第36話 娘自慢

今回は 娘自慢。耳をかっぽじってよく聞いておくんなせえ。目をかっと見開いて、しっかり読んでおくんなまし。



わたしたちの自慢の娘たち。


長女はアリッサの生き写し。若かりし頃、アリッサは「タイのトムクルーズ」と一部の熟女からもてはやされました。


長女はね、あるおかたから「平成の吉永さゆり」と褒められたんですよ。そんなふうに褒められたのは一度きりだけど、わたしはそれ以来、「うちの娘は平成の吉永さゆりです」と紹介するようにしています。


静かだけど、芯の強い長女。アリッサがカミングアウトした後、しばらくの間は、友達から好奇の目を向けられると「わたしのダディーは心は女なのに、男の体で生まれた。だから本来の姿に戻るために女性の格好をするようになっただけ」と、胸を張って説明していました。本当の話。この強さはどこから来たんだろう。


わたしが悲しくてつらい思いをしていたのをよく知ってるから、わたしを困らせるようなことをほとんど言わない。気を遣わせちゃって悪かったねえ。もう大丈夫だから、もうちょっと我が儘を言ってください。


絵を描くのが大好きで、将来はアーティストになりたいんだって。みんなを幸せにするような、優しい作品を作るよい芸術家になるよ、きっと。



次女の外観は「平成のキャンディーキャンディー」。

そばかすがいっぱいなとこだけ、わたしに似てる。ということはわたしの父にも似てる。高山家の血ですね。長女の顔をくしゃっと潰したしたみたいな、まん丸顔で、愛嬌のある顔しています。


シャイで偏屈なとこがあるけど、思いやりでいったらナンバーワン。映画の悲しいシーンではボロボロ泣いちゃう繊細で優しい子。


アリッサ思いで、アリッサが悲しい思いをしないよう、いつも見守っています。例えば、アリッサの服装と化粧が一般常識をはるかに超えていて、わたしが「それはちょっとどうかな?」と批判的なことを口にする。すると次女は「服を選ぶのも、どんな化粧をするのもアリッサの自由。マミーが口出しすることじゃない」とわたしを叱り、アリッサを守ります。そうだね、その通りだよね。


ビーガンのアリッサも甘い物を食べれるように、ビーガンデザート作りに夢中。将来は長女に内装を担当してもらい、ビーガンカフェを開きたいんだって。



娘たちはふたりとも大人しくて勉強嫌いだけど、優しくて強い子です。その優しさはどこから来たの?わたしじゃないね、アリッサからだね。短気で怒りっぽく、自分のやりたいことを追っかけることに夢中になってたわたしと違い、父親時代のアリッサは辛抱強く娘たちと向き合っていました。娘たちの話を最後まで聞き、どんなことがあっても彼女たちを怒らなかった。わたしは自由奔放で好き勝手で、怒りたいときは理不尽に怒ってたけど、「この父親がいるから娘たちはまっすぐ育つ」という自信がありました。



以前、娘たちのアリッサのカミングアウトに対する反応は

「受け入れてサポートした時期」、「怒りと反抗の時期」、そして「仲直りの時期」へと移行していったと書きました。


「仲直りの時期」は、暗くて長い冬の終わりを告げる雪解けみたいに、ひっそり我が家にやってきました。わたしがトランスジェンダーについて学び、理解し、アリッサを受け入れる努力をするようになったのと同じ頃。わたしの理解や思いやりが、伝染したかのように、そして本来の父親への愛情を思い出したかのように、娘たちはアリッサに対し、温和に、優しくなりました。




2017年の11月、横浜中華街占いの館、「愛梨」の鳳紫先生がロサンゼルスにみえた際に、わたしたちの家族について四柱推命で占っていただく機会がありました。


「アリッサさんとお嬢さんたちとの関係はもともととても良好。この関係をどういう方向に持っていくかは、母親である愛さん次第。ぶち壊すのも愛さん。さらによくするのも愛さん」と先生。先生はさらに「姉妹の相性は超がつくほど抜群。ふたりとも会社勤めは向いてないので、姉妹でビジネスをしたら大成功する」とおっしゃいました。


先生の言うこと、ストンと腑に落ちました。「家族の絆を一層強くするため、わたしが変わらなければいけない」と痛感しました。


娘たちよ大志を抱け。今の母ちゃんは怖いものなし。どんなすごいのが来たって、体当たりであなたたちを守ります。



次回はわたしの転機。題して「犯人は誰だ?」

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