第10話 名乗りを挙げろ
空が、茜色にそまり目の前の観覧車からは、幼少期にはこんな場所に来た事が無いにも関わらず、何処と無くノスタルジックな雰囲気を醸し出して、他の煉獄の住人の笑い声が不快に感じなくなって来た頃、
僕が、遊園地のベンチに座って休んでいると
聖が、戻って来て僕に飲み物を差し出した。
「大丈夫ですか〜
旦那様〜」
聖が、僕の顔を覗き込むようにしてそう言うと、
僕は、飲み物を受け取って聖を安心させる為に立ち上がった。
だが、立ち上がりながら、顔を覗き込む聖をもう少し見ていれば良かったと少し後悔した。
「もう、大丈夫だよ
ありがとう」
僕が、そう言うと聖は、
「いえ、これくらいなんでもありませんよ!」
と微笑んだ。
可愛い。
僕が、そう思いながら飲み物を飲んでいると
「やあ、やあ、我こそは
三随臣を引き連れ、鬼を屠りし
吉備津彦命である
煉獄の住人よ
いざ、尋常に勝負!」
と高らかに叫ぶ声が聞こえた。
僕は、急いで声のした方向へ目を向けるが
何もそれらしい物は無かった。
「演劇か何かでしょうか?」
聖がキョトンとしてそう言うと
「いや、本物の侍だよ
名を挙げるとは、古風だがね」
と渋い男の声がし、
突如、僕らの前の何もない空間に日々が入り、バキバキと音を立てて崩れた後、そこが宇宙の様な暗黒の空間に変わり、周りの空間と隔絶するかの様に、紫色の光を放つ境界線が入ったワームホールが現れた。
ワームホールからは、ゴシック式甲冑の胴体に大きな紅い十字架が描かれた物を見に纏い、腰に二振りの日本刀と、複数の弾納の様な物をつけた戦士を筆頭に、SFで出てくる様な銀色の、生物の面影のあるスマートなフォルムで、表面に血管の様に流れる青い光を放つラインが付いた繋ぎ目の見えない全身鎧に、鎧と同じ色のレーザー銃を持った百人はいるであろう戦士と、その後ろから、百人の戦士と同じ様なデザインだが、豪華な作りで、青いラインが黄金の輝きを放ち、鎧の上にマントの様に灰色のにボロ布を付けた男が現れた。
それを見て僕は、聖を庇うように前に出ると
右手の指に付けた猿、犬、蛇が唸り声を上げている所が装飾として付いている銀色の三つの指輪を前に差し出す様に拳を突き出した。
すると、それぞれの指輪から紫色の魔法陣が現れ、
僕の目の前に、ハヌ、ルベ、ルトが完全武装で現れた。
ハヌは、黄金の
ルベは、漆黒のプレートアーマーに紫色の炎の装飾が鎧中に施されたとても中に女性が入っているとは思えない程の大きさの太めの鎧を纏い、その兜は顔を完全に覆い、大きな牙を見せた猟犬の顔の形になっており、猟犬の目からは、見たものを恐怖させる生気を帯びぬ冷ややかな白い光が放たれている。手足を覆う部分は、鉤爪がついており、腕はゴリラの様に太いが、足はチーターの足を太くした様な素早さを感じさせる物だった。左手には、犬歯の様な形のスパイクが上下の端に二つずつ付いて大犬の口の様になっている丸盾を持ち、右手には、人間代の鋭い馬上槍を持って堅牢な戦士の威圧で敵を後ずさられた。
ルムは、胴体に緑色の輝きを放つ大きな生々しい一つ目の装飾が施された白銀のプレートアーマーを見に纏い、それには鎧に巻き付くように黒い大蛇の装飾がついていた。鎧のにはあちこちに噴射口の様な小さな穴が空いていた。兜は、顔が見えるタイプだが、顔を守るように蛇の長い牙が顔の前を胴体に向かって伸びていて、後頭部や側面に無数の緑色の生々しい目の装飾が付いている。手には、巨大なハンマーを携え、そのハンマーには、腐食した後の様な染みが付いた電の装飾が施されている。
三人は、僕の前に現れるとルベを中心に僕を守るように陣形を組んだ。
僕は、それを確認すると
周りの人間に避難するように叫んだ。
「巻き込まれたくなければ逃げろ!
僕が、時間を稼ぐ!」
僕の掛け声に慌てて周りの煉獄の住人が遊園地の出口に向かって走ったが、敵はそれを襲う様子は無かった。
僕は、煉獄の住人の避難を確認すると
それは、青薔薇が巻き付いた装飾が施された漆黒の玉座で周りには、紅と黒の炎のが溢れ出ている。
僕はそれに腰掛けた。
そして、待ちくたびれた様な様子で待つ敵に向かって
「わざわざ、此方の準備が整うまで待っていてくれるとは随分と礼儀正しいじゃないか」
と挑発する様に言った。
すると、紅い十字架の甲冑の男は
「嫌なに、儂も生前ならば攻撃していたが、
此度は、此方が圧倒的に有利なのでな
戯れに時間を与えただけよ」
と子供に話しかけるような嫌みな優しさを含んだ口調で言うと
二振りの刀を引き抜いて、長い方を此方に向けながら
「では、始めるとしよう
あの男に習い、儂も名乗りでも挙げるとするか」
と言い、大きく息を吸い込んで
目を見開くと
「遠からん者は音に聞け!
近くばよって目に見よ!
我こそは、最強の名を冠した無双の剣豪
新免武蔵守藤原玄信也!
いざ、尋常に勝負!」
武蔵がそう叫ぶと大気が震えるような威圧が僕を襲い、
武蔵の後ろにいる兵はそれに感化され
「「「「「うおおおおおおッ!」」」」」
と叫んで空に向かってレーザー銃を放った。
すると、武蔵は凄まじい脚力で地面を蹴り、
一瞬の内にルベの目の前まで踏み込んで、大型の鎧に斬りこんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます