REBUILD





“この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ”










ようこそ

お名前と生年月日を入力してください


…シン

星見シン

19951004


…サヤカ

有栖沙也加

19951001


…シンヤ

常磐信也

19960327



名前・・

この世界で最初に君の存在を見出した他人から

君に与えられた最初のアイデンティティ


生年月日・・

人智を超えた神様やら世界から

君に与えられた最初のアイデンティティ



あなたのお名前は?

生年月日は?性別は?血液型は?



あなたのスキを入力してください


スキな食べ物………

小さい頃に、見かける度に「これは何。」と、指を差して一々お母さんに尋ねていたようです。

沢山の種類があることに興味があったらしくて。

それで小さい頃から馴染みがあるんです。これ。


スキなこと。アイドル。

小さい頃にテレビで歌ってたあの人。

私の世界の中で、誰よりも一番に輝いてた。

私もあの人みたいに、輝いてみたい。

と、そう強く願った。


スキな物。ヘッドホン。

付けてると安心する。自分だけがそこに居る。



自分と他者を区別するための名前

生年月日は?性別は?血液型は?

全て、自分と他者を区別するためのモノ



この、赤くて丸い物を何と言うんですか。

それは林檎です。


この、紫色で花が咲かない物を何と呼びますか。

これは無花果と呼びましょうか。


僕ら人間は世界に存在するあらゆる物に

そこに存在する意味を見出し

隣に存在する物との区別するために名前をつけた

その物の特徴や性質、情報は人間が見出し

情報を持たなかった世界はやがて情報に埋もれた


それが科学。

私たちは、よく分からない物が怖くて仕方ない

自らに襲いかかる未曾有の事象が怖い

そこに生えている意味の分からない物が怖い


名前があれば私たちは安心する

自らの監視下に置いた世界の中で安堵する


自らと他者を分け隔てる

自らの存在が、ここに居ることを確認する



それが科学

私たちは、科学によって存在を証明した

私たちは、科学の最終地点で滅ぼされる

それは呪縛



星見シンって、友達いないよね。

有栖沙也加って、実は彼氏いるらしいよ。

常磐信也って、昔いじめられてたんだって。


有栖沙也加 「これは何…?」


自分とは違う自分。自分の知らない自分。

「本人も知らない僕が出来上がっている」

目の前に違う自分が存在するようだ


嘘と真実


現実の自分、ここに居る。

虚構の自分、世界に居る。



目の前に突如、人だかりが出来た

目の前を通り過ぎていく人々は皆

各々の目的に向かって歩いていた


ただ、おおよそ彼らは

私の向いてる方向の逆に向かって歩いていた


それは、私の行く手を止めるかのように

波にさらわれていく自分

少し先に、もう一人の自分が居て

そいつは、皆と同じ方向を向いていたよ

風は、確か、向かい風だった


…ただ、その街で嘘は自分だけだった

自分だけが、そこには存在していなかった



“アイデンティティ・クライシス”


「ダメなんだ、いくら自分を主張しても、誤読を訂正しても、彼らは何も分かっちゃくれないんだ。」


「どうすれば、いいんだろうか?」



世界は、物凄い速さで君を追い越していく。

世界に存在する全ての物は、事実、生きていて、

世界も君もその例外ではない。


一瞬、一瞬で常に変化していく世界。

目前を見通せない視認性の悪い未来。

現在はただ、最前線の真新しい過去。


そんな世界では、

君はアイデンティティを失う。

世界の変化に、君が追いつけていけないから。



・・・では、

どれほどの速さで生きれば、

きみにまた会えるのか。


世界に自分を確保する為

君の存在にまた出会う為


“時に、それは光の速さに達することがある”


眩暈、立ち眩み、

私は、私の為に、


『その時、私は強く願った。』



【 第8話 REBUILD 】



“この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ”


生きるとは、変わること。

生まれ変わるには、一度死ななければならない。


再構築とは?

生きること、死ぬこと、そして生きること。



つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る