第3話 春はキャベツ

お題:もうすぐ春、起承転結を崩さずに五百文字以内


春キャベツと言えば三月頃と思っていましたが、今年は二月の半ばからスーパーに入荷しています。雪が降らないね、というのが挨拶になるくらいの暖冬だからでしょう。確かに春キャベツらしくふわり、と軽やかな葉をしています。これは甘くて生で食べたらさぞ、うまいだろうと料理方法を考えながらの帰り道、友人のT君からLINEが入っていました。


T君と言えば都会育ちで二十歳の頃、ぼくの田舎にドライブした際に「考えてみれば野菜というのは畑で採れるものだね」などと言って皆に呆れられた男です。そう言えばあのときキャベツを収穫したのでした。T君はキャベツが畑で採れることを考えてもいなかったような男でしたが実に器用でキャベツの収穫方法を教えると、そつなく鎌でキャベツのそっ首を掻き切るのでした。そんな彼に不器用なぼくはなんとはなしに悔しい思いをしたものです。


LINEはそんなT君の長男が中学受験に合格したというものでした。写真のT君の長男は春を告げる通知を手に笑っていました。なんだかぼくも春が来たように嬉しくなり、今度、春キャベツを田舎で収穫してT君に祝いに贈ろうかと思っています。


※タイトルと改行込みで499文字である

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る