#012:円滑な(あるいは、倚界のしくみ教えてよ)
ざわつく店内は暖色の灯りがほどよく照らし、絶妙に効かせられた空調が、初秋の風すさぶ井の頭公園で不毛の刻を経て不毛に冷え固まった僕らの身体をじんわりと温めてくれるのであった……
というか、何だったんだろう、本日の諸々は。「DEP」を意図的に作るとか言ってたけど、それって実際には難しいことが分かっただけだ。アオナギに至っては途中からまるでやる気を失っててろてろ動いているだけだったし、丸男は丸男で、「池に潜って鯉を密漁した」とか、洒落になりそうもないことを提案してきたりしたので、それをとどめたりと。
結局、この飲みに行くことが今日の主眼だったのだと、思わざるを得ないわけで。
「相棒よぉ、今回の溜王に出てきそうな奴って誰よ? 予選で早々にA級とかB1に当たるのは勘弁って感じだぜぇ」
ひと息でジョッキを飲み干した丸男。少し小ぶりでお洒落なものとは言え、一気にいくなあ。先ほどまでがたがた震えていたくせに。
「倚戦の中では唯一のチーム戦だからな。当然『ミリタリシスターズ』は出てくるだろうが、後は読めねえ。誰と誰が組んでくるか? ま、俺らのようにあえて6組から決勝目指そうっていう酔狂はランク者にはいねえだろ。予選はアップと思えやいい。少年の初陣を俺らがバックアップする感じだ」
アオナギもそう説明しつつ、ぐいとジョッキを傾ける。
バーレストラン「レビーズ」は盛況で、僕ら3人は何とか空いてたカウンター席に並んで腰掛ける形となった。この並びだとお二方と顔を突き合わせなくていいので気楽で良い。
反面、面するかたちとなる厨房で立ち働くスタッフの人はちらちらとこちらを見て来るが、まあ気になりますよね。左隣に丸男、右にアオナギという鉄壁の陣を敷いている僕は、普通の人たちの目にどう写っていることだろう。
「『A級』っていうのはそんなに凄い人たちなんですか?」
何回かこの二人が口にしていた言葉だ。ランクがあるのかな? ダメ人間にも。
「要はこの世界のトップ10だ。毎年、
どうすごいんだ? ダメさが、ってことだろうとは思うけど。
「その上に君臨するのが『
へぇぇぇぇ、としか言えない。理解することは早々に諦めて、僕は運ばれてきたおいしそうなソーセージにフォークを刺すことに集中する。
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