「祈り」
スマホアプリ「神様さがし」
そこに書かれていた廃工場に修は忍び込んでいた。
夏休みの昼下がり、工場前の電柱にはたくさんの花束やお菓子が置かれ、
修はそれを一瞥すると、立ち入り禁止の壊れた金網のあいだをすり抜ける。
工場の壁は大量のツタが壁を覆い、床のタイルはほとんどがヒビ割れていた。
外ではたくさんのセミの鳴き声が聞こえるのに中に入るとひんやりとして、
何もない、がらんどうの工場に、修は自分がどこか別の世界に来たように
感じていた。
持っているのはいざという時のスマホと懐中電灯一つきり。
先月買ってもらったシューズで地面に落ちていたガラス片を踏むと
「バリッ」と乾いた音がした。
探しているのは地下の階段。
懐中電灯であたりを照らさずとも、修はすぐに見つけることができた。
「安全第一」と大きく書かれた文字の下、事務室の横に階段があった。
日の射さない階段は真っ暗で、どこまで続いているかわからず、
修は思わず息を飲む。
でも、進まなければどうにもならないので、
修は覚悟を決めると懐中電灯のスイッチを入れて歩き出した。
幸い、父親の業務用の大きな懐中電灯は周囲をくまなく照らしてくれたので、
修は危なげなく進むことができた。階段は思ったよりも短く数分もしないうちに修は地下へと降り…そして、見つけた。
十畳ほどの広さの部屋、中央に据えられた小さな祠。
中には円錐形のよくわからない物体が荒縄で隙間なく巻かれており、
誰が何の目的でこれをこしらえたのか、小学二年生の修はもとより
誰が見ても、いや祠を作った者しかその用途を推察できる人間はいなかった。
しかし、修はそれに近づいた。
地下には水でもたまっているのか、歩くとチャプンと音がする。
そして、祠の前に行くと修は両手を組んで、こう言った。
「お願いします、妹を生き返らせてください。」
祠の近くで、チャプンと水の跳ねる音がした…
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