11話 嵐は去った…?
嵐みたいなやつらの襲撃から数日後。
未だにリアに会えない状況が続いていた。
どうやら、四六時中監視の目があるらしく会いに来れないと念話でぼやいていた。
リアの魔術の技術とレベル差でなんとでもなるような気もするが、部屋の片隅にリア付きの専属メイド兼監視がいるため、なかなか身動きが取れないそうな…
ただ、風呂や部屋の広さなどは前の部屋よりグレードが上がったらしい。
「おい!何サボってんだ代音!」
そんなリアとは打って変わって、今日も今日とて練習場で剣の素振り練習や魔術の練習をしている俺たち。
俺たち、というかクラスメイト達だな。
あいつら、あんな必死に剣振って、小っ恥ずかしい厨二呪文唱えて、よくやるなーと感心しながら練習場のベンチでぼけーと眺めている。
「おい!無視するな!」
柚姫も初日にみた空を飛んでる騎士が忘れられないのか「私も飛ぶ!」と練習に励んでいる。
厨二呪文なんてなんのその、大きい声と掛け声で気合いは十分。
ただ、さっきから飛行魔術は失敗に終わっているらしい。
「わざとだな!わざと無視するとかお前人としてどうなんだよ!」
………わざと無視してんの気づいてるならほっといてくれれば良いのに。
うっわぁ、面倒くさい相手に絡まれたなぁという顔で、そして、話しかけられてた事に今気づきましたというスタンスで応じる。
「あ、青山くんでしたっけ?僕になにか?」
「代音、お前……昨日と全然口調が違うじゃ無いか」
そういう青山君は他のクラスメイトと接する時より、俺には当たりが強いですけどね。
という出かかった言葉を飲み込む。
すると、やはりというかクラスメイト達がチラチラとこちらを見始めた。
せっかく程よくサボれる良い場所だったのに、残念に思っていると
「おい、代音。お前は弱いんだろう、なら人一倍強くなる努力をしたらどうなんだ?」
周りにいたクラスメイトのみならず、教師役の騎士達までもが青山の言葉に頷いている。
「やっぱりお前、ヒマリアさんに守って貰おうと思ってるんじゃないだろうな?」
こいつは阿保か?
一体俺がいつリアに「助けて欲しい」と口にしたというのか。
しかも、さも聞いたみたいな口振りだ。
イラッとしてつい青山を睨みつける。
すると、まさか睨みつけられるとは思ってもいなかったのだろう。
少し気圧された様子で、しかしプライドが許さないのかそれでも煽ってくる。
「なんだ、図星か?だからそんなにキレてるんだろ?」
「うっざ」
ついつい口をついて出てしまった言葉にさらに気分を害したのか、顔を赤くして突っかかってくる。
「なんだと!」
もう面倒だわー、つかしつこいわこいつ。
「俺別にそっちの気ないんで、そんな顔近づけるのやめてくれます?あ、それとも青山はそっち系?ごめんなさい無理です!」
面倒くさすぎて煽ってみる。
すると、みるみるうちに顔が赤からちょっと赤黒く見えるほどになってきた。
こんだけしか煽ってないのにずいぶんとお手軽なもんだなぁ、
というかさすがにそろそろ真面目に面倒だから青山の保護者カモンー
と視線を天笠に送ると、ため息をつきながら回収に来てくれた。
「ちょっと聖、いい加減にしなさい。目立っているわよ」
青山のそばに寄ると腕を、ではなく耳を引っ張り俺から引き離してくれる。
さすがのおかんっぷりを発揮してくれている天笠にグッと合図を送る。
すると天笠は、頭が痛そうに額に手をやり何度目かもわからないため息をついた。
「ちょ、痛い痛い!泉!離せって!」
まるで、おもちゃ売り場で欲しいものを買ってもらえず駄々をこねた子供を連れ帰る母親みたいな見事なお手並みで青山を連れ帰る天笠おかん。
「はぁー、代音君も、迷惑かけてごめんなさい。ほらっ行くわよ!」
「何謝ってんだよ泉、俺はただ代音がまじめにやってないから注意を!」
引きずられながら、謝る泉に抗議をする青山をみやり「何がそんなに気に食わないかねぇ」とひとりごちる。
リアもおらず柚姫も飛行魔法の訓練に忙しくこちらに居ない今、近くにいるクラスメイト達からの『迷惑者』と言った視線はさすがに痛い。
「たく、クソ迷惑な」
第二の青山が出てこないとも限らないので適当に、手にしていた配給された刃を潰した剣の素振りをする。
「わあ!凄い綺麗」
にこにこと近くでそう言いながら素振りを見ていたのは桜衣和だった。
無意識に漏れたのだろう、俺が気がついた事に気がついた桜衣は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに気がついたのか慌てて話し始めた。
「あ、すみません。聖君が失礼な事をしたみたいで謝りに来たんです先程はごめんなさい」
「別に桜衣さんに謝ってもらう必要はないんだが」
言ってから気がついた。
これじゃあめちゃくちゃ感じの悪い奴だ、と。
「あ、ごめん」
咄嗟に謝ると桜衣はびっくりした顔をしていた。
いや、まじか俺謝らない奴だと思われていたのか…
少しショックを受けていると、桜衣が慌てて弁明を始めた。
「い、いえ!元はと言えば勝手に近くに図々しくも居座り勝手に代音くんを見ていた私に非があるのは火を見るより明らかで…あっ、非と火をかけたわけではありませんよ!」
よほど慌てているのか余計なことまで口走り始めた桜衣はみんなに噂される深層の御令嬢というより余程生きた人間味を感じていた。
そして、おそらく青山の暴挙を謝罪しに来ていたのだろう。
あのメンバーの中では珍しく嫌悪感を抱かない人間だ。
「ふっ、ははははは。桜衣さんでも親父ギャグみたいなこと言うんだな」
なので、ついつい笑ってしまったとしてもそんな深い意味はなかった。
「ち、違います!あれはついつい、というか…と、兎に角!私は意図して親父ギャグを言ったわけではないんです!」
必死に顔を朱色に染めて、それこそ頬を名前にある桜色のようにさせながら、弁明する様は確かに、可愛い。
「分かったって、桜衣さんは親父ギャグを言ったつもりはなくてただの偶然なんだよな。分かってる分かってる。ふっ」
「全然分かってないじゃないですか〜!」
この時の俺は、完全に気が緩んでいた。
だから、だろう。
俺たちを見ている不穏な視線に気がつかなかった。
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