ラベンダーの恋

尾形昭

第1話ほのかな恋

ある高校の3年2組の教室。4月下旬の自習時間。池渕泰代が、立ち上がって松田裕文のところにやって来た。

「松田君、15センチの定規貸してくれない」

「はい、どうぞ」


15分後、泰代は、定規を裕文に、返しに行った。

帰りかける泰代を、裕文が呼び止めた。

「池渕さん、ちょっと話があるんだ。ちょっと、来てくれる」


二人は、校舎の裏に行った。

「わかっていると思うけど、僕は、池渕さんの事をかわいいと思っている」

「急に、そんな事言われて、嬉しいけど、とまどうわ」

「何て言っていいのか、そんな風に思ってくれているなんて、思わなかったから、すぐには、お願いしますなんて、言えないわ」


「まあ、そうかも知れない。僕の気持ちを伝えたから、考えてみてよ」


裕文が、教室の後ろの引き戸を開けて、教室に入った。続いて泰代が入った。右手で丸を作った。女子生徒が7~8人「オーッ」と、声をあげた。


翌日の、休み時間に、泰代が裕文のところへ来て

「よく考えたんだけど、私、裕文君とお付き合いさせてもらうわ。もともと裕文君の事が好きだったし」


「それは、正しい考えだと思う」

「ねえ、どうして、私を、好きになったの」


「君が、中学校3年のときに好きだった子に、似ているんだ」


「なあーんだ、その子の代わりか。私は代用品ってわけね」

泰代は、気持ちが引いた。


「そう言うわけじゃあ、ないんだよ。君が、その子に、ちょっと似ていた。と言うだけで、全然違うよ。だんぜん泰代さんの方が、かわいいよ」


「どうせ、私は、代用品なのね。そんな風に思っていたなんて、腹が立つわ」



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