バカでいたかった

あなたが誰と何処で何をしていても気づかない振りをした

何も知らないバカな振りをした

そうすることでわたしを保っていた


『好きな人ができた』と

あなたは残酷な言葉を言い


「おめでとう」と

わたしは物分かりの良い振りをした


バカみたいに泣いて

縋りついていれば

あなたは今も隣に居たでしょうか


あなたが知らない名前でわたしを呼んだときも

あなたが知らない匂いを纏って帰ってきたときも

お酒に強いあなたが、酷く酔っ払って帰ってきたときも

ぜんぶ気づかない、知らない振りをした


これはすべて

あなたの傍に、少しでも長くいたかったから

あなたのいない日々を思い出せないから

わたしがわたしでいるために

バカであろうとした証


バカなわたしでいたかった

わたしはあなたの幸せにいらないのだと気づいてしまったから

あなたの幸せを願ってしまったから


あなたがわたしの手を離したのではなく

最初にわたしがあなたの手を離してた


バカなわたしであったなら

その手を離さず済んだでしょうか

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