第60話 イナズマキック
ケンタウロスが早々と一人のオーガを倒し、まだ戦闘中の仲間に加勢するのかと思いきや即座に方向を変えると、叫ぶ。
「ウォック様! 私はこれよりペイトン殿の方を見てきます! 旗色が悪ければそのまま加勢します故!!」
「ご苦労!! 頼むぞ!!」
「なっ……!?」
その発せられた内容に驚いたのはシュテン、戦いに加わらず遠く離れた地で戦っている仲間の方へと駆け出すという行為を目の当たりにして、頭に血が上るように眉を吊り上げ、相手を挑発した。
「おいおいウォックゥ!? 今の奴を共同で戦わせなくていいのかァ? ゴブリンやハーピーがおっ
そう叫びながら逆袈裟に振り抜かれる大鉈、それを両手で強く握りしめた槍を使い再度力を試し合うように受け止める。
「問題はないな、むしろお前の仲間を気にしてやれ」
アナスタシアが鉈の刃を滑らせるようにいなすと、地面から振り上げられる槍の剣先をシュテンは上体を逸らし回避して、顎先を掠めるにとどめた。
そこから続くようにして、再度壮絶な突きの連打に襲われる。
以前に対峙した時よりも上がっているその刺突の速度に苦戦しながらも、シュテンは初撃の突きを避け、次撃の槍を素早く戻した鉈で弾き、その攻撃を繰り出してきた槍の戻り際を狙い、一歩前へと踏み込んでアナスタシアへと蹴りを見舞う。
馬の部位の胸先へと突き刺さった鋭い一撃、骨を砕く威力の手応えを感じたシュテンが牙を見せつけるように笑みを浮かべた。
だが、その一撃を意に介さず、表情を一切変える事なく空いている左手を握りしめ、その暴力に真っ向から対抗するように高い位置から振り下ろすようにしてシュテンの顔面を捉える拳を繰り出した。
鈍い音が小さく響き、にやけた表情を浮かべていた事で顔を出していた牙をへし折った。
両者が力と力を爆発させるように、槍と鉈を激しくぶつけ合う。そして少しでも隙があるとこのように膂力を惜しまず使い、殴る。
一進一退のようにしてお互いが有効打を入れられないまま、剣戟が止むことはない。
緑色の肌をしたメイタルという名前のオーガはいい加減に潰れてくれないかと言わんばかりに嘆息し、魔法を何度も撃ち込み体のあちこちが焦げ付いている目の前のハーピー達を睨みつけていた。
彼女が忌々しげに見つめているのはあの鳥共の足につけられた白銀の装甲具。
彼女が鳥を嬲る時によく使っていた連携魔法はまず風の魔法で相手の鳥の動きを止め、本来はそこに氷の刃を使い体を切り刻むという物。
だが相対している鳥達は、風の魔法で身動きが不十分になった中空に氷の刃を飛ばしても、その刃だけは喰らうまいと蹴り飛ばし鋭く尖った氷を易々と砕いていく。
不意を突くように後方から刃を振るっても、もう一匹がそれを庇うように蹴り砕き、ならばと二匹同時に後方から刃を飛ばしても、両者が庇い合うようにして、死角からやってくる氷刃を蹴り砕く。
他の魔法を試してみても空へ大規模な風を起こしている為、火は威力が弱まる上にその風の影響で遅々として進まない為使えない。
風の刃はハーピーに読まれるので避けられやすい、さらにその白銀の装甲には影響がまるでない。
他に水の弾丸も、石の礫もその白銀の足にはまるで有効手段にならず、攻め手といえばその装甲にはまるで変化がないが、肉体的なダメージを与えられた雷の魔法。
必然的にメイタルの攻撃手段は雷一辺倒へとなってきた。
それでも負けじとハーピー達は荒れ狂う風を読み、一気に肉薄すると、鋭利な爪を振り翳す。
それを棒術で払うように追い返したところへすかさず風の太刀が鬼を襲い、追撃を許さない。
ダメージ、それ自体はまるで負ってはいなかったが、メイタルは「羽音を出す蠅が」と小さく呟き、苛立たせてくる相手を睨んでいると、黒いハーピーが笑顔を浮かべて隣のハーピーと会話をしている。
「ふぅ、やっと戻ってきてくれたわ。もう、ルゥシアは後で叱ってやりましょうね」
「何してたんでしょうね、あの子……」
そうして二羽の鳥が肉薄するでも、距離を取るでもない、中途半端な位置を保つようにして翼を羽ばたかせている。
「うるさい蠅だよ本当。とっととくたばってほしいね」
「こちらもいい加減疲れました、そろそろ終わりにしたいですね」
「イェルム様、いけるみたいですよ」
ええ、と頷いた傍から足を振り抜いた。
何度も見せられた攻撃だ、当たるべくもない。
「またそれか、もう飽きたよ……」
再三繰り出された風の刃を読み、数歩下がりそれを避けると、自分が先程まで居た場所に振り下ろされた刃が砂塵を空高く巻き起こしていく。
それを回避し、反撃に。と考えていた思考を体の感覚が阻害した。
「……ッ!?」
確かに避けた。その証拠に目の前の地面には魔法がそこに着弾したことを教えてくれるように抉れている。
なのに気づけば、自分の肩には鋭利な刃物で切り払われているような傷が広がっていた。自分の血が激しく服を染め上げていく事に混乱するように、相手へと叫んだ。
「どういう事だッ! 確かに避けたのにッ!?」
「フフフ、どうしてでしょうね? 頑張って考えてね」
「やーいやーい! これでも喰らえ!」
そうして、緑髪のハーピーが接近し拳大の石を落とした。先程撃ち落とした際に拾っていたのか、とメイタルは混乱する頭を冷静にさせ、投げつけられた石を杖で叩き返した後、雷の魔法で追撃を入れる。
「イギィエエエエエ!」
「フン、うるさい蠅め……、ツッ!?」
雷に打たれ、地面に転がりピクピクと痙攣するように焦げた鳥を鼻で笑った時に、今度は気づくと背中から焼け付く痛みに襲われる。
黒い鳥は何かをした素振りはない。風の魔法を避けた際に下がった距離を詰めるように少し近づいているだけ。
「エンツォ、まだやれるわね?」
「ええ、私まだまだ頑張れますよ!!」
雷の魔法を重ねるように喰らっても、緑髪のハーピーの心と体は砕けない。
そして焦げた顔で笑顔を浮かべるように、再度空を滞空していく。最初に巻き起こした大規模な風の魔法の効力が尽きてきたのか、不可解な攻撃で集中力が途切れてきたのか。徐々に自由を取り戻すように空を自在に飛び回り始めているハーピー達。
憎々しい、腹立たしい、憎悪の感情が募り、耳障りな羽音が更に近く、強く耳に入ってくる。その音がまたメイタルの逆鱗に触れていく。
「ああ、もう! 面倒だ!! 一気に焼き鳥にしてやるよ!!」
効果の薄くなった風の魔法を解き、自身の体の周りに幾十の炎を浮かび上がらせた。
「あら、不快な風がなくなりましたね。よろしいのですか?」
クスクスと笑い、相手を見下しながら口にするイェルム。
「何がだ! とっととくたばれ!!」
その挑発に乗るように炎の連撃を繰り出していくメイタル。
攻撃を繰り出す内に、彼女はその炎が生み出した光によって晒された、自身に折り重なるようにして地面に映し出されている影を見た。
そこにあるのは自身の物と、もう一つの何かの影。
それに気付いた時に、彼女の背中には冷たい物が流れ落ちていく。
それは前にいるハーピー達ではない、別の何かが自身の後ろにいる。
それを示唆するように、自分の影とは別に移し出されている何かの影。高まる動悸を抑え、勢いよく後ろを振り返るとそこにいたのは。
「ハーピー……っ!?」
炎の灯りで照らし出された空のハンターが羽根を大きく広げそこにいた。大きな黄色の双眸を広げこちらを無表情で見つめ続けて逃すまいとしながら。
そして一瞬にして目の前から消えるように飛び去り、その去り際に顔を切り裂かれる。
その痛みは軽い、耐えられる。傷の程度を確かめるように手を当てる。しかし、再度自身の足元に風の刃を振り下ろされ意識をそちらに向けさせられた。
「あらあら、タネがバレちゃったかしら? でももうあまり関係ないかしら」
「こ、のヤロウ……!」
傷自体は浅い、だが目を狙うように引っ掻かれた為に片目が使えなくなった。それを抉り続けるようにエンツォが迫り、爪の連撃を見舞う。
「オラオラオラー!」
「くう、うぐっ……」
死角から強襲される攻撃で生傷が増えていく。だがただでやられる程甘くもない、返しとばかりに繰り出された、ハーピー独特の細い足を掴み一気に地面に叩きつけた。
「いぎゃっ!」
「死ねぇ!!」
衝撃で呻く鳥に向かい、先程魔法で切断され鋭利になった杖の先で串刺してやろうと全力で振り下ろす。
だがそれはやはり許されず、武器を握った腕を音もなく切り払われる。
目の前で頭を押さえてのたうち回って騒いでいる鳥でも、すぐ近くで飛び続けている蠅でもない、問題なのは音もなくやってくる奴。
その攻撃を喰らって視線を送っても既に姿はない。そして目の前のハーピーも既に中空に戻っている。
絶妙なタイミングで、効果的に繰り出してくる攻撃にメイタルがとうとうキレ、大きく叫びながら残りの魔力、体力全てを注ぎ込むようにして大きく広がる炎の壁を生み出した。
「殺す! 殺す! 殺す!! 絶対に殺してお前らを喰ってやる!!」
傷を入れられた腕を握り、そのまま潰してしまうのではという程、体から怒りを発してハーピーを睨み、そう言い放った彼女の周りには次々と炎の塊が生み出されていく。
「あらあら、怖いわ。それに危ないわね。エンツォ、下がっていなさい」
「はい! 後は頼みましたよルゥシアー!!」
微笑んで、健闘をしてくれた仲間を労うイェルム。空高く叫びながら後退するように身を引いていくエンツォ。
そしてその壁の中から連続して飛来してくる炎の弾をひらりと避けながら、イェルムは大きく三回ほど足を振り抜いた。
一つ目の刃は襲い掛かる炎弾と相殺し、二つ目の風の刃が壁に突き刺さり、炎壁を切り裂くと、三つ目の刃がその切り傷を更に大きくするようにしながら、十字に切り裂いた。
それを終えたイェルムは静かに大地へと足を下ろし羽根を休めた。
「そんな魔法が届くかボケ!! 大人しく焼き鳥になれやァ!!」
「フフフ、これで充分ですよ。貴方はもうオシマイ」
「何ッ……!?」
傍と気付くと上空から、先程までと違う音がする。
それは空気を切り裂く『何か』。それが自分自身に向かってやってきている。そう認識できたのはこじ開けられた炎の壁の奥へと目をやり、その星空から迫る影を見たからだろう。
超高速でこちらに、空から狙いをつけて向かってきているのは最後に現れたハーピーだと瞬時に察知したメイタルは、一際巨大な炎の弾を撃ち出し迎撃した。
「消し炭になれ!!」
その速度の暴力を活かし、自身をまさに弾丸のようにして迫るルゥシアが炎に包まれ、緑のオーガは勝利を確信し嘲笑う。
だがその勝利は一瞬の幻だった。
「ちょいさぁー!」
炎の中からオーガに伸びていく煌めく白銀の足。霧散する火炎。メイタルが生み出した炎では止める事など出来ない雷光のような弾丸が食い破るように緑のオーガの首に噛みつき、大地に突き刺さる。そしてその勢いのまま疾駆するように地面を削りながら駆け抜けた。
一定の距離を行くと勢いが弱まり、次第に止まる。その超高速の捨て身の蹴りで引き摺られ、大地に擦りつけられたオーガの血と肉が地面に軌跡として残り、威力を物語っている。
「あちゅっ! あつーい!!」
体を覆う羽毛をチリチリと燃やす炎を消すため、地面を転がる鳥の横で、ほぼ虫の息になり空を見上げているオーガは、最後に燃え上がる殺意でその鳥へ一撃見舞おうとして立ち上がり、手を伸ばす。
振り絞るように手の中に生み出した鋭い氷柱を突き立てようとした時、自らを苦しめ続けた白銀の足が横から伸びて、蛮行を阻害された。
「フフ、大人しくしてください?」
「……ッ! ……! ……ッ」
最後の行動すら濡烏のハーピーと、その白い輝きに邪魔をされ、睨み続けて潰された喉で息を吐き出すメイタル。
彼女はその後、ぷつりと糸が切れるようにして命が絶えた。
ぷすぷすと音を出しながら羽毛が燃えてしまったルゥシアと、そこに降り立ってきた黒焦げのエンツォ。
自身の体を一度眺め、隣に来た友、真正面の母を眺めておお、と声を漏らしたルゥシアが輝くように笑う。
「みんな黒焦げだね!」
元気にそう声を出した直後に、戦線をいきなり離れた事への罰として頭頂部にイェルムの拳が振り下ろされ、ルゥシアは号泣した。
怪我を負いながらも、致命的な深手はないイェルム達はそれでも焼かれた翼を気遣い、暫く飛ぶことを諦めて羽根を休める事とし、ゴブリン達始めとする仲間達の攻防を見守っていた。
「皆、がんばってね」
「がんばれー!」
「ふぁいとー!」
大きく声を出し騒がしく声援を送る。その行為と声に一番に反応したのは、仲間を更に一人仕留められたオーガ。苛立ちを隠す事なく牙を剥き出しにして正面のリザードマンを威嚇する。
怒りをそのままぶつけるように、荒れ狂うように剣を振い、怒涛の攻めを見せる黄色の肌をしたオーガのシュテル。有効打を多く入れられ、防具の隙間、主に関節部を狙う攻撃を中心に、白銀の装甲がない部分を狙われるゼルシュ。更に巧な攻めを見せるオーガは、首や、胴、手先足先などをピンポイントで狙い、狙いを悟らせないようにしている。
「むう……」
「ヒャヒャヒャ! とっとと死んでくれよ、なぁ!?」
そのオーガは相手の攻撃を喰らっても省みる事をせずに攻撃の手を緩めない。
ゼルシュが一旦距離を取ろうと、後方へ飛ぶとそこを待ち構えていたと言うように、シュテルは目を見開き、刀を横に振り払う。
「グッ……」
そこを突け狙うように飛ばされたのは、仲間のケンタウロスやハーピーもよくやっていた風の剣。剣圧に風魔法を乗せ、相手を切り裂く魔法剣だと即座に理解したゼルシュ。
ここに来て出された奥の手と言わんばかりの攻撃を、回避すら出来ずに体で受け、装甲に守られていない部分が深く斬られ、溢れるように血が出てきた。
「ヒャーハッハ! そら! そら! そら!」
相手の血を見て、興奮したのか更に目を輝かせるように魔法を放ち、動けない相手を嬲るオーガ。
刃の嵐が静まる頃には、いくつかの深手を負い、それに伴い大量の出血に体を染められていた。
大きく息を吐き出し、槍を地面に突き立てながら少し笑うようにして、一度自分の体の傷を確かめるように見た後に、再度相手を見据えるゼルシュ。
「参ったな、これではホリに心配されてしまうかもしれない」
「あぁ? 二度とお喋りできなくしてやるから安心しろよ」
リザードマンの言葉に挑発して返すオーガ。
笑いの感情が少し強くなるように、首を横に振りその挑発を流す。
「正直驚いた、おかげでこれ程の傷を負ってしまったしな。だから私も……」
彼が言いながら、槍を強く握りしめる。
そして浮かべていた笑顔をかき消し、相手を睨みつけて声を発した。
「奥の手を見せてやる」
そう言葉にし、槍に魔力を込める。
その発せられた言葉と魔力を起因として、不思議な事が起きていく。
ゼルシュと、それに対しているシュテルを包むようにして水の膜が生み出され、更にその膜の中に水が継ぎ足されるように水位を上げていく。
「なっ……!?」
「余所見をしていていいのか?」
自身に降りかかっている現象を見渡して確認しているところへ、怒涛の攻撃を繰り出していったゼルシュ。
先程まで重ねていた攻防の時よりも、突進の速度が上がっている。
そして槍捌きも一際速く、鋭く、重い。
反撃に相手の横の腹を狙う攻撃を狙うも、その腹に届く頃には敵の姿は刀の範囲の外。
「手を抜いていた訳じゃないぞ? これをやると疲れるんでな。やりたくないんだ」
更に増していく水位を楽しむように尻尾で水面を遊ぶように漕ぐ。
シュテルは既に膝の下の辺りの高さまで上がってきているソレを止める為に、生み出した原因へと跳びかかるようにして叫び迫った。
「ふざけんなよォ!! トカゲヤロウがッ!!」
刀を全力で振り下ろすも、相手は消えるようにして移動を済ませている。
リザードマンが更に魔力を槍に込めるのを見たシュテルは、一気に増されていく水位にとうとう腰まで浸かってしまった。
ここまでの水位に迫られると、自由に動き回る事も出来ず、更に別の恐怖にも襲われる。その水位は止まる事なく、胸の高さに至る。
恐怖に心を支配されない為に、大声を張り上げ、じゃぶじゃぶと水を掻き分け相手の元へとにじり寄ろうとするも、その相手は水中へと姿を消すと全く別の所から顔を覗かせる。
弄ばれるようにされ、迫る水の事も相成って冷静でいられないオーガが水面に出てきたその顔に向かい、水面を這うように風の刃を振り抜くが、相手が再度水の中へと消えてしまう。
そして次の瞬間には、自身の横から槍の雨に襲われた。
視界のぼやける水の中から、自由自在に、そして的確に自分を狙ってくる攻撃を避ける事も出来ず、片腕と片足を深々と貫かれ、辺りの水が赤く染まる。
「くそ、クソ、糞ォ!! テメェ! 卑怯だぞ!!」
傷を押さえ、流れ出る血を少しでも抑えようとしながら、相手のいた方向へとそう叫ぶが既に姿はない。
次はどこから来るのか、何をしてくるのか、まるでわからない。
その恐怖に心を支配され、錯乱するように声を出しながら、怪我をした腕で水面を叩いていく。
「卑怯ですまんな。完勝せねばならない、と親友と約束しているんだ」
後ろからそうかけられた声に振り返ろうとした時、がしりと頭を掴まれ力によって押さえ付けられる。
そしてその言葉は、相手が既に勝負を決定づける一撃を放った後だった。
「あああっ……!?」
確認させるように、掴まれた頭が向けられた方向には胸から飛び出ている槍。
水中の、それも辺りの水が赤く染まっているが確かに見えるその映像と、認識してから襲ってくる痛み、それに震えるように体が反応するとさらに後ろから言葉が飛んできた。
「トカゲの戦い方も、中々の物だろう?」
そうして水の中に沈んでいく相手を見守り、水の膜が弾けるように割れると周囲へ溜まった水が流れ出し、辺り一面を濡らし地面を別の色へと染め上げた。
槍を携え、その力を行使した結果、体が重い疲労に包まれているゼルシュは大きく息を吐いた。
そんな彼の隣で何やら体を滴らせているハーピーがいる。
「ん? 何をしているんだルゥシア」
「お? おー、さっき火傷したから水浴びしようかなって!」
死闘を終えて、自身の切り札の代償による疲労に加えて、常に元気が溢れる相手に絡まれてゼルシュは更に大きく嘆息した。
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