デオドラント
オードトワレの空の瓶
君も私も根は素直だったね
染色体は強く香るけれど
君はそれを真空パックにしてにっこり笑ったんだ
私は嘘を香水にして君と共鳴したふりをしたんだ
君が無臭だったなんて記憶があるけど
それはそれでおかしな話だったわけで
本当なら快感になる染色体の香りがするべきだったのにと気づいたら
自分をペテンにかけた記憶のハリボテが剥がれた
そうだかつて一度だけ
一度だけ君から強い香りがしたんだ
普段は無臭の君からは信じられないような世間一般の香り
私はそれが大嫌いで
せめて大好きな君だけは違うと信じ込みたかったから
嘘でガスマスクを造って君は無臭だったと結論付けたんだ
けれどそんな小さな齟齬はいつしか無視できなくなって
私は君にそのマスクを投げつけて大怪我を負わせたんだっけ
君に褒められた嘘の香りはもう空き瓶になってる
もう要らない
何もない私の香りだって誰かにとっての香水に為り得るんだ
ふと今すれ違った後ろ姿を振り返る
地面に脱臭剤の小さな小袋が落ちている
あ、
いや、届けなくていいか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます