第203話 ミステリアスなガール

「じゃあ俺達はこのまま奥まで行ってみるか」


 マイペースにイリスが引き返してしまったので俺達に残された道は進むしかない。だって俺達もこのまま引き返したらまた会っちゃうからちょっと気まずいじゃん?


 っていうかイリスはこの王都の屋台でしか食事してないような気がするけどちゃんと案内出来るんだろうか。心配になってきたぞ。それに団体さんだし結構どころかめちゃくちゃ目立つ。


 もしも彼らを捕えた人たちに見つかった場合……普通に返り討ちにして終わりだから別にいいか。今のイリスと勝負になる奴なんてそれこそ召喚された勇者クラスの連中だけだろう。


「しかしイリスちゃんも派手にやったね」


「もっとお話したかったです」


 あかねはこの部屋の中の惨状に興味を、フラフィーはイリスともっとスキンシップを取りたそうにしていた。確かに俺達に会いに来たんじゃないの? ってくらいさくさくと行ってしまったな。


 テレポートがあるからまたそのうちひょっこり飛んでくるとは思うけど、再会したというのにだいぶあっけない感じだったわ。せっかくおめかししてたのに褒めるまくるのもしてないし申し訳ないことをした。


「精霊の子なだけあって流石の魔力量です。能力が二倍近くに跳ね上がっていましたね」


 もともと無尽蔵に近いほどの魔力を持っていたイリスだが、めぐ曰くその能力の高さは二倍にせまる勢いだそうだ。転生ボーナスまじぱない。というかめぐはみんなのステータスちゃんと確認してたんだね。


 なんだろうか、さぼってて世界が危機になったの気付いてから色々調べたんだろうか。色々と慌てて調べだす女神様想像するとまじ可愛いわ。とりあえず頭をよしよししておく。


「なあに、お兄ちゃん」


「何でもないよ。なんとなく撫でたくなっただけ」


 頭をなでるとちょっと嬉しそうにするところも可愛いけどなんで女神様こんなになっちゃったんだろうな。おかげで他のメンバーからの視線が痛いぜ。そんな視線も気持ちいいので俺にとって全てがプラスにしかならないのほんと凄い。


 ハーレムとはこうあるべきという気持ちにさせられるわ。色々と問題はあるかもしれないけど幸せを感じやすくなるのとても嬉しいです。


「そういえば女神様。さっきイリスさんの能力が二倍って言ってましたけど女神様はどのような能力が使えるんですか?」


「迷える猫娘よ、今の私はめぐなのでそう呼んでください。ちなみに能力に関しては秘密です。ミステリアスなガールになった私の事を詮索しようなんていけませんよ」


「ねえキミヒト君この人やっぱおかしいよ」


 確かにめぐはおかしいかもしれないが俺はそれでも大好きなのでそれで問題ありません。めぐが持っている能力は結構持ち越したというか隠して置いたみたいなこといてたから結構あると思う。


 これ絶対目を付けられるよな。今この世界を見ているであろう女神様がめぐばりにさぼっていることを祈るしかない。もしくはめぐが育てた女神でことなかれ主義的にこなしてくれてればいい。


 あとなんでロリ達はミステリアスガールという単語が好きなんだろうな。イリスも前に言ってた気がする。


「秘密にしたいならそれでいいじゃないか。仲間になってくれたし戦闘することになっても俺達いれば事足りるだろ? というか俺と能力を作り出したっていう実績があるだけで逆に戦わせちゃいけないような気すらするよ」


 俺達にスキルを配っていためぐがそのままの能力を持ってきていたら戦力過多なんてレベルじゃないだろう。正直魔王を単騎でぶち殺せるんじゃなかろうかってレベル。


 イリスの能力も普通に覗いていたしそれ以上の能力の可能性が非常に高い。もしこの世界がRPG的な感じだったら仲間になった瞬間ずっとレギュラー入りして蹂躙するか、強すぎるからレベル上げの引率要員として大活躍するだろうな。


「確かに……。神獣様も従えてましたし、何かしてもらう事があったらそれこそ大問題な気がしますね」


 フラフィーも俺と同意見な感じだった。そういえば俺がめぐのこと女神様ってわからなかったらどうなっていたんだろうな? そんな世界線は存在しないとは思うけど。


 そしたらめぐは独りぼっちなんだろうか、そして俺達の行動を遠くから眺めて見守るスタイル。とても悲しいね。なのでもっかいなでなでしてみると不思議そうな顔をされた。


 そんな感じで話ながらのんびり進んでいくと上に向かう階段が見えてきた。


「ここは……どっかの屋敷の地下だな」


 透視を使って地上を見上げてみるとそこには立派な屋敷が建っていた。屋敷から少し離れた場所に建物が建っていてそこからこの場所に繋がっている。なんとなくここは貴族の緊急脱出通路なんじゃなかろうかと思う。


 それなら王都の一軒家に繋がっているのもわかるし、あの睡眠魔法のトラップも追手を足止めするのに使えるだろう。そしてそこを少し改装、人を閉じ込められるようにして実験に使うと。


 もしかしたらあの扉には開け方とかそういうギミックが仕掛けられていたのかもしれない。俺の透視は罠とか大体見えるけど魔法的なギミックが仕込まれているとわからないからな。


 怪しい場所や明らかな罠ならわかるけど流石に扉に何かしらの細工があって転移させられるのは見えない。前にロンドがダンジョンで孤立した時にもっとちゃんと調べておけばよかったな。その知識があれば回避できたかもしれない。


 そしたら普通にイリスが飛んできてあんな変な状況にはならなかっただろう。めぐに対する追及を逃れることが出来たからありっちゃありだったけど。


「うーん、人があんまりいないねこのお屋敷。声が全然聴こえない。二人くらいかな」


「すっくな。いや使用人とかいないとこのレベルのお屋敷維持できないだろ。どうなってんだろうな」


「たまたま外出してるとか?」


「使用人総出で? 流石にそれはなさそうだけど……」


 人がいなくなっている豪華なお屋敷。俺の透視で見た感じでは物もそんなに多くないしこれは相当お金に苦労していると見た。俺の透視の能力だと人の形をしているものが見えないからきっと本邸の方だろうな。


 階段を上っていき小屋を出て本邸の方に向かってみるしかないな。犯人がいるとしたらその二人のうちのどちらかなのは間違いないだろう。

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