第2話忍びて曰く

 偽死撃討ぎしげきとう


 血濡れの雨が麻痺まひを呼び寄せた。

 空回りさえ失う忍、そこに横たわる。

 息を殺しつ影潜む。

 その片手には刃在り。

 目を細めふと気を緩めれば、嗚呼ああ、死んだ物が手裏剣しゅりけんを脇腹に飛ばし刺す。

 死に顔はわろうて静か語る。

 手裏剣に潜んだ毒が体をあっという間にまわり、口から血を吐き出した。

 聞こえぬ笑い声、雨響く。

 風唸り、神さえいみじう鳴り、酷い末路だ。

 秘伝の毒は必ず殺す。

 その体をむしばんで、いつか其奴そやつを奪う。

 それがどうも早くに今。

 身を伏せ腕を立てども足立たず、唸るは風のみとならず声さえも。

 忍、その目を開き血を拭う。

 死んだ物は偽りか。

 しんぞうさえ止めさせて、油断を待ったが笑う顔。

「そう簡単に殺せるとでも?」

 赤い瞳と黒い瞳に射貫かれて、最期一つを上げた。

 それを踏んで見下すは、日ノ本一の戦忍 なり

 さぁ、見よこれを、この先を。

 忍一つで終わらせぬ。

 さぁ、見よそれを、その後を。

 忍処の次なるは。

あなどるんじゃないよ。我がお武家様は、天下を取るんだから、さ。」

 ニィとまば影に消え、ただそこは吹き荒れた血濡れが残るだけに御座いますれば。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る