第39話 【Side:ステラ】戦士の形

 死を直感した瞬間、突如眩い光に目が昏む!瞼を閉じても分かる眩い光が収まり、ゆっくりと目を開ける。


「首が……繋がってる。」


 全身から嫌な汗が出ていたが、背後の死神が離れたところにいるのを確認し安堵した。


「あの仮面の女魔剣士に礼を言うんだな。まさかこの国で神聖魔法『ターンアンデッド』を見るとは思わなんだ。」


 首が繋がったわたしに首が繋がってないデュラハンのジョースティンⅡ世が説明をしてくれた。


 仮面の女魔剣士ゴールドに目をやると、ゴールドはわたしを一瞥しただけで、視線を外し周りを見回す。


 残り1名をどうするかで再び膠着状態になるが、すぐに場が動き出す。


「もう、面倒臭いのは御免だ!皆殺しすればいいんだよなぁ?」


 オーガの狂戦士バルバルが一番近い巨人族の5370に襲いかかる!5370も笑いながら迎え撃つ!!


 ゴブリンの暗殺者は手負いのマルティムに襲いかかる。


 わたしを襲った死神は動かない。神聖魔法を使うゴールドを警戒しているのかもしれない。


 周囲を伺うわたしのところにリザードマンのゲランが近づく。


「次はリザードマンさんか。」


 わたしは意識の無いシールから離れ、ゲランとの戦いに備えようとするが、ゲランの視線は横たわるシールに向いていた。


「もしかして……気を失ってるこの魔女を殺す気?」


「ん?当たり前だ。こいつは俺を愚弄したのだ。殺さねば気が収まらん!!貴様は最初に愚弄されたんだろう?何故殺さぬ?誇りは無いのか?生きている以上、意識があろうとなかろうと殺すまで。やらぬなら俺がやる。どけい!!」


「意識が無い相手を殺すのは卑怯じゃない?」


 リザードマンの表情はよく分からないけど、キョトンとしている気がした。


「何を言ってるんだ?次やって負けたらどうする?いま楽に勝つ方が良いに決まってる。戦場に出たこと無いのか?人間は無知だな。」


 なるほど、合理的にただ勝利を求める戦士なんだ。逆にわたしが戦士として甘いのだろうか。戦いとは死ぬか生きるか。勉強になるなぁ。


「でも、わたしにはできません。なので、あなたと戦います。」


「お、そりゃ構わないが、理屈が分からん。」


「わたしはこの魔女の命までは取りたくないし、あなたに譲る気もないってこと。この魔女を倒したのはわたし。それを横から獲物を奪うような卑怯者なんて大したことないよね。分かった?この卑怯者!!」


「理屈は分かった。我を愚弄した貴様も殺そう。」


 ゲランは手に持つ曲刀を舐めながら、目の前の獲物を舐め回すように見据える。正直……あのベロベロ舐めた刀で斬られるのはイヤだなぁ〜。


 先手必勝とばかりにわたしからゲランに襲いかかる!まずはゲランとの体格差があるので、ジャンプからの棍棒を振り下ろし攻撃!!


 甘かった。着地した時、手にした棍棒は半分程で切断され、わたしの前髪が少し切れていた。


 ゲランは曲刀を居合いのようにわたしの攻撃をギリギリまで見定めた上で、棍棒の攻撃に合わせ、逆に棍棒を切断したのだった。


「避けたのか、人間。こりゃ驚きだ!いまのでお前の脳みそだけ転がってたハズなんだかな。」


「エゲツない攻撃だね。頭の半分を切断するなんてさ。」


 前髪の切断だけで済んだのは、危機一髪で頭をそらしたからであった。実際には『危機三十髪』くらいか。


「そうか?そのまま脳みそ喰えるから楽だぞ。ゲッゲッゲッ!」


 なんたる合理主義!まさかリザードマンがこんなに合理的だなんて思わなかった。


 次はゲランから襲いかかってくる!左手の曲刀による乱打だけでなく、右手からの拳撃、足からの蹴りや尻尾からの殴打と全身を使った無駄の無い合理的な攻撃だった!


 武器を失ったわたしは左手の盾でゲランの曲刀攻撃をしのぐが、曲刀以外のラッシュは避けられず、一撃一撃が重い攻撃に吹き飛ばされてしまう。


 ゲランは悠然と近づいてくる。


「水よ炎の門を潜り、変わりしその姿を彼の者にまとわりつけ!『ボイリングウォータービット』」


 ゲランの周囲に急激に水蒸気が発生する。水属性のリザードマンにしてみれば水蒸気なんて目眩しぐらいにしか考えなかった。だが、


「ギャアアアッ!」


 突如ゲランが叫び声を上げて水蒸気から飛び出してくる。ゲランの体皮が変色し、かなりの痛手を被った様子が伺える。


 水蒸気は急激に高温となり、まさに熱湯を全身にかけられた状態となり、ゲランは全身火傷を負ったのだった。


「ごめんなさい、熱かった!?」


 ゲランは痛みを怒りに変えて襲いかかってきた!曲刀が更に強化され、盾以外で喰らえば豆腐を切るように身体はバラバラになるだろう。致命傷を避けるだけで手一杯で、細かな傷を負い出血していたが気にしてる余裕は無かった。


「いい加減しぶとい!人間に我が奥義を使うなど屈辱だが、これ以上は合理的ではないので仕方ない。受けろ『ズィーア・ムゥニィ』!!」


 目の錯覚か、ゲランの曲刀が青白いオーラを纏い、数倍は大きくなり襲いかかる!!


 回避が最善だったが出来なかった。後ろには気絶したシールがいたから。最後の魔力を防御重視に使う!


「風よ水よ、我が身を守る盾となれ!『ハイドロエアウォール』」


 先にミノタウロスの一撃を受け止めた複合魔法だ。しかし、ゲランの一撃はミノタウロスのそれを遥かに超える破壊力を秘めていた!


「がはっ!!」


 衝撃を抑える水と空気の層は一瞬で霧散し、左手の小さな盾で抑えられる威力では無かった。身体強化魔法が無ければとっくに身体は四散している。更に威力が増しており、長くは耐えられない。


「よくやった、人間。もはや貴様に怒りは無い。俺にここまでさせた戦士に敬意を表そう。さらばだ『カボチャの悪夢』よ。」


 曲刀が更に巨大化し押し潰しにかかる!


◇◇◇


 離れたところでゴールドと戦っていたキリコは、ゲランの奥義がステラを押し潰し土埃に飲まれる光景を目にする。


「ウソ!?ステラァーーーっ!!」


 ゴールドもゲランとステラの方を一瞥すると呟く。


「そこまでか。」


 キリコの本音が漏れる。


「嗚呼、ハンバーグが……」


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


散々コケにされてた敵を助けるとかお人好しにも程があるよ、ステラさん。戦いは非情なんだよ?分かってる~?(´-ω-`)


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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