詩集

風音

夜を生む糸

夜を生む糸


夕暮れ雲せまり 頬に冷たい風受ける


空へ思い馳せるプラットホームで

柵から身を乗り出した

変わりゆく雲  きらめき陰りゆく光 見えない糸が紡いでいく

日が暮れるまでを布に紡いでいく

夕空から夜への入り口が縫われていく風は糸 空は布

針運びに魅せられても

冬の夕陽はわたしを連れ出さない

空との距離は縮まらない








目を閉じれば


わたしを乗せて走り出すは透明な電車

日が沈んでしまう前に

風の糸で時間を縫っている空の中へ!

刻一刻 一針一針

ホームへ身体を置き去りにした

わたしをみちびき 電車は走り出す




冬のつかの間 夕焼け空の白い光

光から夜を生む糸が動いている


わたしのこころを針にして


こころに風の糸を通して!




わたしも座席で夜を生む


電車は走り続ける


夜があたりを覆うまで

白い光が冴えた月の光に変わるまで



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る