第22話  激突!VSシルク!(中)の話

黒杉は、黒姫ノ紅を手に持ち走り出す。

黒い短剣の刃先は、紅く光る。ぎらつく刃に映るのは、シルクの顔。

そのまま、対象の顔に目掛けて、【極限投擲】を発動させ、黒姫ノ紅を投げる。

光速で投げられているにもかかわず、シルクは軽く避ける。だが・・・。


「黒姫ノ影!」


その瞬間、スキル名を叫んで発動する。

先程、シルクが避けた短刀から、黒杉が手に持って現れる。

そのまま、ガラ空きの背中に手を伸ばす。


「い、いつのまに!?」

「気を抜いてると、すぐに捕まっちゃいまっせ!!」


しかし、シルクは手刀で、軽く捌き、そのまま、距離をとる。

これが、俺の切り札その"1"だ。


【黒姫ノ影】は残影EXを開放したことで、新しく覚えた【派生技能(ドライヴ・スキル)】。

【架空技能(イマジナリティ・スキル)】とは違って、条件を満たす事で、 源から別の物になる。つまり、条件さえ整っていれば、努力しないで、覚えることが出来る。

今回は、開放条件となる、残影と黒姫ノ紅がたまたま、揃っていたおかげで、覚えることが出来た。

これも、伝説級武器のお陰かもしれない。


【黒姫ノ影】の効果は、投げたの場所に、瞬間移動が出来る。

そして、クレナを投げた時、直ぐに手元に戻すことが出来るようになる。

つまり、シルクさんから見て、走ってるどころか、その場から、パッと消えているようにしか、見えないのだ。


なんという、チートスキル。どこぞの、神話チート雷神ハンマー(ミョルニル)を連想させる。まあ、必ず当たるわけじゃないけど・・・。

だが、シルクさんが相手なら、出し惜しみをせず、使うべきだ。


「行け!!クレナ!!」


再び、黒姫ノ紅を投げる。

転移を警戒したのか、シルクは移動するが、黒杉は先程投げた、短刀を能力で回収して、投げる。

予想して投げたところに、シルクは現れる。


「わわっ!?」


シルクはギリギリ避ける。

今度は、大きく仰け反っている為、簡単に動くことは出来ない。

この隙を逃すわけもなく、『黒姫ノ影』を使って転移をし、手を伸ばす。


「むむッ!!ここですね!」

「うせやろ!?」


だが、シルクから、見えない状態でも、短刀を軌道を見極めたのか、左手で、伸ばした右手を掴み、そのまま、軽く投げ飛ばされる。

そして、シルクは後ろに下がり、何か思い詰めた声で話す。


「・・・っくう!あと少しだったのに!」

「ふふん!詰めが甘いですよ!」


シルクさんの極限に磨かれた。『戦闘美学(バトルセンス)』と、あり得ないぐらいの鋭い直感は厄介だ。


「僕は生まれながら、スキルが少なかったんです。その度に、村の皆には弱いとかダメなやつーとか馬鹿にされました」


シルクはゆっくり語る。


「だから、よーくんには親近感がありました。そして、こんな短期間で強くなるよーくんがうらやましいです。」

「よく言いますよ、残影を見ただけで模倣的に発動させるなんて、シルクさんに言われたくないですよ」


シルクは笑い、いつも通りの叫びながら、パタパタさせる。

お尻に付いている、尻尾を伸ばし、嬉しそうに振る。


「うひゃあああ!あんまり褒めないでください!照れちゃいます!」

「じゃあ、そのついでに捕まってください!」

「あ、それは無理ですね!」


黒杉は、今度は残影を使って、【黒姫ノ影】を使って、撹乱させるが。

シルクは残像で翻弄する。


「そんな、ある日、僕は村の人に捨てられてしまいました。村に神様がいるらしくてですね。生贄の為に捧げられたのです」

「・・・」


捨てられるか・・・。

自分はクラスメイトの一人に捨てられた事を思い出す。正式には、刺されたんだけどな。

何故、シルクさんは、この事を話してくれたのか、正直分からなかった。

でも、俺は静かに聞くことにした。


「そんな時に、私は神様に殺されそうになった時に、うーさんが、ヒーローみたいに現れてですね!ズバァアアン!!って一刀両断して、一瞬で倒したんです!結局、神様の正体は、魔物だったんですけどね」


なるほど、月ノ城さんらしい。


「それで、うーさんに言われました。何を思ったのか・・・」


───5年前


暗い洞窟の中、突如、現れた。

白い髪、碧い瞳の男の人。


神様らしき、化け物を一刀両断して、飛び血が顔に付いていた。

本来は、恐ろしいと思える場面なのに、血がとても似合っている。

僕が子供だから?でも、違う。心の底から、綺麗だと思った。

きっと、世界中を探しても、血が似合う人は、この人しかいないだろう思わせるぐらいに。


男は振り返る。

綺麗な瞳が、僕の紅眼と眼が合う。


「えっと・・・その・・・」

「んー・・・?へえ、面白いの奴がいたもんだ。怪我はー・・・ないようだな、うん」


男は、近づく。

僕に腰が抜けて、立ち上がることが出来ない。

配慮してくれてるのだろうか?目線を合わせるように、しゃがむ。


「・・・あ・・う」

「・・・なるほどな、白装束に、手と足に縄か・・・。しかも、この縄・・・ご丁寧に逃げられないように、拘束に長けている、上級闇魔法を付与させてるな」


男は、頷いた後に、見た事のない刃を抜く。

まさか、僕を殺すのかな。

恐怖で、身体を震わせ、眼を瞑る。


「ほら、目を開けても良いぞ」


男の声で、素直に目を開く。

自分が引き裂かれる痛みはなかった。

だけど、先程までの、息苦しさはなかった。

その理由は、すぐにわかった。

手足に縛られた縄だけが、引き裂かれたのだ。


「あ、あの・・・」

「帰る場所がないんだろ?なら、俺についてこい。お前なら、もっと強くなれる。こんな所で死ぬんじゃ───」



──────



「お前は強くなれる、こんな所で死ぬじゃないって、最初は何言ってるんだろう?僕のスキルはこれ以上覚えられないのにと思いました」


俺との攻防しながら、シルクは懐かしそうに語る。


「だけど、うーさんの言った通りでした。力の使い方も、教えてもらいました!そして、今は"ヒーロー"として君臨しているのです!!」


シルクはいつも通りに、むっふーって言いながら、避け続ける。


「さあ!よーくん!まだまだ本気出してないの知ってますよ!次は何をしてくれるんですか!」


シルクは次は何をしてくれるか楽しみしてるようだ。

ではその期待をこたえなければならないな!

俺は、黒姫ノ紅を構え、刃は赤黒く光りだす。

そのまま、シルクさんに向けて振る。


「黒姫ノ刃ッ!」


俺は3回振る、その斬撃はシルクに向かって飛んだが、普通に避けてしまう。


「よーくん!今の斬撃は手を抜いたんですか!!」


シルクは少しご立腹のようだ。

怒るのにはまだ早いんですけどね。

三つの斬撃は3方向に分かれて、Uターンしてシルクに追尾し始める。

シルクはそれに気づくように

斬撃を避ける、しかし避けても追尾し続ける。


「ちょちょちょちょ!?追尾とか聞いてない!?」

「だって、言ってないですし。」


俺は苦戦してる間に、霊水を飲む

黒姫ノ刃の追尾する斬撃を放つ代わりに、弱点は膨大の魔力を使う事だった。

これが俺の切り札その2だ。


周りにはアイリスが【炎ノ砲】で援護をし続ける。

シルクのいた場所が、慌ただしく、轟音と爆発音、風を切り裂く音が、同時に襲って来る。

流石に、ここまですれば、シルクに焦りが見てくる。


「むむむ!仕方ないですね!僕をここまで追い込むとは!では私も少し本気出しましょう!」


そうすると、迫りくる斬撃に向かって、拳法のらしき構えをする。


「必殺パンチ!!!」


シルクのパンチは斬撃を”粉砕”する。

次にアイリスの炎ノ砲が飛んでくる。

しかし、シルクはジャンプして、そのまま・・・


「必殺キック!!」


斜めに急降下で、勢いよく、アイリスの【炎ノ砲】をライダーキックで粉砕した。

この光景をみて唖然とした。

俺達の攻撃がパンチとキックで全て防がれてたからだ。

普通ならあり得ないことを、平然とやってしまう。


「くうーー!!!流石にあの斬撃を止めるのは少し難しかったです!」


シルクは、手を痛そうにぷらぷらさせる。

今の攻撃を、痛いで済むのが改めて、人外だなあって思うのだった。

さて、これからどうする。

手足を使い始めるってことは相当追い込まれていている証拠だと思うことにした。


「ヨウイチ・・・」


アイリスは少し落ち込んだようだ。

自分の攻撃を防がれるとは思っていなかったんだろう。


「大丈夫だ、俺には、まだ残ってる」


そうだ、秘策はまだある。

ここが正念場だ。

俺の秘策をすべて使い切るか、その前に捕まえるかだ。

俺は歩き出してシルクさんの前まで立った。


「よーくんは、次は何してくれるんですか?」


少し警戒した所で、俺は黒姫ノ紅を振る。

シルクは、なんなく、普通に避ける。そう"普通"に避けたのだ。

仮面の頬の部分に、見えない何かで、斬り後が付く。その斬り口から炎が爆発するかのように出てくる。


「なあ!?」


シルクは慌てて、離れて仮面の切り口を慌てて消火する。


「あちちち!?いま、なにしたんですかあ!?」

「もう一回やります?」


接近して攻撃する、シルクはさっきみたいに避けるが。

何故か"当たってしまう"、当たった部位から炎が出てくる。


「あちちち!?」


それも手で払ってすぐに消化する。

シルクは、黒杉の短剣を目を凝らして見た。


黒杉の短剣に、黒く半透明な斬撃が、剣に見たいに伸びていた。

そして、シルクは気づく、変身スーツが再生しない。


黒杉の切り札、その3

『黒姫ノ炎』『黒姫ノ罪』

【黒姫ノ罪】は、短剣状態から剣の状態に変形させる。

剣は半透明化されて、見えづらくなる。


【黒姫ノ炎】は、傷をつけた場所から炎を発生させ、爆発させる。そして、傷つけた場所には、回復を止める効果がある。


俺は剣を構え、ジリジリと近づく。

一歩、一歩と歩いた。そして、刃を向けて宣言をする。


「シルクさん、俺はこれで決めます。」

「よーくん!いいですね!盛り上がってきました!なら私も期待に応えるしかないですね!」


そして、シルルは武器を取り出した。

それは刀身が光る大剣だった。


「さあ!よーくん!クライマックスなので、がっかりさせないでくださいよ!!」


俺はシルクさんの得意分野である、近接戦闘を持ち込んで、挑む。

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