魔法都市殺人事件~誰が魔術師を殺したのか?(ショート版)

澤田慎梧

#01「魔法都市ライマ」

 群雄割拠の大陸ノーイーン。

 大小様々な強国がひしめくその大地に、異彩を放つ都市国家が存在した。


 ア=ライマ=ガス国。通称を「魔法都市ライマ」という。

 古代魔導王国の遺産の多くを受け継ぎ、魔術師達の自治によって運営される城塞都市だ。


 ライマの街を上空から見ると、そこには三重の正五角形が姿を現すことになる。

 最も外側の辺は、外敵を防ぐ為の第一城壁。

 その内側、二番目の辺は第二城壁。

 三番目の辺は、清浄なる水がたたえられた堀である。


 堀の内側は「中央地区」と呼ばれ、魔術師やその縁者が住まい、中心には街のシンボルたる「知恵の塔」がそびえ立っている。

 堀の外側から第二城壁までの間に広がるのは、「一般居住区」。その名の通り、魔術師以外の全ての人々が住まう「下町」である。

 第二城壁から第一城壁までの間には、広大な農地や牧草地を内包する「外縁地区」が広がり、街で消費される食料を生産している。


 中央地区では、人々の営みの殆どが魔術によって支えられていた。

 「清水を生み出す宝珠」により、豊富な水が供給され、人々は喉の渇きを訴えることがない。

 上下水道も完備されている為、街は清潔の一言だ。

 力仕事の多くは巨兵ゴーレムによって担われ、魔術師達は日々の雑事の多くから開放されている。


 魔術師ではない、一般住民も魔術の恩恵に預かっていた。

 巨兵ゴーレムの使用こそ禁止されていたが、上下水道は一般居住区にも張り巡らされている。大都市ともなれば、通常は水源の確保に苦慮するものだが……ライマにはそれがない。

 そんな他の街に対する圧倒的な優位性のもと、人々は平和で豊かな生活を送っていた。


 しかし、平和で豊かな街であっても――いや、だからこそ、悪行を為す者達が存在する。

 一般居住区では、盗みや喧嘩、詐欺と言った犯罪が日々絶えない。

 そして、時には殺人事件さえも起こるのだ――。

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