第4話 Charles Mingusと離婚
「久し振り、最近どうなの?」
「今は窓の外の乳母車牽いた婆さん視てる」
「は?」
「喫茶店でコーヒー飲んでるんだよ」
「なら初めから、そう言いなさいよ、貴方って本当、気持ち悪い」
「だから別れたんだろ」
この女と初めて出会ったのは、この喫茶店の、この喫煙席だった。 彼女は赤いワンピースのドレスを着ていて、でかいサングラスを掛けていて、長いストレートヘアーが肩を越して背中まで伸びていた。
別に一目見た瞬間に恋に落ちたとか、忘れ時の美女を思い出したとかではなかったが、一種の完成されたスタイルが目にはいった。
要するに、ストレートヘアーにサングラス、そして赤のワンピースのドレスを着るというのは、自分の中で自分の形を理解しているだろうということなんだろう。
なんというか、そういうのは今時な社会では希有に感じた。
先に話しかけてきたのは、彼女の方だった、つまりオセロの先手は相手だ。
その時、店ではTiny grimsとColeman howkinsのApril in Parisが流れていた。
ところで、いつも思うのだけど、チェーンの喫茶店にしろ居酒屋にしろ、最近はJazzが流れている。
しかし、きっと店側も客も誰一人としてJazz好きはいないのだろう。
JazzがBGMに成り果ててしまったのは悲しい。アル中で薬中の音楽の巨匠達は何のための演奏していたのだろう?
このように考えると気持は重くなる。自分もこんな世界の住人なのだから、突然巨漢のCharles Mingusに殴りかかられて半殺しにされても、仕方ないかなと思う、少なくとも結婚生活と離婚よりは楽なはずだ。
まったく、色恋に灰色の法律が足されると面倒だ、大抵の場合、男は責められるだけ責められ、金を払わされるだけ払わされる。
"いったい俺が何をしたっていうんだ?こう見えて俺だって努力したんだ、それにきっかけを作ったのは女の方じゃないか"
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