ショーアVS??? 勝者、ショーア!
ショーアはある意味優秀だった。
いや、普通だった。
シェイラが格段にひどかったからな。
繊細な作業がほとんどできなかったから、握り飯作りはさせなかった。
ショーアは逆に、力仕事以外は何でもこなせた。
コルトほどではないが物作りの腕はというと、毛糸と編み棒があれば簡単な自分の服も作れるほど。
「……飯炊くまでの一通りの作業、覚えてみるか?」
「はいっ! よろしくお願いしますっ!」
計量カップで米の量を量り、米を研ぐ。
研ぎ終わった後、普通は水に漬けておくらしいが、時間がないので知識上の説明だけをしてすぐに炊飯。
ご飯ができたらボウルにあけて、後は最初にやらせてみせた握り飯作り。
指示通りの順番を守れば、普通に握り飯を作ることができる。
何の問題もなかった。
何の問題もなかったんだから、一人で任せても問題ないだろう。
俺は指輪の部屋に米袋を運んでいた。
その作業中にショーアの悲鳴とその音が響いた。
「……米を研いでました」
「うん、それで?」
「研ぎ終わって、炊飯器を開けてお釜を入れて、スイッチを入れました」
「手順通りだな。それで?」
「表示のマークがいつもと違うところに出てたので、直そうとしました」
液晶の表示部か。
白米と玄米、混ぜご飯とか早炊きとか、いろいろ機能がついている。
普段は早炊きの所に矢印を合わせているのだが、何かの拍子にボタンに触れてしまったらしい。
普段と違うことが起きたら俺を呼ぶように指示しておけばよかった。
だがそのままにしても問題はないだろ。
あったとしても、煙が出るほどの騒動にはならん。
「けどどこを触ったら直るか分からないので、この紐の付け根を……」
……延長コードに刺さったコンセントを指さした。
炊飯ジャーは、コンセントを本体の中にリールで収納できるタイプ。
「抜いてからまた差しました」
「米を研ぎ終わったあと、すぐ、か?」
「はい」
流しの近くの床には、所々水滴が落ちてる。
こいつ……。
濡れた手でコンセント抜き差ししやがった!
「そしたら、電撃を受けまして」
「電撃じゃねぇっ!」
ただの通電だっての!
電気で動くって説明はしてなかったけどさ。
つか、こっちじゃそれが当たり前……。
当たり前のことが当たり前じゃない異世界人に説明しなかった俺が悪いってば悪いかもしんないけど。
「反撃する力は私にはないので」
「反撃だとおぉぉぉぉ?!」
「つい、条件反射で……」
条件反射?
咄嗟の行動、か。
何しやがったっ。
「電撃を反射しました」
「ドアホッ!」
電撃を条件反射で反射って何をややこしいこと言ってんだお前はっ!
「そしたら、ボンッ……て……」
こ、こいつは……。
ボンッで話終わらすなっ!
炊飯器が敵意を持つって、どんな異世界物語だよ!
そんな炊飯器、いてほしくねぇわ!
つか、あるわきゃねぇだろ!
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