はまずバットに当てない事には

勝負にもならない。



3球目。

154キロ ……外角低めっ。

またカッターだ。 


ケースケがうまく合わせた。

センター返し。


おっ !


ショート繁宮。


セカンドベース手前で弾む打球に難なく追いつく。

舞うような守備。

余裕のフィールディング。


・・・上手いな


だが ……

 

やっとバットに当たった。

アウトになったが、ケースケらしいバッティングだった。



「怪我してます」


優深の囁くような小声。



「えっ、怪我 ?」


・・・なんの話 ?


「右足の太ももの打撲です。昨日室内練習場でバントの練習中、ボールが足に当たってトレーナーと医務室に行って、そのまま帰宅してます」


・・・誰の話 ?


恐らくすっ惚けた目を向けたのだろう。

優深が表情を曇らせた。


「三枝選手です」


「どうして ?」


「どうして ? タカさん心配してたから ……」


「そんな事が ……」


「えっ ?」


「どうやったらスマホでそんな情報が ?」


・・・先発投手の怪我 ……そんな極秘情報



「・・・と…友達がラインで …」


・・・いやいや


「その友達は ……どうやって ?」


「・・・わかりません …けど」


そう言って優深が固まった。


見る見る耳が赤くなる。


友達は ……


ウソか ?


・・・



まさか ……





〜 優深ちゃんが言っていたわ 〜


〜 タカさんはいつだって不正義と闘ってるよ…って 〜


〜 いつも弱者の味方なんだよ…って 〜


〜 タカさんが命掛けで、少女を救った…って 〜



・・・



・・・ハッキング ……か



ドームの防犯カメラに侵入したのか ?


カズの怪我の確認 …そんな事の為に ?



室内練習場にもカメラはあるだろう。

通路やドームの出入り口にも当然ある。



“ インフォーマント ”


俺の携帯の位置情報が漏れている事を島に伝えた情報提供者。


あの時、何故俺を守ってくれるのか不思議だった。

俺と島の関係まで知っていた。

俺にとって、願ってもない助け舟だった。



“ 下村貴史さんのネットワークは必ず私が守ります ”


“ もしかしてローティーンじゃないか …… ”


“ でんきねずみの口癖なんだ。道徳でそう習いませんでしたか ? って言うのが …… ”



“ でんきねずみ ”



10000個限定のレアもの。



ピカチュウのテニスボール。





コータのバットが空を切った。



「ストラックアウト !」



また連続三振。

3回を終了して、8奪三振のパーフェクトピッチング。


北見が小さくガッツポーズをしてマウンドを降りる。




・・・全部 …優深だったのか

 


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