第一章

第1話 チュートリアル

僕は国王に村人という職業がどういうものか説明された後、気づけば夜になっていた。

その後は、個々の部屋に案内される。

流石、国王の城もあってすごく立派だ。

この立派過ぎるのもあの国王の強さと権力を表しているかもしれない。

僕は幸いにも一樹と一緒の部屋になって、ホッとした。

ここで板野だったら、きっとベランダから飛び降りてでも出て行くと思う、うん。

僕の表情を見て察したのか、一樹が話しかける。


「楊一、さっきの話をまだ気にしているのか?」

「あ、う、うーん・・・」


気にしていないと言えば嘘となる。

まさか、ライトノベルにも出てくる、異世界生活が実現するとは思わなかったし、少なからず憧れてはいた。

自分にも異能の力が!?っての思った。

その矢先に自分が選ばれた職業が最弱の村人だった、そんなの落ち込むしかないじゃない!

村人ってなんだよ!思い出すと悲しくなってきた。この件はもう気にしないでおこう。

それに村人でもきっと強くなれる方法あると思うし!うん、あるよね?お願いだから希望を持たせて。

僕は不安になりながらも、何とか希望を保とうした。


ここのお城のメイドたちに案内された後に、軌光石の詳しい使い方を教え説明してもらった。


・まず通信機能がついている事、現代で言えば電話みたいなものである

・次に覚える技が分かる事、次のLVで○○が覚えますという形で表示されていた。

・自分のステータスがわかる事、これは基本情報だね。

・この国での証明書の代わりになる事


他にも機能がついているらしいが、それは今度教えてくれるらしい。

改めて、機能を分かった上で使ってみることにした。

まず、電話だ。


「たしか、石を握ってと...」


僕は石を握って一樹に向って念じた。

すると、頭の中で何かがうごめく感じがして変な感じがした。


「(一樹、聞こえるかい?)」

「うお!?本当にできるのか!すげぇな!」


どうやら、うまくいったようだ。

この後、一樹も僕に向って話すのだが、脳に直接語られている感じがして、少し気持ち悪かった。

この石を使った通信は、慣れるのにしばらく時間が掛かりそうだ。

僕は職業的に戦えないから、戦いを指示できたらいいなと思う。


次に、レベルで上がった後で覚える技を見る方法。

これも同じように念じると同じようにステータスのように表示される。

しかし、僕は見るまで気づかなかった。


次に覚えられる技がないということが。


「な、んだと・・・」


少なくとも村人でも技は覚えられるらしい、それでも全部最弱技らしいけどな!!

それすら覚えられないなんて・・・あまりにも理不尽すぎないか?

くそう!くそう!!希望を保とうしてたのに!!落す所まで落としやがったな!!!

僕は、理不尽の状況で泣きそうになる。


一方、一樹は普通に技を覚えられそうだ。

羨ましい奴め!祝ってやる!!ちょっと嫉妬するけど!!

一樹は僕に察して肩に手をおいて慰めた。


「なんつーか、そのどんまいだ」

「うん・・・」


やめろ!その励ましのパターンは逆に傷つくわ!

というか、余計に傷口を抉らないくれ頼む・・・!

僕は再び、絶望のループを抜け出せずにいたのだった。


「だ、大丈夫だ!俺が守ってやるからさ!ほ、ほら、楊一って指示がうまいから戦闘になった時に俺の指揮を頼むよ!」


一樹なりの精いっぱいの励ましなんだだろう。

まあ、そうだよね、戦闘ができない分やることは他にできることはあるはずし、役に立たないと決まったわけじゃないからね。

あるよね?うん、これは意地でもあると思ったほうがいいね、平常心平常心。


心の中で色々と葛藤していると、ドアがノックされる。僕は「どうぞー」って言って、入ってくる。

出てきたは美空とその友達だ。


「楊一お邪魔するわよ」

「やっほー!楊一くん!」


元気な挨拶してくる彼女の名前は佐野 七海(さの ななみ)

いつも明るくクラスのムードメーカーだ。

容姿は美人というより可愛い方だと思う

長い髪の毛は綺麗に整えられて、前髪はヘアピンで止めていた、体は華奢である。

密かに、ファンクラブがあるとかないとか・・・。

というか、俺の学校ファンクラブ多くない?

美空と御剣と良い顔の良い人が多い・・・。

それで本人には認知されてないからなぁ、ある意味バレないってのもプロの集団じゃないのか?

ちなみに佐野の職業は神官らしい。


「どうしたんだ?こんな時間に」

「いや、普通に遊びに来ただけよ」


どうやら、部屋に行ってもする事がないから、此処へ来たらしい。

暇してたんだなあ、確かに日本と比べるとやる事はない。

本来なら僕はこの時間帯はゲームをしてるからね。

すると、佐野はベットに転がって俺に話しかける。


「だね!私も久しぶりに楊一くんとお話ししたくてきちゃった!」


確かに、新しい学年になってから佐野と絡むことは少なくなった。

その為か足をバタバタさせて、少し嬉しそうにしてた。

なんだかんだ、中学校からの付き合いの事もあって、仲は良かったんだが、高校に入ってからは、佐野の容姿が良いからなのか、人気になってしまって話す機会はあまりなかった。

だって、話しかけると周りの目が怖いもん!!


「そういや、佐野と話するのも久しぶりだな」

「ぶー!楊一くん!佐野じゃなくて七海って言ってよ!」


彼女はほっぺを膨らませた、ちょっとかわいい

ほっぺを膨らませた佐野にそれをつつく美空

うん、綺麗な華は絵になるってのはこういうことだなって思う


「あ、うんごめん、七海さん」

「うー、呼び捨てでいいのにぃー」


あざとさを感じるが、気にしないでおこう。

これ以上はいけないような気がする、何故か殺気を感じるからな!

なんでだろうな!!何か窓をふと見たけどなんか目が紅く光ってるの見えたけど、気のせいだよな!ハハハ!

取り合えず、カーテンを閉めよう、そうしよう。

僕は立ち上がって、勢いよくカーテンを閉めた、3人はどうしたんだって顔をしてるが察してくれしか思うしかできなかった。


「あー、うん!慣れてないからごめんね!」

「ぶー!」


ぶー、じゃありません!あざとくてもダメなものはダメです!!

下手に呼び捨てなんかしたら、クラスメイトに集中放火されるに決まってる!

佐野はアイドル並みに人気があることを、自覚してほしいかな!

そんな中で急に「七海」なんて呼び捨てしてみろ!俺の命が危ういわ!!

って心の中で思いながら苦笑いをする。


「そういや、国王様言ってたね、明日から訓練だって」

「そうだなぁ、俺はのんびりしてぇんだけどなぁ!」


そういや、そんなこと言ってたな、来て早々訓練かと思う

一樹は脳筋だけど、あまり戦いとか好む性格じゃないからね。

それともスポーツマンシップみたいなものがあるからだろうか。


「私達は元の世界に戻れるかしら・・・」

「美空ちゃん、大丈夫だよ!きっと戻れるよ!」


美空は不安げになるが、佐野は変わらず明るい。

こういう時の佐野は頼りになる、心が弱った状態じゃいつか押しつぶされるかもしれないからだ。

それと美空の気持ちはわかる、確実に戻れるかと言われれば確信はなかったのだ。


「まぁ、国王様が言ってんだ、無事解決したら元の世界に戻すって、本当に戻せるかはわからんけどな!」

「気楽だなぁ」


そして、いつの間に楽しい時間は過ぎていったのだ。

時間を見れば23時まわっていたのだ。

それに気づいた美空は部屋に戻ろうとした。


「さて、私たちは部屋に戻るわ」

「一樹くん!楊一くん!まったねー!」


美空はお辞儀をして、佐野の手を振って別れた。

二人は自分の部屋に戻った。


「相変わらず、騒がしい奴らだったな」

「そうだね、でもこういう時だからこそかもしれないね」


国王にいきなり召喚されて、世界を救ってくれ頼むと言われて、ハイそうですか、んじゃ救ってきますわ!とはいかない。

実際に見知らぬ場所に召喚されると、怖いに決まっている。

ましては、僕たちは高校2年生だ。成人もしてもいないし、まだ成長の途中で、普通に考えたら、家に帰りたいに決まってる。

それでも僕たちは帰るために戦う選択しかなかったのだ。


「さて、寝ようかな、一樹おやすみ」

「おう!おやすみよ!」


今日一日は色々あって体よりも精神的に疲れがたまっていた。

僕たちはその日の疲れを癒す為に眠ることにした。


―――――夢を見た


まただ、またこの夢だ。

少女の出てくる夢だ。


少女の容姿は、髪は銀髪

眼の瞳は紅く引き込まれるようだった

そして、肌は白く透き通っており

触れれば崩れそうだった。


彼女は言う


―――――――「待ってる」



またか、君は一体誰なんだ。

何の為に、僕の前に現れるんだ。

君は何がしたいんだ。


僕は自分の胸を押さえ、叫びたくても、声も出せなかった。


ちょっと苦しい、なぜなんだろう。


――――私は―――――


そういうと少女は光か暗闇かわからない所に静かに消えていく。


待って!君は―――――


僕は走り続けた、姿も既に消えてしまったのに影を追い続ける。



僕はここで目覚めた。

勢いよく、起き上がり。

窓の外を見ると、朝になっていた。

僕は額に触れる。


汗だ、冷や汗だ。

僕は自分のシャツで汗を拭った。

止まらない冷や汗を拭い続ける。


あれは何かの予兆か、それとも・・・。


しばらくして、隣で見ていた一樹に気づいた。

彼は少し心配した顔で見ていた。


「おはよう、一樹」

「あ、あぁ、おはよう。楊一すごい冷や汗だけど、何か悪い夢でも見ていたのか?」

「悪い夢・・・ではなかった気がする」


どちらかというと、寂しい感じがした。

でもなぜ寂しく感じたのかはわからなかった。


「そっか!んじゃ言いたかったらいつでも言ってくれ!」


一樹に気を使わせてしまったようだ、なんだか申し訳ない。


「楊一!早く着替えて飯に食いに行くぞ!」


「う、うん!」


僕たちは着替えて、食堂に向った。

すると、何処からか声が聞こえた、声の方向を見ると。


「おーい!こっちこっち!」


佐野が手を振っていた、僕達は直ぐに食事を受け取り。

僕は佐野達の所に向う。


「おはよう、楊一、一樹」

「いつきくん!よーいちくんおはよー!」

「うん、おはよう、七海さん」

「おうよ」


俺達は互いに挨拶をして、席に座る。

一樹はまだ眠そうに、顔を擦る。

すると、佐野が話しかける。


「昨日は良く寝れたー?」

「うーん・・・」


正直、夢のせいでちゃんと寝れたかどうか分からなかった。

気持ち的には半々ぐらいだった。

それに察したのか美空は俺を見て言う。


「何かあったの?」

「あぁ、実は・・・」


夢は良く覚えていないが思い出す事限りを皆に話した。


「楊一、また、夢を見たんだ」

「だな、ここの所、多いらしいな」


二人は渋い顔をしている。

僕の隣にいた、佐野はその話を聞くと、何か思いついたように言う。


「楊一くんがまさか、その子がこの世界に呼んだりしてねー」


と、突拍子のない事を言う。

その瞬間、夢の中のある言葉を思い出す。


――――待ってる


少女が放った言葉だ。

僕は佐野の言葉で少しだけ、戸惑った。


「ま、まさか、そんなことあるわけ・・・」


3人は一斉に見つめる。

やめろ!僕の胃をまた痛くさせないでくれ!

佐野はこういう時に、確信を近い事をいう。

それで、胃がキリキリするのだけは、勘弁してほしい。


すると、美空は何処かを見て言う。


「そろそろ、訓練の時間っぽいね」


どうやら、時計のようだ。

今更だけど、この世界にも時計がある事にびっくりした。


「おう!行くか、ほら楊一も行こうぜ!」

「ま、まって、ごはんを・・・」

「ほら、楊一くん!はやくはやく!」


そんなこんなで食事のあとはいよいよ、訓練の時間だ。


生徒達は朝食が終わった後、訓練所に向かう

訓練所には武器が置いてある用だ。

そして、一人の兵士が大きな声で話す。


「よく来てくれた!勇者達!今日からお主らの教官となる!アルバード=クイッカーだ!この国の兵士長をしている!」


アルバードという名乗った男は、ちょっと小太りだが、鍛えられた太い腕で大きな斧を持っている。

所々に顔と鎧に傷があり、無精ひげを生やして、いかにも歴戦の戦士らしさを感じさせた。


「なんだ、この小さいおっさんは!と思っただろう!まぁ、私はドワーフだからな!ッハッハッハ!」


そう言って、豪快に笑った。

おお、やっぱりドワーフとかいるのか!夢が広がるなあ!

ドワーフといえば、鍛冶とかしてるイメージはあるけど

ここでは戦士とかもやってるんだと思った。

見た目は想像通りだけども。


「さて、私が来た以上は!ビシバシと行くからな!皆の衆よろしく頼みますぞ!ワッハッハ!」


周りの、皆はちょっと引き気味だが、良い人っぽい。

僕はこういう豪快に笑う人は嫌いではない。


「さて!確かこの中に勇者がいると聞いたが!誰が勇者なんだ?」

「はい!僕です!」

「ふむ?ほぉ?」


そう言って御剣は前に出た。

アルバートは何か感心するかのように頷いた。


「僕は御剣 正義といいます!本日はご指導の方よろしくお願いします!」


「ふむ、中々いい面構えだ!顔もいいだけにな!ハッハッハ!」


そう言って、アルバートは剣を投げて渡す

投げた剣は回転して地面に突き刺さる。


「よし!まず勇者様に相手してもらおうか!」


その瞬間、アルバートの目つきが変わり殺気が皆に伝わる

背筋が凍る、先ほどの人物とは別人ではないかと思うぐらいに

激しい殺気を放つ。


「っく・・・」


御剣は地面に刺さった剣を拾い、構える。

あの構えは剣道だ。

だが、剣道は戦闘用の構えはないと聞いたことはある。


「ほお、珍しい構えをしてるじゃないか。そうだな、ハンデとして俺は剣で戦ってやろうじゃないか」


そう言って、剣を取り出し構える

御剣は緊張する、若干手が震えていた

それもそうだ、戦うなんて初めてなんだこれは日本にいた頃の剣道みたいな殺傷を好まない試合ではない

相手は殺気を放って今でも殺し行きそうな感じなんだ。

対する御剣は初めて握る剣で、訓練用と言っても本物の剣だ。

一振りすれば人を殺せる

自分が人を殺すと思えば、怖くないはずがない。


「ふぅ・・・ふぅー!!ハァア!!」


御剣は地面を蹴って走り出す、早い!

ステータスの効果もあるのか、さらにスピードが上がる。

そして、御剣は剣を振る

しかし、アルバードは剣を片手で赤子を相手するように受け止めた

そこから打ち合いが始まる、だがアルバートは涼しい顔をして、受け流した。


「なるほどなぁ、たしかにステータス通り強い、しかし、戦いはまだまだ素人同然だな」


アルバードは剣を受けたまま、そのまま御剣の腹に向って蹴りを加えた。

御剣はそのまま5m程、転がるように吹き飛ばされた。

容赦のない蹴りで吹き飛ばされた御剣の姿を見て、クラスの女子達は叫ぶ。


「御剣くーん!!」

「みっちゃーん!」

「きゃー!御剣君ー!!」


御剣は、腹を押さえたまま、立ち上がった

アルバートは手で止めるように合図をする。


「っぐ・・・」

「やめとけ、やめとけ!今回は試しだ!勇者の坊ちゃんありがとな!」


その力の差は歴然だった。

アルバートは語った


「勇者のぼっちゃん、お前はもっと強くなれる、すぐにわしを抜かせるだろうから頑張れ!」

「・・・ありがとうございました」


御剣はそのまま倒れる。

女子ズに連れていかれて、そのまま退散した。

アルバートは御剣を見送り言う。


「さて、これから訓練を始める!まず基礎体力だな!」


そう言って走り込みを始めるのであった。

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