第3話 訓練と国の話


「(つ、つかれた・・・)」


僕たちは走り込みをした後に、バテバテになりながら各自職業に合った武器を選びに行く

僕の場合は武器は基本的、村人だから何を使っても同じらしい


「(じゃあ、軽い武器がいいな)」


リーチは低めだけど素早く振れる短刀が良いかな。

武器が重いと、いざ動く時に邪魔になるからね。

他には、石投げのスキルがあるから、ズボンポケットに石を3、4個入れよう。

どうやら、石投げスキルは石以外の物を投げると威力が下がってしまう。

そんな、石投げの上位互換では投擲というスキルがあるらしいが、本来覚えられるはずが覚えられないという事態に。


「なぜ僕だけが・・・」


黒杉は落胆する。

各自武器を選んだ後、訓練する相手を兵士長が各所に振り分けた。

そして、黒杉の相手は板野だった。


最悪だ、日頃の色々からかってくるアイツだ。

絶対に、容赦しない。

だって、既にアイツの顔怖いし良からぬことを考えてる顔だ。


「よお!陽一くんじゃないかぁ!君と手合わせできるなんて光栄だな!」


板野は剣を抜き構えた、こいつ殺る気満々だな。

板野の職業は剣士だ、相手が村人なら勝負にもならないことが分かっているのに。

しかし、それを知ってて戦うわけだ。

どこまでも、嫌な奴だと心の中で思った。


「訓練始め!!」


アルバートの合図と同時に板野は突進してくる。

そのまま剣を思いっきり縦に振り、僕に向って攻撃してくる。


「っく・・・」


早い!いくらステータスの差があってもこれはないだろう!?


黒杉はは辛うじて、短刀で受け止めそのまま右に受け流す。

板野の一撃は重く、短刀が壊れるかと思った

こんな攻撃を何度も受け止めたら短刀なんて持つはずがない。

黒杉は咄嗟に距離を取った。


「(悔しいけど、板野に勝てそうにないや・・・)」


これが職業の差だと改めて感じさせる。


「くっくっく・・・楊一くんねぇ!避けてばっかりだと俺には勝てないよぉ?」

「クソッ・・・」


そう言いながら、上から目線のその顔はとても清々しそうな笑顔で黒杉に向って挑発する。

職業の差で有利に立っている、板野のドヤ顔は黒杉を余計に不快にさせる。


(すっごい、うぜぇ!!めっちゃうざい顔で挑発してくるし、なんだコイツ!?相手は村人だぞ!?なんであんなに得意げなのさ!)


そう思っていると二回目の攻撃をしてくる。

板野は構えてスキル名を叫ぶ。


「スラッシュ!」


板野の剣の刃が光り、そのまま横に投げ払うように黒杉に向って攻撃した。

黒杉は短刀で受け止めるが、ピシッとひび割れるような嫌な音が聞こえる。

よく見ると今の一撃で短刀にヒビが入っていた、あと一撃食らえば壊れそうだ。

短刀で受け止めてる間、板野は黒杉の腹に向けてヤクザ蹴りで攻撃する。


「カハッ!?」


僕は3、4m程吹き飛んだ。

吹き飛ばされた時、お腹が思いっきりめり込んだのが身体の感覚で分かる。

おかげで今日の朝ごはんが出てきそうになったが何とか耐える事ができた。

あのまま、吐いていたら板野にゲロ杉くんって馬鹿にされただろう。

それだけでも回避はしたかった。


(板野の奴、容赦なく蹴りやがったな・・・)


黒杉は意識が朦朧しながら、うずくまりながら板野に見えないようにポケットに入っている石を取り出す。

板野に向って、スキル『石投げ』を発動させて投げた。

完全に不意打ちだ、これなら当たるだろうと思っていた。

しかし、それを予想していたがの様に剣ではじく


「なっ・・・!?」

「なんだい、今の攻撃は?不意打ちのつもりだったのか?クク残念だったな、剣士使いの効果だよ」


剣士使いの効果は普通より剣がうまく使えるようになる、そして精神を研ぎ澄ませることによって、ある程度予想ができるようになる効果だった。

そして、板野は少しずつ黒杉に前まで近づいて剣を振りかざそうとした瞬間

黒杉は恐怖で目をつむった、しかし攻撃は来なかった。

ガリガリッと音が聞こえた金属音同士で当たる音が聞こえる

黒杉は前を見た、一樹が目の前に立っていたのだ。


「おい、板野テメェはやり過ぎだ。」


一樹は鉄腕甲で剣を受け止めていたのだ。

そして、そのまま剣を押し返し、板野は後退する。


「あん?山崎なんだおめぇ?今、楊一くんと楽しい訓練してんだよ?邪魔すんじゃねえよ」

「何が、訓練だよ。お前がやってるのは、ただの弱いものイジメだというのがわからねえのか?ああ!?」


一樹の目つきが悪くなる。

こええー・・・

板野は剣先を一樹に向ける、同時に一樹も構えた。

一樹は後ろにいる、黒杉に声を掛けた。


「楊一、大丈夫か?ちょっと後ろに下がってろ」

「う、うん!ありがとう」


一樹に言われた通りに下がった

後ろに下がると、なんだなんだ?って言わんばかりに

生徒たちが集まっていた、騒ぎを聞きつけたんだろう。

下がると、佐野と美空が近づいてくる


「楊一!」

「楊一くん!大丈夫!?」


佐野はそう言って、蹴られたお腹にスキルを使う。

神官初級スキルのヒールだった。

一部の生徒は羨ましい目をしているが、それどころじゃなかった。


「佐野・・・ありがとう」

「いいのいいの!!それよりも安静にして!」


そう言って、座ろうとしたら佐野に無理やり横にされ引き続きヒールを掛ける。


一方、一樹とはいうと


「ハアァァァ!!!」

「ハァッ!」


板野と戦っていた、凄まじい攻防だ。

板野は剣で連撃を仕掛けるが、一樹はそれをすべて受け流しいる。

一樹は攻撃をすべて受け止めた後、腰を低くして構える。


「連打撃!」

「っく・・・このやろう!」


一樹は、素早い正拳突きが連続で繰り出される。それは目にも止まらない攻撃で砂煙が舞う。

それを防御できる板野も正直すごかった、繰り出される攻撃を目で追って受け流す。

板野は受け流した後にそのまま、剣を構えスキルを発動する。


「スラッシュ!」


板野のスキルが発動した瞬間、さっきとは違って横大振りに孤を描く。

一樹の目が一瞬だけ鋭く光った。

板野の攻撃を避け、同時に攻撃を仕掛ける。

その攻撃は板野の攻撃を利用するかのように、拳が溝に深い一撃を放つ

あれは一樹のスキルのカウンターだ。

板野は一樹の一撃をくらい、吹き飛んだ。


「ぐはぁ!?」

「その攻撃は楊一で見たんだよ!!俺に通用すると思うな!」


板野はまだ意識があった、あのカウンター受けていても意識あるのがヤバイ。

しぶとさだけは天下一品な板野だった。

立ち上がろうとする板野に、一樹はパンチを板野の顔面を寸止めで止めた。

そこでアルバートの声が聞こえたのだ。


「そこまでだ!!」


アルバートは勝負を見ていたのだ。

その力強い声で一瞬びっくりしたが、互いに不満そうだが二人は武器を下げる。


「実に良い訓練だった!お主らよくあそこまでスキルを使えたものだな!」


アルバートは豪快に笑い、満足そうだった。

スキルを使いこなすには鍛錬必要不可欠らしい、スキルといっても練度というものがある

同じスキルでも練度よって威力は変わるという説明される。

確かに、一樹の攻撃は凄まじかった。

一樹は日本でいたときには色々格闘技をしてたらしいから、それの影響でもあったのだろう。

板野は鬱々しく、舌打ちしてどこかへ行く。


今日の訓練はここまでらしい

そう言って僕たちは部屋に戻って、夕飯の支度をするのだった。



―――――夕食


僕たちは、いつも通り一緒に食事をとった

メンバーは僕、一樹、美空、佐野だ。

いつも通りに、談話しながら食事をしていた。


「そういや、フィルネル王国ってどういう国なのかなぁ?」


佐野の質問に、僕たちは確かにと思い頷く。

僕たちは勇者たちの話はされたが、国の事は何も知らなかった。


「良いでしょう!わたくしが、このわたくしが教えてあげましょう!!!」

「うお!?びっくりした!?」


僕たちの後ろからぬるりと急に現れたのは同じクラスの前島 情地(まえじま じょうじ)

肌白く、痩せこけていて、ぐるぐる眼鏡を掛けていた。

皆からは通称ジョージって言われいる。


「皆さんが、欲しそうな情報はわたくしが集めてきましたゾ!]

「おお!流石はジョージだぜ!」


ジョージの職業は隠密を得意とした忍者。

昨日、こっそり図書室みたいな所で色々調べ物してたらしい。

何故、隠れて調べていたのかは、教えてくれなかった。

本人の曰く、「謎が多い男の方がミステリアスでかっこいいですゾ?」と言う。

ここで、ミステリアス要素は必要なのかと思ったけど、深追いはしなかった。


「さてさて!まずフィルネル王国の事を説明しますゾ!」


【フィルネル王国】は中央に位置する国で、正式名所は【中央大都市・フィルネル栄国】この世界で一番栄えていて、大きな国だ。

現在はヨハン=ザムジードによって統治されている。

フィルネル王国は世界の中央にあり、各国から色々物資を調達したり、技術の交換をしてる。

この国が栄えているのは他の4つ国が支えている為だった。

そこで美空が質問をする。


「でも、こんなに栄えている国で各国から調達しやすい、そして土地が大きいと、国王たちが欲しがらない?」

「勿論ですゾ!ですが、現国王のヨハン王によって今があるのですゾ!」


ジョージは1冊のノートを取り出す。

そこには、細かく書かれた字と分かりやすい絵がびっしりと描かれていた。

どうやら、読むだけではなく勉強もしていたようだ。


「さてさて・・・何故、今は平和な国なったといいますと40年前の戦争があったのですゾ」

「やっぱり戦争があったんだ」


僕たちはジョージの話をノートを見つめながら聞く。


40年前にフィルネル王国を入れた5つの大国が中央の国を求めて戦争を起こした。

5大国の名前は【スノーガーデン王国】、【グリーンパール帝国】、【カラスカ聖都市】、【カナバスカル王国】、そして【中央大都市・フィルネル栄国】


北には雪の極寒都士【スノーガーデン王国】

そのままの通りに雪国だ。とてつもなく寒い場所で酷い時には-50という、極寒地帯になり、通る者を全てを凍らせた。

勿論、スノーガーデンはこの極寒地獄を対策している。

その為、他の国はその寒さを対策しなかった為、凍死する人が続出していた。

スノーガーデンでの最終死亡件数は約10万人。

戦争後のスノーガーデンは観光スポットとして、煌びやかな教会とお城で有名で、結婚式を挙げるならスノーガーデンが良いと言われて、女子たちの憧れの場所でもある。


東は大森林と軍の国、寵緑(ちょうりょく)の【グリーンパール帝国】

グリーンパールは人間と獣人族が共に行動をするという珍しい国だ。

獣人は人間を戦う力を与えて、人間は獣人に生きる知識を与える。

人間と獣人は厚い信頼と互いに寄せている。

その為、大森林での戦いでは、今まで、猪突猛進の獣人の戦い方が人間の知識を与えた結果。

大森林を利用したトラップと迷路、緑を利用した迷彩服を着ての戦い、統率が取れた動きが有名だ。

グリーンパールでの最終死亡数は約7万人

戦争後は獣人と人間での共同作業の建築が有名だ、実際にスノーガーデン王宮やフィルネル王国のお城を作ったのも、グリーンパールが建築したものである。


西には砂漠と技術の国、創生の【カラスカ聖都市】

カラスカ聖都市は人間とドワーフ族が率先して、鉱石の発掘と生産技術、兵器開発で有名である。

誰でも魔剣を扱えるような【人工魔剣】と何処でも会話ができるように通信機能【軌光石】を作ったのも、カラスカ聖都市だ。

他にも聖都市と呼ばれているのは、【神の寵愛】を受けていると、詳しい事は分からないようだ。

そして、その通信機能と兵器、そして人工魔剣を使った戦いで戦場を火の海にさせた。

カラスカでの最終死亡数は13万人

戦争後は鉱石を使ったアクセサリーや冒険者用の武器などの生産、軌光石を布教など、様々な生活を支えていた。


南は海と食料の国、永久豊穣の【カナバスカル王国】

カナバスカルは人間と魚人族が共に農作物、水産物を制作をしている。他にも肉、野菜、果物なども生産している。

カナバスカル産の食材はとにかく美味いらしく、理由は水と気候が関係していた。

魚人族が住む場所は基本的に水が綺麗な場所を好み、気温も農作物が育ちやすく、人が住みやすいと有名。

一見、戦争は苦手そうに思えるが、カナバスカルで育った人々は身体が特別頑丈になる習性があるようだ。

その秘密はカバスカルの食材にあって、体は頑丈に、寿命を延ばす効果がある。そして、すくすく成長した結果がカナバスカルに住む人たち人間の平均寿命が100歳と言われている。

そして、その頑丈さも加えての海と川を通しての水上戦が得意な国だ。

カナバスカルでの最終死亡数6万人

戦争後は食材を使った祭りや大会が有名で、海に旅行に行く人が多いとのことだ。


そして、そんな巨大な4つの国を、全て纏めているのがのがフィルネル王国である。

フィルネル王国は場所的にも4ヶ国に集中攻撃されるのだが、その攻撃を全て防いで見せたのだ。


その勝利を導いたのが、現国王のヨハン=ザムジード


彼は長く続いた戦争を終わらせ、大英雄になった男だった。

全盛期の彼の強さは凄まじく、剣を振れば大地を割き、魔法を詠唱すればクレーターができるのが殆どだった。

今は老いて、そこまでの力は出ないらしいが、その功績がでかいために生ける英雄として讃えられている。


国王にも仲間もいて、争いを無くすために各国の国王として君臨している。

そして、人々は戦争がなくなったのだが、10年前に魔王が復活してしまう。

今はそれを対抗すべく、このフィルネル王国で中心で指揮をしているそうだ。


「とまあ!こんな感じですゾ!」


前島はズレた眼鏡をクイクイッと直す。

一樹は興奮したかのように、「すげえ!」とここ行きたいとか目を輝かせていた。


僕も行くなら、カナバスカル王国に行きたいと思った。

なんせ、美味しい食材とか食べ物にはないからだ。

美味しいご飯は正義だ。


この情報を前島が一晩でやってくれました。

流石、前島だ。今更だが、彼の部活は新聞部だと思い出す。

こういう、異世界に来たなら、考えてみれば彼が情報を集めるの自然な事で、だから忍者になっただろうか。

考えてみると、皆の職業は何故、そうなったのかを考えて見なかった。


黒杉は考えた結果、自分の経験に伴って、職業が反映されるんじゃないかと考えた。

では、自分は今まで、平凡に生き過ぎた結果で村人になってしまったと考えると、酷く落ち込んだ。


「ハハハ・・・」


思わず、やるせない気持ちが声に出てしまった。

それを聞いた、隣にいた佐野は「どうしたの?」と聞いてくるけど、何でもないと言って、少し考えるのをやめた。


そうして、僕たちは夕飯を食べ終わって各部屋に戻ることになった。

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